2019/10/30
寺院の彫刻 その70(シヴァ20ナンディに乗るシヴァとウマー2)

東南アジアにおけるナンディに乗るシヴァとウマーを見ていきたいと思います。
クメール帝国では特に好まれた題材です。
88年にカンボジアを訪れた時は10日間のツアーでシェムリアップに滞在できた時間は5時間ほどでした。
その時間でアンコールワットとバイヨンを見学です。
その後もシェムリアップに宿泊する旅行はありませんでした。
そんな時「仏教の国ラオスとタイのクメール遺跡を訪ねて11日間 」というツアーがあり、すぐに参加しました。
このツアーは東北タイのクメール遺跡とラオスのビエンチャンとルアンプラバンを巡るツアーです。
このツアーで訪れた東北タイの寺院の中でムアンタム寺院の楣に彫刻されたナンディに乗るシヴァとウマーの彫刻に感動しました。

とても優しくて、可愛いのです。
いわゆるヘタウマです。
11世紀初めのジャヤヴァルマン5世が建立した寺院で石工の意匠が現れています。
私の大好きな彫刻です。
すぐ近くにあるPRASAT PHANOM RUNGは12世紀の初め、スールヤヴァルマン2世とヒランヤが建立した寺院で素晴らしいラーマーヤナの彫刻で有名です。
ここの破風にナンディに乗るシヴァとウマーの彫刻がありますが残念なことにシヴァとウマーは破壊されています。
奇跡的にナンディだけはよく残っています。

KAMPHAENG YAIの破風にもナンディに乗るシヴァとウマーの彫刻がありますが、保存状態が良くありません。

もうひとつ楣にも見つかります。
従者を従え、とても魅力的な作品です。

コンケーンにあるKU PUAI NOI(11〜12世紀)の遺跡にもナンディに乗るシヴァとウマーの彫刻があります。
とても良い出来です。

ペッチャブーンにある12世紀のPRANG SONG PHI NONG寺院の楣もとても面白い彫刻です。
とぼけたナンディに対してシヴァがとても大きく顔もユニークです。

タイのクメール寺院でも好まれた題材でした。
それでは本家カンボジアのクメール遺跡を見てみます。
まずはクメールの至宝BANTEAY SREI寺院からです。
リンガの参道に素晴らしいナンディに乗るシヴァとウマーの彫刻があるのですが残念なことにウマーの顔がありません。

12世紀のBANTEAY SAMRE寺院の破風にもあります。
やはりウマーの顔がありません。

同時期のTHOMMANON寺院の破風のシヴァはリシとして描かれています。
この像もウマーの顔はありません。

以前シェムリアップの遺跡保存事務所を訪れた時、倉庫で発見した楣です。
アイラーヴァタの上に乗るインドラの上に小さくナンディに乗るシヴァとウマーの彫刻がありました。

11世紀の終わりにタ・ケオ州に建立されたPHNOM CHISSORには掘りかけの彫刻があります。
ナンディ、シヴァ、ウマーはだいぶ完成しています。

シェムリアップ川の源流にあるKBAL SPEANは川底にたくさんのリンガが掘られています。
「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」がメインですが、ナンディに乗るシヴァとウマーも彫刻されています。

タイとの国境にあるPREAH VIHEAR寺院の破風にも彫刻されています。

当時はタイ側からしか見学できませんでした。
クメール揺籃の地ラオスのWAT PHUにもあります。
私が行った1993年はまだタイのチョンメックからラオスに入国するルートは一般的ではなく、パクセーにしかホテルの設備はありません。
陸路を通り、チャンパサックで筏のフェリーに乗り、リンガ・パルパダの聖山が見えた時には感動しました。
リンガの参道をぬけると左右に11世紀に建てられた建物が現れます。
ここ建物の破風に素晴らしいナンディに乗るシヴァとウマーが彫られています。

クメール帝国以外には見つけることができませんでした。
ただインドネシアでとても興味深い彫像を見つけました。
それは牛頭人身のナンディ像です。

牛頭人身の像はインドではよく見かけますが、頭が小さく立像です。
13世紀の造形で頭が大きく坐像でとてもリアルなのです。
ガネーシャと違いとても不気味です。
現在残っているナンディに乗るシヴァとウマーの彫刻はほとんどクメールのものです。
クメールの王たちにとても愛されていたことがわかります。
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