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映画の話 その84(アリゾナドリーム)

114プルギウォ
今回は奇才エミール・クストリッツァ監督のアリゾナ・ドリームです。
アリゾナ1
まず出演者です。
シザーハンズで強烈な印象を残したジョニー・デップ、子供時代に見たディーン・マーティンとのコンビで一世を風靡したコメディ俳優のジェリー・ルイス、アメリカンニューシネマの代表作「俺たちに明日はない」のヒロイン、フェイ・ダナウェイ、一度見たら忘れられない、リリ・テイラー、「バッファロー66」でブレイクするヴィンセント・ギャロたちの素晴らしい演技とキャスティングの妙です。
子供の頃に両親を失ったアクセル(ジョニー・デップ)はアリゾナでキャディラックを売る叔父レオ(ジェリー・ルイス)に育てられたが、今はNYで漁業局かなにかの魚に標識をつけて数や成長を監視する仕事をしている。
アリゾナ3
そんな彼のもとに叔父レオの使いで俳優志願のポール(ヴィンセント・ガロ)がやってくる。
レオが若い女性ミリーと結婚するので、立会人になって欲しいというのだ。
アクセルは拒絶するが、眠っている間にアリゾナに連れてこられてしまう。
ひさしぶりにやってきたアクセルに、レオは社会への統合、レオ流のアメリカン・ドリームの世界へ誘う。
アリゾナ2
つまりキャディラック・ディーラーとなって叔父を手伝い、そしていずれは仕事を継ぐことだ。
キャディラックのセールスを始めたアクセルのところにやってきたのは夫を射殺したらしい未亡人のエレイン(フェイ・ダナウェイ)と義娘のグレース(リリ・テイラー)。
2人の女性は互いに愛憎こもごもの感情を持っていたが、アクセルはエレインの愛人となり彼女の夢「空を飛ぶこと」を実現しようとする。
アリゾナ8
義娘のグレースは嬉しくはなかった。
彼女の方は自己破壊的で自殺願望を持ち、亀になることを夢みていた。
レオの若い新妻ミリーから連絡があった。
レオが自殺を計ったのだ。
彼のドリームは打ち砕かれてしまったのだろう。
アクセルは駆け付けるが、救急車の中でレオは息を引き取った。
アリゾナ7
そんな中アクセルは次第にグレースに惹かれてゆく。
エレインの40歳の誕生日、グレースは義母エレインに飛行機をプレゼントした。
アリゾナ4
その飛行機に乗って飛び回るエレイン、この時アクセルとグレースの愛は決定的なものになる。
しかしグレースは飼っていた何匹もの亀を草原に逃がし、用意した白いドレスを着ると拳銃を持って雨の降りしきる中、外に出ていく。
エレインとアクセルが気付いて追いかけるが、彼女は自らに向けて拳銃を発砲した。
そのとき雷が落ちてエレインの飛行機を破壊する。
アリゾナ5
以上があらすじです。
はじめからエミール・クストリッツァ全開です。
サボテンはレオの自宅の庭だし、とてもリアルなエスキモーはアクセルの夢だし、上下に尻尾を振って泳ぐオヒョウは普通の魚のように泳ぐし、出てくる動物の使い方がクストリッツァです。
グレースのストッキングで首吊り自殺するシーン、素人演芸大会で見せるポールの「北北西に進路を取れ」のケーリー・グラントのモノマネとその前に出演した女性の演技などエミール・クストリッツァのセンスが光ります。
一方ピストルが出てくるシーンではものすごい緊張感を作り出します。
音楽はグレースのアコーディオンが最高です。
まるでアキ・カウリスマキです。
アコーディオンを弾くグレースを見るだけでもこの映画の価値はあります。
もちろんイギー・ポップの音楽も素晴らしく、BESAME MUCHOのノリは最高です。
イギーポップ
この映画の最大の収穫はグレースのリリ・テイラーです。
エミール・クストリッツァはすごい。
イギー・ポップは不滅です。

8-2ウィジョヨクスモの花


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映画の話 その83(北の橋)

