2019/06/29
寺院の彫刻 その66(シヴァ16 シヴァとパールヴァティに矢を放つカーマ)

今回はシヴァとパールヴァティに矢を放つカーマ(シヴァの第三の眼が発生した話)のお話です。
「シヴァの妻であるダークシャニ(サティ)は、父が夫シヴァに対し礼をしない為に焼身自殺する。
悲しむシヴァはヒマラヤへ行き修行をする事にした。
ヒマラヤの神であるヒマヴァンは娘であるパールヴァティをシヴァに仕えさせた。
彼女は自ら苦行を開始し、シヴァの身の回りの世話をした。
その頃、魔人ターラカが神々に対し争いを仕掛けた。
神々はこの魔人に勝つ事が出来るのは、シヴァから誕生する子しかいない事を知り、 シヴァの修行を止めさせ、パールヴァティと結ばれるように愛の神カーマを遣わした。
シヴァはカーマが修行を妨害する為怒り、第三の目から火炎を放ちカーマを灰にした。

だが、カーマが射た一本の矢がシヴァに当たっていた為、シヴァはパールヴァティと結ばれ、クマラ(スカンダ、カルティケーヤ)が誕生する(矢はあたらず2人が恋に落ちたという説もある)。
クマラはターラカを殺し、シヴァはカーマの妻ラチィの願いを聞きいれカーマを生き返らせた。」
という話です。
この彫刻はなかなか見つかりません。
南インドのGANGAIKONDACOLAPURAMにあるBRIHADISHVARAにシヴァとパールヴァティに矢を放つカーマと言われる彫刻があります。

壁龕に4腕のシヴァが座しています。
これだけではわからないのですが、壁龕の横に左右3つのパネルがあります。

向かって左側の一番上のパネルは弓を射るカーマ、右側の一番上は苦行するパールヴァティーと言われています。
この苦行するパールヴァティーと言われている彫刻がエローラ第21窟の前にあるナンディの基壇に彫刻されています。

東南アジアではカンボジア以外では見つかりませんでした。
とても分かりにくいのですが、アンコールワットの第一回廊の南西角の西側に彫刻されています。

上部中央に瞑想するシヴァ、隣にパールヴァティー、下方から弓を射るカーマです。
素晴らしい彫刻がバンティアイ・スレイの南経蔵の破風にあります。

最上部に座すシヴァ、向かって左にパールヴァティー、右に矢を射るカーマ、が彫られています。
一番下にはナンディと人間と動物が、その上にはウマやウシ、ゾウ、トリ、サルなどの顔を持つ神、さらにその上には修行するリシ達、右端の女性はカーマの妻らティと思われます。

バンティアイ・スレイは神話彫刻の宝庫です。
もう一つカンボジアとタイの国境の近くに、12世紀〜13世紀初めにジャヤヴァルマン7世によって建立されたバンティアイ・チュマール寺院があります。

まだ修復はされていないので瓦礫の山の状態ですがところどころ破風が残っています。
中の一つにシヴァとパールヴァティに矢を放つカーマの彫刻があります。

中央にシヴァ、隣にパールヴァティー、右端に矢を射るカーマが彫刻されています。
バンティアイ・チュマール寺院はとても大きな寺院で整備されれば、観光名所の一つになるでしょう。

シヴァとパールヴァティに矢を放つカーマの神話はカンボジアに伝わり、素晴らしい彫刻を残しました。
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