2017/08/29
寺院の彫刻 その37(ラーマ10)

第6巻 ユッダ・カーンダ(戦争の巻−2)
ラーマ軍を滅ぼすために、ラーヴァナは弟の巨人クンバカルナを起こすことにした。
彼は九カ月間眠り続け一日だけ起きているのだが、その一日のあいだは無敵であった。
しかし、焦っていたラーヴァナは、まだ寝たりていないクンバカルナを無理に起こしてしまったのである。
カンボジア アンコールにあるBAPUON寺院です。
みんなで騒いで、ゾウが一生懸命起こそうとしています。

ジャワ島のLOROJONGGRANG寺院群のC.SIVA寺院のパネルです。
棒で突っついたり、耳に水を入れたり、馬で踏んづけたりしていますが起きません。

南インドBADAMIの丘の上にあるUPPER SHIVALAYA寺院です。
ゾウで踏んづけても起きません。

南インドVIJAYANAGARAのVITHALA 寺院のポーチの柱です。
動物が乗っても起きません。

南インドのAMRETESHVARA寺院です。
必死に起こしているところです。

起きてラーヴァナのところへ行くクンバカルナ

クンバカルナは巨大で、トラのように身軽で、一度に何千というサルを蹴り殺してしまう力がある。
クンバカルナはサルが大好きで一度に何千というサルを食べてしまうので、半日もたたないうちにラーマ全軍の四分の一が食われてしまった。

カンボジア アンコールにあるBAPUON寺院です。
クンバカルナがサル達をかじっています。

ジャワ島のLOROJONGGRANG寺院群のC.SIVA寺院のパネルです。
起きて戦い始めたところです。寝起きが悪そうです。

ELLORA石窟のKAILASANATHA寺院です。
中央で暴れています。

東インドATPURにあるRADHA GOVINDA寺院です。
中段右側でサルをむさぼり食っています。

東インドVISHUNUPURにあるKESHTA RAYA寺院です。
上段はクンバカルナ、下段はラーヴァナです。

西インドNAGDAにあるSASBAHU寺院です。
とても細かい彫刻ですが、上段中央でサルを食べているところです。

東ジャワのC.PANATARANのパネルです。
とても迫力のあるクンバカルナです。

タイのクメール寺院PHANOM RUNGの破風の彫刻です。
クンバカルナに果敢に挑むサル達。

アンコールのBANTEAY SAMRE寺院の破風の彫刻です。
必死にクンバカルナに食らいつくサル達。

南インドのAMRETESHVARA寺院です。
暴れています。


サンフランシスコにあるアジア美術館に保存されている楣です。
11〜12世紀の東北タイの寺院の楣です。
クンバカルナに群がるサル達。

巨大なクンバカルナの出現に猿たちは逃げまどい大騒ぎになった。
ラーマはハヌマーンの背中に飛び乗り、クンバカルナに向かって行った。
ハヌマーンはクンバカルナの太ももにかじりつき、ラーマは斧でクンバカルナの腕を切り落とす。
これでもクンバカルナはひるまず、ますます猛々しくなって、ハヌマーンの頭を蹴飛ばす。
ラーマは強弓をひきしぼって巧みに応戦し、最後には強力な矢でその首を切り落とした。
巨人の首は建物や道路を押しつぶしながら地を転がり、胴体は海に倒れ伏した。

ジャワ島のLOROJONGGRANG寺院群のC.SIVA寺院のパネルです。
クンバカルナの死を悲しむ悪魔軍。

南インドVIJAYANAGARAのVITHALA 寺院の北にある寺院です。
下段中央で腕を切られるクンバカルナ。

南インドのAMRETESHVARA寺院です。
クンバカルナの死

クンバカルナはラーヴァナ、ヴィビーシャナ、シュールパナカーと兄弟で巨大な体躯の持ち主で、山ほどもあり、口は広大で、肌は黒く、血と脂の臭気を発します。彼の息は強風と変わりなく、怒ると火を吐き、その雄たけびは百の雷ほどあったとされます。
生き物の創造が無に帰すほどの食欲の持ち主であるため、9か月に1日しか目を覚まさないという呪いをかけられました。
ラーマとの間に戦争が起こったときクンバカルナの睡眠はまだ6か月しか経っていなかったにもかかわらず、ラーマ軍に敗走させられたラーヴァナはクンバカルナを目覚めさせるよう命じました。
そこで1万の羅刹たちがクンバカルナの邸宅にやって来て、肉などの食料と血を満たした甕を運び、騒音を起して起こそうとしました。
最初は法螺貝や叫び声などであったが一向に目覚めないので、棍棒でクンバカルナを打ったり、髪の毛を引っ張ったり、耳に水を注いだり、馬やラクダに踏ませたりし、その騒音はランカー中に響きました。
最後に羅刹たちは1万頭の象をけしかけてクンバカルナに突進させ、乱暴に踏みつけさせると、その足踏みの心地よさによってようやく目を覚ましたのです。

以前雑誌「うめがおか」でお話ししましたが、とても面白いエピソードがあるのでもう一度お話ししたいと思います。
場所はカルカッタからブヴァネーシュヴァルへ行く列車の中です。
「インド人は自国の人でも、外国の人でも知らない人に良く話しかけます。
今回も面白いことがありました。
私の通路をはさんだ隣にインド人のおじいさんが座っており、その隣に巨大な男の人(おそらく130kg以上)が窮屈そうに、とても大きないびきをかきながら寝ております。
この人はホームで乗り込むと5分も立たない内に寝てしまい、周囲の人もびっくりする大いびきで、車掌が切符を調べに来たときに起こされて以来寝たままです。

案の定隣のおじいさんが話しかけてきました。
彼は「ラーマーヤナ(インドの有名な叙事詩)」を知っているかと聞いてきました。
もちろん知っていると答えて、即座に「ラーマーヤナ」の中に出てくる、クンバカルナを思い出しました。
クンバカルナは巨漢の怪物で9カ月間巨大ないびきをかきながら寝たままで、1日だけ起きて人間や動物を食べ、また9ヶ月間寝てしまう恐ろしい魔族です。
隣の人はクンバカルナみたいだねと言ったら、おじいさんはとてもうれしそうに、クンバカルナ、クンバカルナと言い、それを聞いた周りの乗客も口々にクンバカルナ、クンバカルナとそれはもう列車中大合唱になりました。
それでもクンバカルナは起きず、終点のブヴァネーシュヴァルまで寝たままでした。」
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