113アリムビ
ジャック・リヴェット監督の「北の橋」を見ました。
またしてもリヴェットマジックにかかりました。
北の橋1
パリを撮らせたらピカイチです。
オープニングはバティストがバイクに乗ってパリの町をライオンの像を見ながら走り回っています。
一方刑務所から出たばかりのマリーはトラックの荷台に乗って恋人の住むパリに来る。
彼女は子供の頃、井戸に落ちて閉所恐怖症になり室内にはいられない。
二人の出会いはバティストがマリーをひきそうになったことから始まる。
バティストも宿無しで二人で野宿をする。
北の橋3
そして訳ありのマリーの恋人ジュリアン。
ジュリアンを追うなぞの組織。
これらがパリの町をベースに双六でミステリーの味を付け、「ドン・キホーテ」のスパイスを一振りすればリヴェットマジックの出来上がりです。
北の橋2
いたるところに軽妙なシャレが利いています。
4日間の出来事ですがあらゆるパリがでてきます。
前半は都会のパリ、後半は殺伐としたパリ、素敵です。
バティスト役のパスカル・オジェが素晴らしい。
始めはウザイ奴だと思っていたのですが、次第に引き込まれ、遊園地のドラゴンに挑むシーンは涙ものです。
北の橋5
彼女はマリー役のビュル・オジェの実の娘でなんと25才で亡くなってしまいました。
とても気になったことが2つあります。
1つは最後の空手のシーンです。
バティストは良いのですが正体不明のマックスが問題です。
空手の極意を教えるのですが、マックスは空手がとても下手なのです。
とても良いシーンなのに残念です。
北の橋7
もしこれがわざとこのように演出したのならジャック・リヴェット監督に脱帽です。
もう1つは音楽です。
ピアソラを使い切っていません。
ラストタンゴ・イン・パリのガトー・バルビエリの勝ちです。
北の橋4
これなら音楽はなしにして、パリの音を使ったほうが良かった気がしますがいかがでしょうか。
パリの町にはタンゴが合わないわけがありません。
「セリーヌとジュリーは舟でゆく」もそうですが、パリを舞台にした大人のファンタジーがたまりません。

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映画の話 その82(かくも長き不在)

109ノゴギニ
マルグリット・デュラス脚本、アンリ・コルピ監督の「かくも長き不在」です。
デュラスが大好きで、原作だけでなく脚本を担当した「Hiroshima mon amour 」、「Moderato cantabile」、「Mademoiselle」などの映画はデュラス色が出た素晴らしい作品でした。
今回もアンリ・コルピ監督との関係が素晴らしく名画になりました。
かくも長き不在
物語はパリ祭の日、パリでカフェを営むテレーズ(アリダ・ヴァリ)の店はいつものように常連客がツールドフランス、アルジェリア、バカンスをどうするなど話し合っている。
テレーズは結婚したが16年前にゲシュタポに夫を連れ去られてしまい消息不明で、手伝いのマルティーヌと店を切り盛りしている。
トラック運転手のピエールが恋人である。
翌日、薄汚れたホームレス風の男(ジョルジュ・ウィルソン)が「セビリアの理髪師」の「陰口はそよ風のように」を口ずさみながら通り過ぎる。
かくも長き不在2
その男を見てテレーズは顔色が変わる。
ゲシュタポに連れ去られた夫に瓜二つだった。
ホームレスの後をつけセーヌの辺りのバラックに住んでいることを突き止める。
しかし男は記憶喪失で過去のことは全く覚えていない。
かくも長き不在4
テレーズは男を店に誘う。
店には夫の叔母と甥を呼んでおいて、確かめてもらうがはっきりしない。
しかし彼女は確信する。
かくも長き不在3
今度は食事に誘う。
そこで彼女はいろいろ昔のことを聞き出すがホームレスは記憶にない。
しかし好物のチーズは同じだった。
食事が終わり、二人はオペラを聴き一緒に歌う。
そして踊った。
かくも長き不在5
その時彼女の手が彼の頭に触る。
そこにはとても大きな傷跡があった。
ゲシュタポの拷問の跡。
たまらず彼女は「あなたは私の愛した人にそっくりなのよ」と言ったが男は困ったような顔をして帰り支度を始め、彼女と握手をして店を出ていく。
店の外では、常連客がテレーズの様子を伺っていた。
彼らは出てきた男に「アルベール!」と彼の本名を呼ぶ。
テレーズは我慢できなくなり、大声で「アルベール・ラングロワ!」と叫ぶ。
男は反射的に立ち止まり、両手をあげる。
かくも長き不在6
戦争時の恐ろしい記憶が蘇った。
その直後、男は全速力で走り出し、トラックの行き交う道路へ飛び出していく。
そしてアベールはまたいなくなってしまった。
テレーズは「冬を待ちましょう」と寂しげに呟く。
冬になって行くあてがなくなれば、彼はきっと帰ってくると。
かくも長き不在7
空き地を歩くホームレスの男から始まります。
「陰口はそよ風のように」を歌いながら。
パリ祭のシーンが入り、花火そして彼女のカフェです。
まずモノトーンがとても美しい映画です。
忙しく働くテレーズの脇の下の汗が印象的です。
ジュークボックスが重要な役割を果たします。
鏡の使い方も上手です。
ホームレスのバラックの前を流れるセーヌ川の中洲にはなんと昔はルノーの工場があったんですね。
ホームレスが食事に招待され、用意した個室に入ろうとした途端の拒否反応、鏡に写る頭の傷跡、最後に呼び止められたときの手のあげ方に戦争の恐怖を感じます。
古きパリの人々の生活が垣間見られます。
いいですね。

