2020/08/30
映画の話 その86(ロストチルドレン)

ジャン=ピエール・ジュネ監督のいとも不思議なファンタジーです。

幼い男の子が煙突からサンタクロースが入ってくる夢を見ています。
しかしサンタクロースは次から次に降りてきます。
部屋がサンタクロースだらけになり、男の子は泣き出してしまいます。
これがオープニングです。

一方荒廃した不思議な港町では、サーカスの芸人たちが芸を披露していました。
ところが団長が謎の男にナイフで刺され、辺りは大騒ぎになります。
怪力男としてサーカスの見世物に出ているワンは、トレーラーで団長の看病をします。

ワンは、ゴミ箱に捨てられていた赤ん坊をダンレーと名付け、自分の弟として可愛がっていました。
トレーラーに一つ目族と呼ばれる盲目の一味が近づいていました。
一つ目族(小児誘拐団)は、物体を透視できる機械の目を使い、中に子供がいることを確認します。
そしてトレーラーに押し入り、ダンレーを連れ去ってしまいます。
一つ目族に殺されそうになっていたワンは、子供窃盗団と出会い、リーダーはミエットという大人びた少女で、機転を利かして一つ目族からワンを守ってくれました。

ワンとミエットはダンレーを探しに行きます。
海の実験基地には孤独な天才博士がいました。博士は孤独を癒そうと、美人な妻を造りましたが、生まれてきたのは小人の美人でした。
次に、自分と同じ姿をしたクローンを6体造りましたが、みな天才とはほど遠く、しかも眠り病を煩っていました。
それにもめげず、博士は素晴らしい知能を持つ脳みそを緑に輝く液体の中で育成しました。
けれど身体は持っていません。

そしてついに、身体も知能も兼ね備えたクローン・クランクを造り出しましたが、やはり欠点がありました。
クランクは夢を見ることが出来ないので、異様な早さで老化してしまうのです。
クランクはなんとかして夢を見ようと、他のクローンたちをこき使い、子供から夢を盗もうとします。
そのために子供が必要となり一ツ目族を使って誘惑を繰り返しています。

ある時、博士は記憶喪失になり行方不明になってしまいます。
ワンとミエットは一つ目族の隠れ家を見つけこっそりと潜入します。
そこでは一つ目族が誘拐した子供たちを引き取るという取引が行われていたのです。
運ばれてきた子供の中に弟を見つけて、助けようとしますが、逆に捕まってしまいます。
そのころ、ミエットが通う泥棒学校の怪しいシャム双生児の教師は、またワンの怪力を利用して一儲けしようと企み、昔のボス・マルチェロ(ノミ使い)のもとへ訪れ、協力を要求していました。

捕まったミエットとワンは海に落とされますがミエットは海底を歩く謎の男に助けられます。
ワンはマルチェロに助け出されます。
なんとミエットを助けた男は海の実験基地の天才博士でした。
ワンとミエットは再会し、海の実験基地へ向かいます。
基地では、ワンの弟が今まさにクランクの夢泥棒の餌食になろうとしていました。
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そこに天才博士も現れ、クローン達の誤った行動を正し、基地を爆破するために戻ってきたのでした。
ミエットが基地の中心部に着くと、ワンの弟とクランクはすでにコードでつながれ、夢を見ている真っ最中でした。

助けるには、自らも夢の中に入るしか方法はないと、傍らで見守っている脳みそが言います。
意を決して夢の中へ入り、クランクと決着をつけたミエットはワンに起こされ、子供たちと基地を脱出します。

クローン達もわらわらと逃げ出すのを見て、身体にダイナマイトを巻き付けたオリジナルは戻ってこいと命令しますが、誰も話を聞いていません。
そうしている間にダイナマイトが爆発し、ボートで脱出したワンとミエットは幸せそうに微笑み子供たちも嬉しそうです。
以上があらすじです。
至る所に何処かで見たような映像が散りばめられています。
俳優が素晴らしい。
現代の怪奇役者ロン・パールマンを始め、7役のドミニク・ピノン、フランクのダニエル・エルミフォルク、シャム双生児のオバさん、全て一筋縄ではいかない人たちです。
ミエットのジュディット・ヴィッテの妖艶な魅力も特筆ものです。

特にノミが素晴らしい演技を見せます。
映像も美術もジャン=ピエール・ジュネ監督ならではです。

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