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石の巡礼 その11(石尊神社不動明王三十六童子)

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今回は前回に引き続き不動明王の眷属三十六童子を見に行きます。
前回は神奈川県鎌倉市今泉にある称名寺を訪れましたが、今回は山梨県北杜市白州にある石尊神社を訪れます。
白州は南アルプスに囲まれ名水尾白川が流れ、サントリーの白州蒸留所がある風光明媚なところです。
サントリーの白州蒸留所のすぐ裏には霊山雨乞岳が聳えその麓に石尊神社があります。
1参道松並木
参道には赤松の巨木が松並木を形成して独特の雰囲気を漂わせています。
参道を抜けるととても急な長い石段があり、この上に拝殿本殿があります。
3参道
この超急な石段の左右に三十六童子が所々安置されているのです。
高所恐怖症の私はこの急な石段から急な斜面に立っている童子のところへ行って写真を撮ることは拷問です。
上りはまだ良いのですが下りが問題です。
怖くて後ろ向きにおり、童子を見つけて写真を撮らなければなりません。
幸い石段の中央に鉄パイプの手すりがついているのでこれにしがみつきます。
石段を登りきると正面に拝殿が建っています。
3拝殿
拝殿の前には不動明王三尊や童子が10体左右に分かれて安置されています。
15不動三尊
神社は神仏習合の形態をとっていたために参道や境内に不動明王三十六童子が残っているのです。
不動明王は一般的に矜羯羅(こんがら)、制多迦(せいたか)の二童子を従え不動三尊の形で表されます。
六童子を加えて八大童子を従える場合、さらに三六童子を従える場合もあります。
<阿婆羅底童子・伊醯羅童子>
4阿婆羅底童子
5伊醯羅童子
<因陀羅童子・烏婆計童子>
6因陀羅童子
7烏婆計童子
<虚空蔵童子・計子爾童子>
8虚空蔵童子
9計子爾童子
<計子爾童子・獅子光童子>
9計子爾童子
10獅子光童子
<智慧幢童子・波利迦童子>
11智慧幢童子
12波利迦童子
<法挟護童子・不明>
13法挟護童子
14不明
<虚空護童子・光網勝童子>
16虚空護童子
17光網勝童子
<仏守護童子・宝蔵護童子>
19仏守護童子
20宝蔵護童子
不動明王を本尊としている寺院では八大童子や三十六童子を安置しているところがありますが、三十六童子は容姿や持ち物が儀軌で決められているわけではなく、特に順番もありませんので、どの像がどの童子を表しているのか分かりません。
手掛かりは像に掘られている名前ですが野外に安置されているため風化や破損でこれも分からない像があります。
なんとか恐怖心に打ち勝ち写真を撮りました。
参道脇に立派な土俵があります。
23土俵
土俵は江戸時代末期から続く奉納相撲のためでした。
今も毎年行われています。
神社のそばを清流が流れています。
サントリーがここに蒸留所を作った訳が分かりました。
空気も水も美味しく、さらに霊山雨乞岳の霊気も含んでいます。
とりあえず三十六童子の名前を列挙しておきます。
矜迦羅童子、制叱迦童子、不動恵童子、光網勝童子、無垢光童子、計子爾童子、智慧憧童子、質多羅童子、召請光童子、不思議童子、羅多羅童子、波羅波羅童子、伊醯羅童子、獅子光童子、獅子慧童子、阿婆羅底童子、持堅婆童子、利車毘童子、法挟護童子、因陀羅童子、大光明童子、小光明童子、仏守護童子、法守護童子、僧守護童子、金剛護童子、虚空護童子、虚空蔵童子、宝蔵護童子、吉祥妙童子、戒光慧童子、妙空蔵童子、普香王童子、善爾師童子、波利迦童子、烏婆計童子の三十六童子です。

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石の巡礼 その10(称名寺不動三十六童子)

