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映画の話 その79(エル・トポ)

102ユディスティロ
鬼才アレハンドロ・ホドロフスキー監督作品のエル・トポです。
1971年にニューヨークのミッドナイトシアター(夜中の12時頃1回のみ上映)で公開され、次第に口コミで評判を集め、ミック・ジャガーやアンディ・ウォホール、デニス・ホッパーらも絶賛しジョン・レノンに至ってはエル・トポと次回作(ホーリー・マウンテン)の独占配給権を買ってしまいます。
日本では1986年にやっと公開されました。
1エル・トポ
「プロローグ」
一人息子とともに旅をしていたガンマン、エル・トポは住人たちが虐殺された町にさしかかり、その暴虐の仕打ちをした一味が占領している修道院を奇襲して、住人たちを解放する。
「創世記」
一味の頭目の慰みものになっていた女は、強い男エル・トポに一人息子を捨てさせ(修道院に残す)、自分と旅をしてほしいと願う。
そして女から愛の証拠に砂漠にいる四人のマスター・ガンマン(達人)を殺せと言われ、最強を探索する旅が始まる。
一人目の達人は両腕のないフリークスの男と両足のないフリークスの男の二人一組の従者を従えた盲目のヨガ行者である。無の境地に達した達人は弾丸を心の空白に導くことで撃たれても死ぬことがないという。
エル・トポは戦えば負けると感じるが、決闘場に落とし穴を仕掛け騙まし討ちで勝利を収め、達人の仇を討とうと襲い掛かって来た従者を恋人と協力して返り討ちにする。
2エル・トポ
旅の途上、二人目の達人を知っているという女が現れ、彼女の案内で三人はその場所へ向かう。
二人目の達人は自己喪失を極め、いかなる精密作業でも失敗することのないガンマンである。
早撃ちで彼を凌ぐものはいない。
だがエル・トポは達人が異常なまでのマザコンである事を知ると、隙を突いて達人の母を襲って怪我をさせ、動揺した達人を後ろから撃ち殺す。
「預言者たち」
三人目の達人は抜き撃ちの達人でウサギと音楽をこよなく愛する完全者である。
人の心を読む超能力を持ち、銃には弾は一発しか込めず、いかなる相手をもその一発で心臓を射抜いて仕留める腕を持つ。しかしエル・トポは胸に鉄板を仕込むことで完全者を討ち果たす。
6エル・トポ
旅に同行する女はエル・トポではなく、その恋人を誘い奇妙な三角関係が生まれる。
四人目の達人はもはやガンマンではない。
仙人のような風貌で何も持たず、自然と一体化した達人は素手で殴りかかっても無邪気な子供みたいに笑いながらヒラリとかわし、銃で撃ったら虫取り網で相手の弾丸を打ち返すことができるのである。
私を倒しても何も得るものはないという達人は、エル・トポに命には何の価値も無い事と決闘の無意味さ、そして全ては無である事を悟らせる為にエルトポが持っていた銃を手に取り、それでエルトポの目の前で自らの命を断つ。
エル・トポは自分の破壊してきたものに打ちのめされる。
エルトポは銃を捨てた。
神に見放され、そして恋人にも裏切られたエル・トポは全てを失い、長い眠りにつくのだった。
3エル・トポ
「詩篇」
眠りから覚めたエル・トポは自分がフリークスたちの村で神として崇められていることを知る。
彼らは洞窟に閉じ込められ、社会から見捨てられた生活を送っていた。
生まれ変わったエル・トポは洞窟にトンネルを作り、途絶した村を救おうと決意する。
聖者のような姿のエル・トポは、長年自分の世話をしてきたというフリークスの女と町に下り、退廃と偽りに満ちた下界で芸をして資金を集め始めた。
5エル・トポ
「啓示」
芸での成り行きで女と結ばれたエル・トポは、彼女と結婚式を挙げようとする。
だが訪れた教会で見たのは、かつて自分が捨てた息子の成長した姿だった。
復讐しようとする息子に、トンネルができるまで待ってくれと頼むエル・トポ。
息子は監視の為に同行し、女がエル・トポの子を妊娠したのが判明し、作業に支障が出る程お腹が大きくなってからは資金集めを手伝うようになる。
やがてトンネルが完成するが、「師は殺せない」と息子は復讐を果たすことはなかった。
エル・トポはもはやかつてのエル・トポではないのだ。
しかし、フリークスたちが下界に下りたとき悲劇が起きる。
エル・トポの制止を聞かずなだれ込んだ異形達を町は受け入れなかった。
彼らは皆殺しにされてしまう。
7エル・トポ
エル・トポは怒りにまかせ、町の住人に蜂の巣にされながらも彼らを全員撃ち殺し、自らは焼身自殺して果てるのだった。
後には息子と女、そして女が産み落としたエル・トポの血を継ぐ赤ん坊が残された。
残された者達の旅は続く。
この映画の時代背景はサイケデリックムーブメント真っ只中で、監督自身「目で見る合法的なドラッグ」と言っています。
まさにその通り。
馬に乗り砂漠をゆくエル・ポトは完全なガンマンスタイルに対し息子は素っ裸、おまけに日除けのコウモリ傘で始まります。
とにかく血です。
砂漠に吸い込まれる地、池が真っ赤に染まる血、川となって流れる血。
8エル・トポ
そこに訳のわからない多数のウサギの白、妙にシックでモダンな砂漠の建物、恐るべきガンマンたちの個性、後半は少しダレますが、フリークス達が頑張って持ちこたえます。
特にエル・トポの世話をするフリークスの女性は素晴らしい。
バンデットQの小人達と勝るとも劣らない演技です。
とても神々しく見えます。
音楽も控えめですがとてもセンスが良いと思います。
とにかく監督のあふれるアイデアをつないだ、いとも不思議な映画です。