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映画の話 その81(ビギナーズ)

104ドルパディ
 監督のジュリアン・テンプルはセックス・ピストルズ、ローリング・ストーンズ、デビッド・ボウイなど多くのミュージシャンのミュージック・クリップを手掛けたことで知られています。
舞台はすでにアメリカで現れた大人でもなく子供でもない世代「ティーンエイジャー」という概念がイギリスにも伝わった1958年のロンドンのホーソーです。
ビギナーズ
とても興味深いのはスウィンギング・ロンドンの始まりだからです。
物語はある夏の熱帯夜、ソーホーの街は、いつものように青春を謳歌する若者たちの熱気でむせかえっている。
カメラマンの卵コリン(エディ・オコーネル)、その恋人でデザイナー志望のスゼット(パッツィ・ケンジット)も、彼らの仲間だ。
ビギナーズ2
しかし、ひょんなことから喧嘩してしまい、スゼットはファッション界の大物デザイナー、ヘンリー(ジェームズ・フォックス)に惹かれてゆく。
いつも約束に遅れるコリンに愛想をつかして、すべてを満たしてくれそうなヘンリーの誘いにのり婚約してしまうスゼット。
がっかりしたコリンは、ふとしたことで広告業界のやり手、ベンディス(デイヴィッド・ボウイ)と知り合う。
ビギナーズ4
コリンの写真に注目したベンディスは、彼に仕事を与え、売れっ子カメラマンとなるコリン。
スゼットを振り向かせようとテレビ出演をするがテレビ界の汚ないやり方に嫌気がさし、ショーを目茶目茶にしてしまう。その日はスゼットとヘンリーの結婚式の日。
諦めきれない気持ちでテレビに映るコリンを見つめるスゼット。
一方、アパートに戻ったコリンはアパートのあるリトル・ナポリ(ノッティング・ヒル)の土地をめぐって陰謀を企むファシストに操られた一団がヘンリーとグルになっていることを知る。
そして黒幕はベンディスなのであった。
一団と黒人達が遂に衝突した夜、スゼットがヘンリーのもとを脱出、黒人クラブで偶然コリンと再会する。
若者たちによって一団が一掃され、降り出した雨の中、コリンとスゼットは愛を確かめ合うのだった。
ミュージカルの形態をとっていますが、沢山のMTVの集合体あるいは107分のプロモーションビデオとも見られます。
出演者と音楽が最高です。
やはりデイヴィッド・ボウイでしょう。
ビギナーズ5
オープニングとエンディングで流れる主題歌「Absolute Beginners」、ピアノの上で踊る「That’s Motivation」、それに対抗するのがキンクスのレイ・デイヴィス「Quiet Life」思った通りの役どころでした。
そしてエキゾチックでミステリアスなアシーニ・ダンキャノン(シャーデー)「Killer Blow」、スタイル・カウンシル「Have You Ever Had It Blue?」もとても良い曲です。
ビギナーズ6
ここで注目したいのが音楽のギル・エバンスです。
編曲者としてビッグバンドに革命をもたらし、マイルス・デイヴィスの知恵袋と言われています。
そのギル・エバンスが沢山の曲を提供しています。
もう一つの注目はその時代です。
テディボーイのロッカーと出始めたモッズです。
彼らはモダンジャズやR&Bを愛し、スクーターを乗り回します。
スカートもミニになっていきます。
ビギナーズ7
この年代の自動車もかっこいいですね。
特にメッサーシュミットには痺れます。
私が子供の頃は東京でも見られました。
何も考えず1958年のロンドンを楽しみましょう。

