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映画の話 その102(狼の時刻)

150パルグナディ
イングマール・ベルイマン監督の68年度の作品です。
幻想的な中にホラーが入っています。
いつもどおり、とても美しいモノクロ映像です。
狼の時刻1
北海の小島で暮らす、画家のユーハン・ボイル(マックス・フォン・シドー)とその妻アルマ(リヴ・ウルマン)。
ある日、ユーハンが忽然と姿を消してしまった。
彼の日記帳を今も大切に保管するアルマが、当時の事情について静かに語り始めるところから始まります。
画業がうまくゆかないユーハンは、仕事中も奇妙な幻に話しかけられ、悩んでいました。
彼はその幻たちに”鳥人間”や”人食い人種”などと名前をつけ、まるで実在の人物のように語ります。
不眠症もひどくなり、精神的に追い詰めらてゆくユーハンに対し、アルマはそばで慰めるしか出来ません。
狼の時刻2
ある日、洗濯を始めたアルマの前に1人の見知らぬ貴婦人が現れ、ユーハンの日記の場所を教え、「読みなさい」と命じます。
その命令通り日記を読んだアルマは、ユーハンが”鳥人間”たちばかりでなく、以前の恋人・ヴェロニカ・フォーグレル(イングリット・チューリン)の幻も見ていることを知るのです。
狼の時刻5
やがて、2人はバルトルム島の所有者だという男爵から招待を受け、その城を訪れます。
男爵の一族と食事を取った後、男爵夫人は自分が購入したというユーハンの絵を2人に見せます。
狼の時刻4
それはヴェロニカ・フォーグレルを描いたものでした。
城からの帰路、アルマはヴェロニカへの嫉妬で泣き出し、ユーハンを責め始めます。
それからしばらく経ち、眠れないままにユーハンは自分の過去の経験をアルマに告げます。
海岸で釣りをしていた彼はある少年と出会い、ちょっとしたいさかいからその少年を殺してしまったというのです。
アルマはその話にショックを受けますが、それが本当かどうかはハッキリしません。
そして男爵の一族のひとりがユーハンの家にやってきて、またパーティに誘います。
出席者の中にはヴェロニカ・フォーグレルも含まれると告げ、なぜかピストルを残して去ってゆきます。
ヴェロニカのことで喧嘩になるユーハンとアルマ。
ユーハンは手に持ったピストルでアルマを撃ちます。
そのままユーハンは男爵の城へゆき、化粧を施されて全裸で横たわったヴェロニカに再会。
狼の時刻6
しかし、彼女を抱きしめた彼は男爵の一族に笑われ、侮蔑の対象となるのです。
一方、撃たれたもののかすり傷しか負わなかったアルマはユーハンを探して森の中へ。
そこでぼんやり座り込んでいた夫を見つけ、抱きしめます。
狼の時刻9
しかし、そこへまた男爵の一族が襲ってきて、ユーハンは姿を消します。
一体何が現実で何が幻なのか分かりません。
「夫と長年暮らしてきたせいで自分も幻を見たのだろうか?」と問いかけ、アルマは話を終えます。
出だしはいつものベルイマンですが、40分ほど経ったところで狼の時刻とタイトルが出ます。
ここからホラーになっていき2度目の男爵からの招待から一気に異次元の世界に入っていきます。
狼の時刻7
「逆さまになって天井を歩く男」「顔に皮膚を剥がし目玉を取り出す老婆」「死化粧をされたユーハン」「鳩だらけの回廊」「死体のヴェロニカ(美しい)の笑い」「二人の情事を見つめる館の人々」「しつこくユーハンを襲う少年」「海に沈む少年の遺体」「人形劇魔笛」など盛りだくさんです。
狼の時刻8
これは現実、ユーハンの幻想、アルマの幻想、あるいは二人の幻想、吸血鬼など色々考えさせられる作品です。
タイトルの狼の時刻というのは、夜と朝が交錯する時間帯のことで、子ともが生まれたり、病人が死んだりする時間帯と信じられています。
日本では丑三つ時のことです。
そういえば日本映画「丑三つの村」は怖かった。

8-2ウィジョヨクスモの花


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映画の話 その101(聖なる酔っぱらいの伝説)