8-2ウィジョヨクスモの花


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映画の話 その78(暗殺のオペラ)

128ガレン
久しぶりに名画を見ました。
ベルナルド・ベルトルッチ監督の「暗殺のオペラ」です。
暗殺のオペラ1
「ラストタンゴ・イン・パリ」で私は監督の熱狂的支持者になりました。
そのさらに2年前の作品で同時期の「暗殺の森」は大作ですばらしい映画でしたが、「暗殺のオペラ」は珠玉の小品です。
同じ年によく二つの質の高い作品が作れたことに驚きです。
この映画の特徴は何と言っても映像のうつくしさです。
イタリアの田舎町をこれだけ美しく幻想的に写したヴィットリオ・ストラーロとフランコ・ディ・ジャコモの努力と才能によるものでしょう。
終始カメラは水平に移動するのです。
そしてそれがとても心地よいのです。
暗殺のオペラ2
舞台は1960年代の北イタリアの田舎町タラで英雄として称えられている父の死の謎を探るべく訪れた、父と同じ名前の青年アトスが真相を突き止めるまでを描いた物語です。
父アトスは約30年前その街でアンチファシズムとして戦っていました。
オペラ劇場でムッソリーニの暗殺を計画しましたが、誰かがその計画を密告し、逆にそのオペラ劇場でヴェルディのオペラ「リゴレット」を観劇中に暗殺されました。
暗殺のオペラ8
父の愛人であったドライファから父の死の真相を突き止めてもらいたいと依頼されたアトスは、当時、父の仲間であったアンチファシストの3人に当時の状況を聞き出します。
様々な情報や自身の直感から、ついに父の死の真相を突き止めます。
それは、父の暗殺は民衆にアンチファシズムを浸透させるべく、父自身が演出したものだった、という衝撃的な事実でした。
つまりムッソリーニ暗殺計画の密告者は父自身で、仲間に自らを殺害させていたのでした。
さらに驚くべきことに、街に住む人々は皆、この事実を知っていたのです。
キャストが素晴らしい。
暗殺のオペラ3
二役のジュリオ・ブロージはサファリジャケットとバンダナで父親になりますが違和感は全くありません。
父の愛人のアリダ・ヴァリ、3人の親友たち皆一流の俳優でさらに映画に重みを与えます。
まずはオープニングのタイトルバックの絵画で脅かされます。
ラストタンゴインパリのフランシス・ベーコンとガトー・バルビエリでノックアウトされたのですがこちらが先でした。
カメラが木々を写しそのまま水平移動するとそこはタラの駅でドンピシャで列車が入ってきます。
そしてアトスが降りてきます。
このタラの駅が重要でアトスが列車に乗ろうと帰りかけて訪れる夕方から夜にかけての美しさは筆舌に尽くし難いです。
そして真実に気づき町に戻ります。
ansatsunoopera-movie.jpeg
町では人々が(老人しかいない)夕暮れの中、外で時間が止まったように「リゴレット」に聞き入っています。
このシーンがベストでシュールな絵画のようです。
そして全てがわかって駅に戻ります。
暗殺のオペラ7
アトスは列車を待っています。
何気無くレールを見ています。
そしてレールをカメラが水平移動していくとレールは徐々に雑草に覆われ、やがて雑草でレールは見えなくなり終わります。
なんと素晴らしいエンディングでしょう。
ベルナルド・ベルトルッチ監督は本物の監督です。

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映画の話 その77 (セリーヌとジュリーは舟でゆく)

