2018/01/26
寺院の彫刻 その46(ガルーダ3)

今回はチャンパ・パガン・インドネシア・韓国・日本のガルーダ像を見てみます。
ガルーダ像はヴェトナムのチャンパにも沢山あります。
チェンダン(CHIEN DANG11〜12世紀)の博物館にはチャンパ独特のガルーダ像があります。

CHIEN DANG 11〜12世紀
文様の彫刻が素晴らしい
敷地内に博物館がある
HOA LAI(8~9世紀)は3基の祠堂からなり中央祠堂は完全に崩壊しています。
残った祠堂の軒下のガルーダの彫刻は素晴らしい出来です。

HOA LAI 8~9世紀
崩壊がひどいが残っている
彫刻は素晴らしい。
ホアライ様式と呼ばれる。
ダナンのチャム彫刻博物館に12世紀のガルーダ像があります。
ナーガを食べています。

CHAM彫刻博物館
インドネシアのガルーダに近いガルーダ像もありました9~10世紀(チャンパ博物館)。
なかでも傑作はこのガルーダに乗るヴィシュヌでしょう。

CHAM彫刻博物館
4臂のヴィシュヌを乗せガルーダは
ヴィシュヌの両足をにぎっている
ミャンマーのパガンでも見つかりました。
めずらしいヒンドゥー教寺院のNATHLANGKYAUNGの壁龕にガルーダに乗るヴィシュヌ像がありました。
この像は近年制作されたもので、オリジナルの像は現在行方不明です。

NATHLANGKYAUNG 931年
パガン唯一のヒンドゥー寺院
ヒンドゥー神のレプリカが内部の
壁龕に安置されている

彫刻ではありませんが壁画が仏教寺院のPENANTHAGUにあります。
SRI KSHETRAの博物館にはとても古い6世紀のガルーダに乗るヴィシュヌ像があります。
保存状態が悪いのが残念です。

SRI KSHETRAの博物館
4臂でチャクラと棍棒をもっているので
ヴィシュヌ神と思われる。
隣は蓮に乗るラクシュミーか
東南アジア諸国で一番好まれたのはインドネシアです。
前回のインドにおけるガルーダでお話ししたガルーダの神話がガルディア物語として浸透しています。
東ジャワのC. KIDAL(1260年)の基壇にはガルディア物語が彫刻されています。
アムリタの壺を運ぶガルーダ、

C. KIDAL 1260年
基壇にマハーバーラタの「ガルデア」の
主人公ガルーダの彫刻がある
母ヴィナターを運ぶガルーダ、

C. KIDAL 1260年
ナーガを運ぶガルーダです。

C. KIDAL 1260年
C. RIMBI(1372年)の基壇には苦行の帽子をかぶるガルーダが彫刻されています。

C. RIMBI 1372年
この寺院の基壇には不思議な
彫刻がある
クデリにある石窟GOA SELOMANGLENG(11世紀)の入口の上部にガルーダが彫刻されています。

GOA SELOMANGLENG 10世紀
東ジャワには2つ石窟がある
クデリにある石窟の入り口上部に
彫刻されているがストーリーは解らない
エルランガ王の霊廟にあるC. BELAHAN(11世紀)は沐浴場でここにはラクシュミーとシュリーの彫像があり胸から水が出る仕掛けで、現在も村人が水を汲みに来ます。
本来その真ん中にガルーダに乗るヴィシュヌ像がありましたが現在トロウラン博物館に保存されています。
このヴィシュヌはエルランガ王のポートレートスタチューと言われています。

C. BELAHAN 11世紀
素晴らしい彫刻で4臂のヴィシュヌ神は
エルランガ王と言われています
もう1つの沐浴場はC.JOROTUNDOと言い、エルランガ王の父親のウダヤナ王の霊廟です。
沐浴場の壁に物語のパネルが埋め込まれています。
崩壊がひどく大部分博物館に保存されています。
その1つガルーダによるムリガーヴァティーの誘惑です(977年)。

C.JOROTUNDO 10世紀
水槽の周りの彫刻はマハーバーラタの題材
石像ではありませんが中部ジャワで出土した9世紀後半の素晴らしい青銅の彫像がメトロポリタン美術館に展示されています。
尻尾が美しいガルーダの頭の上にはアムリタの壺、肩にはチャクラを持ったヴィシュヌが乗っています。

メトロポリタン美術館 9世紀後半
頭にアムリタの壷を乗せ尻尾が素晴らしい
このようにガルーダは東南アジアでは好まれました。
東アジアの韓国でも石塔の四面に2体ずつ八部衆が彫刻されていますが、特に鳥の顔をしていないので判断出来ません。石窟庵には八部衆が彫刻され、迦楼羅と言われている像があります。

石窟庵 8世紀
前室壁面に8部衆が彫刻されている
日本では国宝八部衆の木造迦楼羅像が興福寺にあります。

興福寺 奈良時代
西金堂本尊釈迦如来像の周囲に安置されていた
また法隆寺の大宝蔵殿に迦楼羅の面が保存されています。

法隆寺の大宝蔵殿
伎楽面
石像の迦楼羅が東京の本誓寺 にあります。
とても優れた像です。

本誓寺
立像で笛を吹いている
もう一つ埼玉県の十輪寺にも迦楼羅の石像がありました。

十輪寺
立像で笛を吹いている
ガルーダはアジアすべてに伝播しました。
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