2016/09/30
寺院の彫刻 その11(9曜星)

今回はドアーフレイムの上部の彫刻を見てみます。
一般的には祠堂の中に祀られている神に関係しますが、上部に9つの神、又は7つの女神が彫刻されている場合があります。
9つの神は9曜星ナヴァグラハ(navagraha)といい9つの惑星という意味です。
星は繁栄、収穫、健康などに大きな影響を与えるため神格化されました。
9つの神は、太陽スーリヤ(SURYA)、月チャンドラ/ソーマ(CHANDRA/SOMA)、火星マンガラ(MANGALA)、水星ブダ(BUDHA)、木星ブリハスパティ(BRIHASPATI)、金星シュクラ(SHUKRA)、土星シャニ/シャナイシュチラ(SHANI/SHANAISHCHARA)、月の昇交点ラーフ(RAHU)、月の降交点ケートゥ(KETU)です。

太陽スーリヤ(SURYA)
両手に蓮の花を持つ
7頭立ての馬車に乗る

月チャンドラ(CHANDRA)
10頭の白馬の馬車に乗る

火星マンガラ(MANGALA)
カルティケーヤと同一視される

水星ブダ(BUDHA)
「賢明な者」の意

木星ブリハスパティ(BRIHASPATI)
神々の世界の祭官
8頭立ての馬車にのる

金星シュクラ(SHUKRA)

土星シャニ(SHANI)
不吉な鳥に乗る

月の昇交点ラーフ(RAHU)
天空の悪魔
8頭の黒い馬の馬車に乗る

月の降交点ケートゥ(KETU)
下半身がヘビ
月の交点ラーフとケートゥは日食、月食に関係します。
インド神話の中で不老不死の霊薬「アムリタ」を盗んで飲んだアスラがヴィシュヌ神によって首を切り落とされ「アムリタ」を飲んだ首がラーフという星になり、胴体がケートゥという星になりました。
ラーフは太陽と月を飲み込みますが胴体が無いのですぐに太陽と月は現れてしまい、これが日食と月食です。
シャニ、ラーフ、ケートゥは凶兆の星とされ南インドの寺院ではよく祀られています。
ナヴァグラハは入り口の上部に立像や坐像で彫刻されています。
ラジャスタン州オシアンのHARIHARA寺院1です。

OSIAN HARIHARA TEMPLE 1 8世紀
ドアーフレイムの最上部に9神
右から2番目に顔の大きいラーフがいる。
カジュラホのLAKSHIMANA寺院の小祠堂のドアーフレイムです。

KHAJURAHO LAKSHMANA寺院 10世紀
ドアーフレイム上部に中央ヴィシュヌ神、
右にシヴァ神、左にブラフマー神が彫刻された
プレートがあり、その間にナヴァグラハが
彫刻されている。
右端にラーフとケートゥ。
中央インドJHANSIにあるJARAI-KA-MATH TEMPLEです。

BARUA SAGAR
JARAI-KA-MATH TEMPLE 860年
ドアーフレ−ム上部の左側です。
ナヴァグラハと左端にはブラフマー神が
彫刻されています。
ラーフとケートゥが良い。
右側には7母神が彫刻されています。
東インドBHUBANESWARの寺院です。TALESHWAR TENPLEのナヴァグラハは
私の一番のお気に入りです。

TALESHWAR TENPLE 8世紀
意匠がすばらしい。

BRAHMESHWAR 寺院 1058年
とても良い彫刻で特にラーフが面白い。

LAXMINARAYAN TEMPLE
CHAURASIのVARAHI寺院へ行く
途中で見つけた。
多くの寺院では沢山の彫刻の一部になっていますが、人数とその中に頭だけのラーフがいますので、見分けがつきます。
東インドの寺院では独立して彫刻されていますのですぐに解ります。
中央インドのサガール大学の博物館にもありました。

SAGAR UNIV.
同じ様な彫刻がアメリカの美術館にもあります。

SAN DIEGO MUSEUM 10世紀
東南アジアにも伝わりました。カンボジアでは楣に彫刻されました。なんと上野の東京国立博物館東洋館に展示されていました。NEAK TA KONG SROKから出土したもので11〜12世紀の制作です。

左からスーリヤ、チャンドラ、マンガラ
ブダ、ブリハスバティ、シュクラ、シャニ
ラーフ、ケートゥ
日本では土曜(聖観音)、水曜(弥勒)、木曜(薬師)、火曜(虚空蔵)、金曜(阿弥陀)、月曜(勢至)、日曜(千手観音)、計都ケートゥ(釈迦)、羅睺ラーフ(不動明王)の9つの星を「九曜曼荼羅」として信仰されました。

平安時代には交通安全に霊験があるとして車文に多く使用されたようです。
また仏教の暦法からおこり,陰陽家が人の生年に配当して,運命の吉凶を判ずるようになりました。
インドのトランプGANJIFAの9曜星です。




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