148アスウォトモ
エルマンノ・オルミ監督の「聖なる酔っぱらいの伝説」です。
1聖なる酔っぱらい
セーヌ川の橋の下でホームレスとして暮らすアンドレアス(ルドガー・ハウアー)はある日、不思議な紳士(アンソニー・クェイル)と出会い、彼から200フランの金を与えられる。
紳士は聖テレーズの本を読んでから、奇跡が起きるようになったと言う。
ただし、日曜日の朝に聖テレーズ像のある教会でミサの後に神父に金を返すという条件が付いていた。
3聖なる酔っぱらい
それからというもの、彼の身には、引越しの手伝いの仕事が見つかったり、買った新品の財布に金が入っていたり、ギャビーという若いダンサーとのつかの間の情事を楽しんだりと、奇妙な出来事が続く。
そして迎えた約束の日曜日、教会へ足を運んだアンドレアスは、そこでカロリーヌ(ソフィー・セガレン)という女性と出会う。
実はアンドレアスはカロリーヌとは旧知の仲であり、彼女をめぐって誤って友人である彼女の夫を殺し、投獄され国外追放の身になっていた。
アンドレアスは彼女と久々の愛を楽しみ、例の約束をほごにしてしまう。
その夜不思議な夢を見る。
彼の前に少女が現れ、なぜ日曜日に会いに来なかったのかと咎められる。
聖テレーズは次の日曜日に教会で待っているから、必ず来るようにと言うのだった。
4聖なる酔っぱらい
ある日パブへ行き壁に貼られたポスターを目にし、同級生の親友がボクサーのチャンピオンになっていることを知る。
親友と再会すると親友は大喜びで夕食に招いてくれ、スーツをプレゼントしてくれると言う。
正直に浮浪者であることを明かすと、ホテルの部屋まで取ってくれた。
そのホテルに泊まっている踊り子のギャビー(サンドリーヌ・デュマ)に一目惚れしい2日間の逢瀬を楽しむが、洗面の間にギャビーにお金をすられてしまう。
5聖なる酔っぱらい
しかし返済用にとっておいた200フランは無事だった。
翌週の日曜日、アンドレアスは再び教会へ足を運ぶ。
そこで今度は幼なじみのヴォイテク(ドミニク・ピノン)と再会、彼はまたしても約束をほごにしてしまう。
おまけにヴォイテクに返済の200フランを貸してしまう。
そしてその次の日曜日、教会の前のカフェでヴォイテクと待ちあわせをしていたアンドレアスは、そこで1人の少女を見る。
その少女は前夜夢枕に立った聖テレーズと瓜二つだった。
名前を聞くとテレーズであった。
彼は泣きながら、テレーズへと感謝を述べ借金を返そうとしたが、少女は受け取らず教会へ行ってしまう。
次の瞬間、アンドレアスは昏倒してしまう。
6聖なる酔っぱらい
教会へ運ばれた彼は薄れる意識の中テレーズを見つけ、200フランを渡そうと手を差し伸べ、そのまま息を引き取るのだった。
セリフは少なく、演出と俳優の演技、映像で見せます。
さすがゴダールが絶賛した監督です。
真っ黒なクレジットからセーヌの川の音とストラビンスキーが流れます。
良い映画の予感です。
2聖なる酔っぱらい
街の音とストラビンスキーがとても効果的に使われます。
不思議な紳士(アンソニー・クェイル)が現れます。
何処かで見たような人です。
そうですエリック・クラプトンにそっくりなのです。
7聖なる酔っぱらい
そしてアンドレアス(ルドガー・ハウアー)です。
ブレードランナーのレプリカントです。
この二人から映画は始まります。
映画の中でアンドレアスはワインばかり飲んでいます。
ほとんどアル中です。
お金の支払いや両替などのシーンが他の映画よりも圧倒的くとてもリアルです。
貧乏人がよく食べるスープのような煮込み料理もよく出てきます。
アンドレアスの入浴シーンは最高です。
あんなに楽しそうにバスに入る人はいません。
エンディングのテレーズとアンドレアは素晴らしい酔っ払いと天使です。

神よ 全ての酔っ払いに美しい死を与え給え

8-2ウィジョヨクスモの花

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映画の話 その100(ピアニスト)