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今回は北鎌倉の山の中腹にある称名寺の三十六童子を見学します。
今泉不動とも呼ばれ自然豊かで境内には川が流れ、滝もあります。
初め不動堂の別当で円宗寺と称され鎌倉時代には密教寺院とし、頼朝も深く信仰していましたが、その後すっかり荒廃してしまいました。
しかし、貞享元年(1684)に直誉蓮入が再興し 江戸時代に芝増上寺の貞誉大僧正から山号寺号を与えられ、浄土宗寺院としての基礎が確立され「称名寺」とされました。
境内へと進むと、左側に庫裏、その奥に真新しい本堂、弁天堂が並んで建っています。
弁天堂の前から川に向かって下ると、鎌倉では珍しい滝が現れます。
1陰陽の滝
陰陽の滝というなかなか立派な滝です。
不動堂はさらに奥の石段を登った高い場所にあります。
石段の前には矜羯羅童子と制咜迦童子を乗せた石柱が立っています。
2石段
石段を登ると不動堂で目的の三十六童子は裏手の石段の左右に安置されています。
4三十六童子
7三十六童子2
8三十六童子3
さらにその石段を登ると大日如来が矜羯羅童子と制咜迦童子を従えて座しています。
5大日如来
不動明王は大日如来の化身です。
不動明王は煩悩から抜け出せない人々をすべて救済してくれるありがたい明王です。
人間界と仏界を隔てる天界の火生三昧(かしょうざんまい・人間界の煩悩や欲望が天界に波及しないよう烈火で焼き尽くす世界)と呼ばれる炎の世界に住んでおり、怒りによって逆巻く髪は活動に支障のないよう弁髪でまとめ上げ、法具は極力付けず軽装で、法衣は片袖を破って結んでいます。
右手に剣、左手に羂索を握りしめ、背に迦楼羅焔(かるらえん・ガルーダの形をした炎)を背負い、物を必要以上に求める心である貪、怒りの心である瞋、真理に対する無知を意味する癡(おこ)を許さんとする慈悲極まりた憤怒の相で、岩を組み合わせた瑟瑟座(しつしつざ)か、粗岩の上に座して「一切の人々を救うまではここを動かじ」と決意する姿が一般的です。
6不動明王
また立像も数多く存在しています。
不動明王
三十六童子は不動明王の手となり足となって全ての人々を救済するのです。
とても頼もしい童子達です。
一部の童子を載せておきます。
阿婆羅底童子 戒光慧童子
9阿婆羅底童子 10戒光慧童子
光網勝童子 善儞師童子
11光網勝童子 12善儞師童子
大光明童子 普香王童子
14大光明童子 15普香王童子
法挟護童子 法守護童子
16法挟護童子 17法守護童子
仏守護童子 僧守護童子
18仏守護童子 19僧守護童子
称名寺は場所的に鎌倉の寺巡りコースから離れているので、あまり観光客も来ません。
自然に恵まれた境内でゆっくり三十六童子を観察するのも楽しいと思います。
夏は蚊が多いので注意。

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石の巡礼 その9(姫路不動院十二天)

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兵庫県姫路市にある不動院境内の墓地にはとても珍しい石仏群があります。
西国三十三観音霊場を曼荼羅のように見立て、外側に十二天を六天づつ、二つ配したもので、石柱に「願主一心寛政七年(1795)乙卯」とあります。
1不動院1
十二天の刻像は他には知りません。
八方天に梵天、地天、日天、月天を加えたもので、梵天は天に、地天を地に、日天と月天を日と月に、八方天は八方角に割り当てます。
八方天はインドでも同じで方位神(DIKPALAS)と呼びます。
北は毘沙門天―財宝神クベーラ、北西は風天―風神ヴァーユ、西は水天―水神ヴァルナ、西南は羅刹天―ニルリティ、南は焔摩天―冥界神ヤマ、南東は火天―火神アグニ、東は帝釈天―雷神インドラ、東北は伊舎那天―イーシャナです。
不動院では六天づつ、二つに分かれて彫られています。
向かって右側の石造物には帝釈天、火天と焔摩天、梵天、日天と伊舎那天が彫られています。
左側には風天、羅刹天と水天、地天、毘沙門天と月天が彫られています。
帝釈天はインドではインドラ神として手には金剛杵(稲妻のシンボル)を持っています。
この像も右手に持っています。
2帝釈天 東インドラ
    2帝釈天3-20b4b
火天はアグニ神で象徴の火がバックに彫られていますが、この像も後ろに火が彫刻されています。
3火天 東南アグニ
    3火天3-20b5b
焔摩天は冥界神ヤマで閻魔大王です。
手には人頭杖を持ちます。
4焔摩天 南ヤマ
    4焔摩天3-20b6b
梵天はブラフマーで四面四臂なのですぐにわかります。
5梵天(ブラフマー)
    5梵天3-20b1b
日天はインドではスーリヤ神で右手に日輪を左手には蓮華を持っています。
6日天 スーリヤ
    6日天3-20b2b

伊舎那天はインドではシヴァ神で象徴の三叉戟を持っています。
この像も右手に三叉戟、左手に杯を持っています。
7伊舎那天 東北イーシャナ
   7伊舎天3-20b3b



反対側の石造物には風天が彫られています。
風天はインドではヴァーユ神で旗を持っています。
8風天 西北ヴァーユ
   8風天
羅刹天はインドではニルリッティで死を神格化した神で剣を持つ。
9羅刹天 西南ニリチ
    9羅刹天3-20a6b



水天はヴァルナで縄と剣を持ちます。
10水天 西ヴァルナ
    10水天3-20a5b



地天はインドではプリティヴィーという女神でこの像では花を盛った器を持っています。
11地天(ヒリチビ)
    11地天3-20a1b
毘沙門天は多聞天です。
インドではシヴァでこの像も宝棒(三叉戟)と左手には宝塔を載せています。
12毘沙門天 北ヴァイシュナーヴァ
    12毘沙門3-20a3b
月天はインドではチャンドラでこの像は右手で月輪を捧げています。
13月天 チャンドラ
    13月天3-20a2b
日本の八方天はインドの方位神と酷似しており、中国経由で日本に入ってきたことがわかります。
不動院の石仏はとても魅力的です。
中心に西国三十三観音霊場の本尊を石塔に刻み、その周りに四天王を祀り、石塔の前に亀の石像を祀ります。
左右の灯籠には八咫烏と餅つきをする兎を彫り、左右に十二天を祀ります。
いつまでも見ていたい不思議な空間でした。