123ララサティ
ヌーベルバーグの創始者ジャック・リベット監督の1974年の作品です。
セリーヌとジュリーは舟でゆく
私は好きです。
シンプルなタイトルクレジット(音楽がまたいい)のあと「たいていの場合、物語はこんな風に始まった」という字幕から始まります。
「不思議の国のアリス」にインスパイアされた物語はパリの公園のベンチで魔法の本を読んでいるジュリー、反対側のベンチには猫、とその前でスカーフとサングラスを落とすセリーヌ、拾ってわたそうとするジュリーとセリーヌのおいかけごっこが始まります。
セリーヌ4
パリの町の中をおいかけごっこするシーンは最高です。
二人は共同生活をはじめます。
そしてある郊外の古い屋敷にひきつけられた二人は魔法のボンボンをなめ、そこで起こる少女毒殺に至る物語を幾度となく幻視します。
セリーヌ6
妻に先立たれた男オリビエの娘マドリンが、彼の義姉カミーユと亡き妻の友人ソフィのオリビエをめぐる愛の葛藤の中で殺される(妻の遺言で娘の成長するまで彼は再婚できないのだ)。
犯人は?その結末を変えようと、二人はボンボンが切れてしまいますが、図書館で見つけた魔法の薬のレシピを使って、薬の力で夢の中に入り込み、セリーヌとジュリーで“二人で一人”の付き添い看護婦アンジェールとして、少女を助け出します。
そしてセリーヌとジュリーとマドリンは公園でボートにのります。
そこでオリビエとカミーユとソフィの乗るボートとすれ違います。
セリーヌ
次のシーンは冒頭のシーンですがセリーヌがベンチでうとうとしているとそこへジュリーが通りかかり本を落として行く。
本を拾い追いかけるジュリー・・・・ベンチの猫がカメラを見つめエンドクレジットです。
あらすじは以上ですが色々な所に仕掛けがあるので一度では理解出来ません。
セリーヌ5
何度も見るうちにさらにジャック・リベット監督の魔術にかかり、ラビリンスから抜け出せなくなります。
素晴らしい映画でした。
セリーヌ役のジュリエット・ベルトが時々ミック・ジャガーに見えるのは私だけでしょうか?

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映画の話 その76 (薔薇の名前)

122ジュンクンマルデオ
ジャン=ジャック・アノー監督のウンベルト・エーコによる同名小説『薔薇の名前』の映画化作品です。
薔薇の名前1
ウンベルト・エーコの原作は難解と言われていますが、純粋にミステリーとして十分に楽しめます。
物語は14世紀フリードリヒ美王の特使としてバスカヴィルのウィリアム修道士(ショーン・コネリー)が見習修道士メルクのアドソ(クリスチャン・スレイター)とともに北イタリアの某所にあるベネディクト会修道院を訪れる。
薔薇の名前2
ウィリアムはかつて異端審問官としてそのバランスのとれた判断が高く評価されていた。
ウィリアムの本来の目的は、当時「清貧論争」と呼ばれた、フランシスコ会とアヴィニョン教皇庁のあいだの論争に決着を付ける会談を調停し、手配することにあった。
ところがその修道院において、両者の代表の到着を待たずに奇怪な事件が次々と起こる。
薔薇の名前4
二人は文書館に秘密が隠されていることを察知し、これを探ろうとするがさまざまな妨害が行われる。
修道院内で死者が相次ぎ、老修道士がこれは黙示録の成就であると指摘すると、修道士たちは終末の予感におののく。
やがてフランシスコ会の代表と教皇側使節一行が到着するが、論争の決着は付かず決裂する。
教皇使節と共に会談に訪れていた苛烈な異端審問官ベルナール・ギーが、修道院で起こっている殺人事件は、異端者の仕業であるとして、異端審問を要求した為、事態は、まったく異なる方向へと進行して行く。
ウィリアムはそれでも、事件の秘密解明に全力を注ぐことを決意する。
怪事件はアデルモという若い写本絵師の死、ギリシャ語の翻訳者ヴェナンツィオという名の修道士の死、図書館の副司書ベレンガーリオの死、司書マラキーアの死と次々に起こる。
薔薇の名前3
この事件をウィリアムは解いてゆく。
ウイリアムはアデルモ(自殺)以外の一連の死は図書と関係があると考え、禁止されている図書館へ侵入する。
そこで禁書を持ったホルヘ長老を見つける。
薔薇の名前5
その禁書はアリストテレス著の喜劇であり、笑いを厳禁するベネディクト会にとってはまさに「禁書」であった。
禁書には毒が塗ってあり、ヴェナンツィオ、副司書ベレンガーリオ、司書マラキーアの死因は禁書を読んだことによるものであった。
それは禁書のページに毒(ヒ素)が塗ってあり、ページをめくるために指を舐める習慣があったために、毒殺されたのであった。
キリスト教宗教論争は私たちに馴染みが薄いが、決して難解ではなくとても楽しめる映画です。
キリスト教も仏教も清貧に対する考え方が同じでとても興味深い。
修道院をはじめ時代考証が素晴らしく、美術のセットや映像もとても美しい映画です。
大道具、小道具は全て時代考証に基づきわざわざ作られたものだそうです。
薔薇の名前6
特に図書館が素晴らしい。
死体の状況や魔女狩りなど興味がつきません。
キャストは超個性的な俳優しか出ていません。
ウンベルト・エーコもホームズのファンだったのでウィリアムは中世のホームズ、メルクはワトソンになっています。
こういう物語は大好きです。
“枯れても なお残るは 薔薇の名前”