146ドゥルノ
今回はミヒャエル・ハネケ監督の「ピアニスト」です。
ピアニスト1
今までに「ファニーゲーム」「隠された記憶」を見ましたが、それなりに良い映画でした。
「ピアニスト」は最高傑作です。
ミヒャエル・ハネケとイザベル・ユペールは最強のコンビです。
普通では描写しない様なシーンが沢山出てきますが、すべてが必然です。
これらのシーンがなければこの映画は成り立ちません。
ウィーンの名門音楽院でピアノ教師として働く39歳のエリカは、今までずっと過干渉な母親の監視下で生きてきました。母親に対して愛憎入り混じった感情を抱きつつも、突き放せずにいます。
母親も子離れ出来ずにいます。
ピアニスト4
ファッションや恋愛などとは無縁の人生を送らざるを得ず、ましてや男性と付き合ったことすらありません。
その欲求不満を晴らすかのように倒錯した性的趣味を密かに持つようになります。
ポルノショップに入り個室でポルノビデオを見ながらゴミ箱をあさり、前の客が使用したティシュを嗅いで、恍惚としています。
またカーセックスを覗き、自分を慰めたり、カミソリで陰部を傷つけたりします。
しかし彼女には罪悪感など全くなく、夜の生活の一部になっています。
それが見ていてとても辛く重いのです。
そんな彼女の前に若い学生のワルターが現れ、彼女に一目惚れして求愛します。
ピアニスト3
エリカは突然の出来事に警戒し(今までに恋愛経験が全くない)、彼を拒絶しますが、ワルターはあきらめず、エリカが勤める音楽院に編入までしてきます。
それでも彼に対して厳しい態度を崩さないエリカですが、ある時、化粧室で熱烈にキスをされたのをきっかけに、自らの倒錯した性的趣味(マゾヒスト)をワルターで満たそうとします。
ところが、あまりの倒錯した要求にワルターは幻滅し、エリカに侮蔑の言葉をぶつけて立ち去ります。
エリカはワルターに会うためにアイスホッケーの練習場にやってきます。
ピアニスト
そして道具部屋でフェラチオをします。
あまりに喉の奥に入れたのでモドシテしまいます。
あわてて口を濯ぐエリカ、そのままワルターにキスをしますが、口が臭いと拒絶されます。
エリカはショックを受けるが、後日になって、深夜にエリカの家に突然やって来たワルターは、エリカの母親を部屋に閉じ込め、その部屋の前で不本意ながらも「エリカの希望通りに」エリカを殴りつけて犯します(おそらく初めての男性経験)。
ことを終えたワルターは「互いに秘密にしておこう」と言い残して帰ってしまいます。
寝室で母親の横で眠るエリカ、エリカを責める母親、突然母親の上に乗りキスをするエリカ、驚く母親、とても重要なシーンです。
翌日、顔を腫らしたエリカはナイフをバッグに忍ばせて自分が代理で演奏するコンサート会場にやって来ます。
ロビーでワルターがやって来るのを1人で待っていたエリカでしたが、ワルターが親戚達と現れ、何事もなかったかのように明るく爽やかにエリカに挨拶し、会場に入って行くのを呆然と見送くります。
忍ばせていたナイフで左胸を刺し、血を流しながら街中に歩み出て行くところで終わりです。
ピアニスト5
とても重い映画です。
エリカと母親の関係がとても複雑です。
この映画の根幹をなします。アニー・ジラルドとイザベル・ユペールの演技は特筆ものです。
それにしてもイザベル・ユペールと言う女優は天才です。
少し「マドモアゼル」を思い出しました。
若い時のジャンヌ・モローとオーバーラップします。
エンディングで胸にナイフを刺すエリカの表情は一生忘れられません(トラウマになるかも)。
ミヒャエル・ハネケ監督は只者ではありません。

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映画の話 その99(オテサーネク)

144ブリスロウォ

以前「アリス」でお話ししたヤン・シュヴァンクマイエル監督の「オテサーネク」です。
「オテサーネク」とはチェコの民話で食人木の怖い話です。
1オテサーネク

あらすじは『不妊に悩むホラーク夫妻は、アパートの隣人シュタードレル氏の勧めで購入した別荘にやって来る。
夫のカレルは別荘の庭で赤ん坊のような形をした切り株を見つけると、ノイローゼの妻ボジェナをなぐさめるために切り株を赤ん坊の形に整えてプレゼントする。
4オテサーネク

ところが、ボジェナはその切り株を息子と思い込んで溺愛し、自分が産んだと見せかけるために妊娠したように振る舞うようになる。
カレルは何度も切り株を処分しようとするものの、結局は妻の望みを聞いてやってしまう。
3オテサーネク

そして8ヶ月が過ぎたところで、ボジェナが出産したふりをすると、「オティーク」と名付けられた切り株は自らの意思で動き出し、恐ろしい食欲であらゆるものを食べるようになる。
見る見る成長したオティークが、飼い猫だけなく、訪ねて来た郵便配達人や福祉事務所の女性まで食べてしまうと、この事態に、ホラーク夫妻はオティークを地下室に閉じ込めることにする。
2オテサーネク

ところが、「オテサーネク(食人木)」の民話を読み、かねてからオティークの存在に気付いていたシュタードレル夫妻の娘アルジュビェトカが、実の弟のようにオティークの面倒を見るようになると、オティークもアルジュビェトカの言うことを聞くようになる。
5オテサーネク