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映画の話 その80(ピアノレッスン)

104ドルパディ
ピアノとそれに関わる人は恐ろしい。
それだけで素晴らしい映画になるからです。
古くはトリュフォー1960年「ピアニストを撃て」、ジュゼッペ・トルナトーレ1998年「海の上のピアニスト」、ミヒャエル・ハネケ 2001年「ピアニスト」,ポランスキ−2002年「戦場のピアニスト」、ジャック・オーディアール2005年「真夜中のピアニスト」まで名画です。
そしてピアノに関わる人々の演技が神がかりに素晴らしくなるのです。
今回のジェーン・カンピオン監督の「ピアノレッスン(原題ピアノ)」ももちろんです。
ピアノ1
あらすじは主人公エイダ(ホリー・ハンター)は娘フローラ(アンナ・パキン)とピアノを伴い、スコットランドから未開の地ニュージーランドへ旅立った。
現地では彼女の結婚相手スチュアート(サム・ニール)が迎えたが、彼は重いピアノを自宅へ運ぶことを拒み、ピアノを浜辺に置き去りにした。
話すことができないエイダにとって、ピアノはかけがえのないものであり、エイダは娘を連れて何度も浜辺にピアノを弾きに訪れた。
ピアノ2jpg
その姿とピアノに惹きつけられたベインズ(ハーヴェイ・カイテル)はピアノをスチュアートから自分の土地と交換して手に入れる。
エイダに「黒鍵の数だけ自分にレッスンをしてくれたら、ピアノを返す」と約束する。
初めはベインズを嫌ったエイダだったが、レッスンを重ねるごとに気持ちが傾く。
ピアノ4−2
2人の秘密のレッスンを知ったスチュアートはエイダにベインズと会うことを禁じる。
彼女は鍵盤にメッセージを書き、フローラにベインズへ届けるように託すが、情事を覗き見していたフローラはスチュアートに鍵盤を渡して密告。
スチュアートは逆上し、エイダの人指し指を切り落とす。
そしてその指をフローラに渡し、ベインズに届けさせる。
だが、彼女の瞳にベインズへの思慕を読み取り、ベインズに2人で島を去るがいいと言う。
ピアノ5
船出してまもなくエイダはピアノを海に捨てるといい、一緒に自分もロープに巻きつけ自殺を図るが、助かる。
エイダ、ベインズ、フローラの3人は北の町で暮らし始める。
エイダは今も時々、海中に捨てられたピアノの夢を見る。
以上があらすじです。
まず映像がすばらしい。
砂浜におかれたピアノ、そこで一晩過ごす母と娘、ピアノを弾く母、砂浜を踊りながら飛び回る娘、ジャングルよりはるかに海岸が美しい。
エイダ役のホリー・ハンターはピアニストのイザベル・ユペールに勝るとも劣らない名演技です。
アンナ・パキンも11歳とは思えない素晴らしい演技です。
ピアノ3
大好きなハーヴェイ・カイテル、音楽のマイケル・ナイマンも最高です。
そして監督・脚本のジェーン・カンピオンです。
女性ならではの感性です。
文字が読めないベインズにピアノの鍵盤に書いたラブレターを渡すところはまさに監督の感性です。
それにしても邦題のピアノレッスンはいただけない。

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