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映画の話 その75(裸のランチ)

120スムボドロ
 今回はビートジェネレーションの作家ウィリアム・バロウズの「裸のランチ」の映画化です。
裸のランチ1
監督は「スキャナーズ」や「ヴィデオドローム」でカルト的人気を博したデヴィッド・クローネンバーグです。
特に明確なあらすじは無く、非線形な物語をクローネンバーグ独自の脚本に作り上げクローネンバーグの世界が好きな人にはたまらない映画です。
興味のない人には単なるB級ホラーです。
原作はヒッピームーブメントの時にジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」とともに購入しましたが、途中でやめてしまいました。
映画は小説家で元ジャンキーのビル・リー(バロウズの分身)の現実と幻覚の境界が朦朧としているビルの視点で、物語は進行しますのでとてもシュールです。
あらすじは小説を書く傍ら害虫駆除の仕事をしているビルが、業務用に支給されるゴキブリ駆除剤でトリップすることを覚え、妻のジョーンともどもすっかりゴキブリ駆除剤の虜になってしまいます。
裸のランチ2
ゴキブリ駆除剤中毒から脱するべく医師のベンウェイを訪ねますが、そこで処方されたムカデ入りの薬「ブラック・ミート」は、治療どころか彼を一層幻覚の世界に引きずり込んでしまいます。
ある日トリップした状態で妻と「ウィリアム・テルごっこ(頭の上にコップを乗せピストルで撃つ)」をしていたビルは誤って妻を射殺してしまいます。
裸のランチ4
当局から身を隠すため、ビルは「インターゾーン」なる北アフリカの地中海に面した異国情緒あふれる港町に逃亡します。そこでも麻薬とアルコールに溺れてしまいます。
この土地で一応タイプライターに向かって小説を書きながら妻そっくりの女や魅惑的なゲイなどさまざまな人に出会い、いろいろな事件に巻き込まれます。
裸のランチ10
中毒はさらにひどくなり、アネクシアという国に妻そっくりな女性を連れて入国しようとします。
そこで警備兵に会い入国を拒まれますが、急にビルは妻そっくりな女性と「ウイリアムテルごっこ」をして女性を撃ち殺してしまいます。
すると警備兵は入国を許可します。
以上があらすじですが、重要なのはビルが見ているトリップした幻影です。
そこでは主人公のタイプライター(クラーク・ノヴァ)が重要な役割を演じます。
喋る肛門を持つゴキブリタイプライターなのです。
裸のランチ7
これがかっこよく助演男優賞に値します。
他のタイプライターもなかなかです。
ムジャハディンというアラブ製のタイプライターは最高です。
裸のランチ6
妻のジョーンが駆除剤を大量に服用してゴキブリに息を吹きかけ殺しているシーンも好きです。
ビルがムカデに息を吹きかけ殺しているシーンもたまりません。
裸のランチ5
ゲイの集まるバーで初めて会ったマグワンプ、ムカデ入りの薬「ブラック・ミート」の工場、タイプライター同士の戦い、キキとクローケの鳥小屋でのセックス、など素晴らしいシーンの連続です。
裸のランチ8
オープニングのクレジットのセンス(色と音楽)が50年代のニューヨークを感じさせます。
オーネット・コールマンのサックス最高!
ロンドンフィルとの共演も素晴らしい。
特にエンドロールのオーネットは天才だ。
ビル・リーのピーター・ウェラーはもちろんですが、私はジョーンのジュディ・デイヴィスが大好きです。
ジョーズのロイ・シャイダーも良い演技をしています。
でもやはりタイプライター(クラーク・ノヴァ)がベストの演技をしています。
裸のランチ13
とにかく不思議な映画です。

「麻薬とは裸の、むき出しの食事である」ウィリアム・バロウズ

8-2ウィジョヨクスモの花


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