しかし、しばらくして食料を用意できなくなったアルジュビェトカは、アパートの住人を「エサ」に選ぶようになり、遂にはホラーク夫妻もオティークに食べられてしまう。
立て続けに人が消えて行くことを不審に思ったアパートの管理人は、オティークの存在に気付くと、泣いて止めるアルジュビェトカを押しのけて、民話で怪物オテサーネクを倒したキャベツ栽培の農婦のように鍬を持って地下室に下りて行く』という話です。
まさにヤン・シュヴァンクマイエル監督のためにあるような民話です。
そして映画の中でも重要な役割をする絵本の「オテサーネク」は監督の奥さんエヴァが民話を元に絵本にしました。
監督は自分のことをシュールレアリストと言っていますが、エヴァもシュールレアリストに間違いありません。
オープニングクレジットの赤ん坊の泣き声と音楽が不安を誘います。
そして魚のように水槽から網で取り出され、新聞紙に包まれ売られる赤ん坊は、いきなりシュヴァンクマイエル監督の世界です。
シュタードレル家の食事ほとんどシチューかスープのようなもので得意の口のアップ、アパートの性欲が衰えない老人、専門書を読む、とてもこましゃくれた子供アルジュビェトカ、家庭菜園でキャベツを作っている管理人のオバさんがシュヴァンクマイエル監督の世界を作り出しています。
この世界が好きな人にはたまらない映画です。
なを「シュヴァンクマイエルのキメラ的世界」では「オテサーネク」のメーキングが見られます。


エヴァ・シュヴァンクマイエル 「オテサーネク」
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8-2ウィジョヨクスモの花


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映画の話 その98(アメリ)

140サルヨ
ロスト・チルドレンのジャン=ピエール・ジュネ監督が心優しく描くモンマルトル、不器用な恋の顛末「アメリ アメリ・プーランの素晴らしい運命」です。
1アメリ
物語はアメリは医師である父の診療を受ける度に動悸が激しくなるのを父が心臓病と勘違いしたため、学校には行かず、友達も出来ず、空想に更ける幼少期を過ごしていました。
8アメリ
不幸な事故で母を亡くし、このままではいけないとアメリは自立を決意します。
アメリが働くのは「ドゥ・ムーラン」というカフェ。
恋人もなく週末に父を訪ねるだけの日々を過ごしていました。
ある日部屋の壁の穴から古い宝箱を見つけたアメリは持ち主を探し、返したところ非常に喜ばれます。
そこでアメリは人が少しだけ幸せになる親切を始める事を決意します。
2アメリ
アメリは父親や同じカフェで働く同僚のジーナら、自分の周りの人達にちょっぴりとした親切を施すのです。
ある日証明写真機の下で探し物をしているニノ(マチュー・カソビッツ)を見かけます。
またアメリはスキンヘッドの男を追いかけるニノを見かけ、いつしかニノにときめきを覚えます。
その時に、ニノが落とした荷物からアメリはニノが捨てられた証明写真を集めている事を知ります。
ニノがアルバムを探しているという張り紙を見つけたアメリでしたが、張り紙に書いてある番号に電話をする勇気がなかなか出ません。
アメリは同じアパートのレイモンに恋の相談をします。
7アメリ
勇気を出してニノの職場(ポルノショップ)を訪ねたアメリ、ニノは不在で、ニノのバイクにメッセージを残します。
メッセージの指示通りにやって来て、アメリの不思議な細かい指示に従ったニノはアルバムを取り戻すことが出来ました。ニノは会えなかったアメリの存在が気になり出します。
ニノは謎に包まれたアメリに会いたいが一心で再び張り紙を張りますが、その際に拾った写真にドゥ・ムーランに来るようにと書かれていました。
ニノは指示に従ってアメリに会いに来ましたが、アメリは自分がその謎の存在だということを言い出すことが出来ず、ジーナに頼んでメッセージを渡してもらいます。
5アメリ
またしても言い出すことができず自己嫌悪に陥るメアリはレイモンのところに相談に行きます。
レイモンはメアリを勇気付け、ビデオメッセージを送ります。
そしてついに二人は結ばれるのでした。
3アメリ
この映画はナレーションと独特のカラー(緑と赤)で成り立っています。
特に事件が起こるわけではなく、少し変わったパリの女の子の日常をユーモアで綴っているだけです。
そのセンスがずば抜けているのです。
アメリの空想の世界、アメリのいたずらやニノに対する謎作り、父親の庭に飾ってある小人ドワーフの世界旅行などとCGの世界が絡み合ってジャン=ピエール・ジュネの世界に引き込まれます。
もちろんアメリのオドレイ・トトゥがいなければこの映画は成り立ちません。

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