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石の巡礼 その8(稲荷原の本門戒壇院八大龍王)

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今回は茨城県稲荷原にある本門戒壇院の八大龍王像を訪れます。
稲荷原の本門戒壇院(八大龍王)
本門戒壇院は柴又にありましたが、こちらに移祀されました。
昭和の初めに建像されたもので古いものではありませんが、技術や意匠が素晴らしく、またとても珍しい像なので必見です。
八大龍王は法華経に登場する蛇(ナーガ)王で、霊鷲山で釈迦の教えに耳を傾け、その結果、覚りを超える境地に至り、護法の神となりました。
本門戒壇院にはこの八大龍王が釈迦如来を囲む形で安置されています。
まず境内に入ると正面左右に邪悪なものの侵入を阻止する門神としての金輪大王と銀輪大王が安置されています。
金輪大王は化仏を乗せ、邪気を踏み潰しています。
金輪大王
銀輪大王には化仏はありませんが、足元で龍がとぐろを巻いています。
銀輪大王
ともに忿怒の形相です。
その先には釈迦を祀ってある基壇がありその周りに龍王が安置されています。
正面右から左周りにまず
難陀(ナンダ)龍王
歓喜を意味し、難陀と跋難陀は兄弟竜王で娑伽羅(サーガラ:大海)竜王と戦った。
1難陀
跋難陀(ウパナンダ)
亜歓喜を意味し、難陀の弟で難陀竜王と共にマガダ国を保護して飢饉なくし、釈迦如来の降生の時に雨を降らせ、説法の会座には必ず参加し、釈迦入滅の後は永く仏法を守護した。
2跋難陀
娑伽羅(サーガラ)
大海を意味し、龍宮の王で大海龍王ともよばれ法華経・提婆達多品に登場する八歳の龍女はこの龍王の第三王女で「善女(如)龍王」と呼ばれた。
3娑伽羅
和修吉(ヴァースキ)
宝を意味し、数が極めて大きく強力であるという意で「九」を冠し九頭とされることもあり、「九頭龍王(くずりゅうおう)」、「九頭龍大神」等 呼ばれることが日本では多く、九頭一身と言われ考えられるようになる。
4和修吉
徳叉迦(タクシャカ)
多舌や視毒を意味し、徳叉迦が怒って凝視された時、その人は息絶えるといわれ、身延鏡と金光明経から七面天女は、タクシャカ龍王の娘とされている。
5徳叉迦 
阿那婆達多(アナヴァタプタ)
清涼や無熱悩を意味し、阿耨達(あのくだつ)龍王とも呼ばれ、ヒマラヤの北にあるという神話上の池、阿耨達池(無熱悩池)に住み、四方に大河を出して人間の住む大陸 閻浮提(えんぶだい、贍部洲 せんぶしゅう)を潤すとされている。
6阿那婆達多
摩那斯(マナスヴィン)
大身、大力を意味し、阿修羅が海水をもって喜見城を侵したとき、身を踊らせて海水を押し戻したといわれている。
7摩那斯
優鉢羅(ウッパラカ)
青蓮華や黛色蓮華池を意味し、青蓮華龍王とも呼ばれ青蓮華を生ずる池に住んでいて、インドでは花弁や葉などの形状を比喩的に眼を現すことに使われるが、特に青睡蓮は美しい眼の喩えとなっている。仏教では仏陀の眼は紺青色とされ、三十二相八十種好の一つ「眼色如紺青相」となっている。
8優鉢羅
基壇上には正面に釈迦如来坐像が安置され、
釈迦
右に日蓮上人立像、
日蓮
左によくわからない比丘尼の立像が安置されています。
比丘尼
そのほか境内には法華経の守護神である魚籃観音立像、観音立像、地蔵菩薩坐像などが安置されています。
魚籃観音
龍王はインドではナーガ族で有名なのは、寺院の彫刻その44のガルーダの母親と賭けをしたカドゥルー、寺院の彫刻その25のクリシュナに退治されるカーリヤ、寺院の彫刻その13のアナンタ龍、寺院の彫刻その17の乳海攪拌のヴァースキー龍などがあります。
また旅の話その5でお話しした古い木の根元にナーガの像を祀り、豊穣や多産を祈願する「ナーガッカル」という習慣もあります。
蛇族はインドではとてもポピュラーです。
Kunisada_II_The_Dragon.jpg
これらのナーガが中国を経由して竜王になったと思われます。
稲荷原の本門戒壇院はとても不思議な空間でした。

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石の巡礼 その7(威光寺 弁天十五童子) 

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今回は東京都稲城市にある威光寺です。
明治4年神仏分離に伴い、当寺境内に新たに弁天洞窟を設けて石仏を穴澤天神社より移設しました。
弁天洞窟の入口から10mほどの道は1,500年以上前に掘られたもので、その後さらに掘り進められ、全長65mの洞窟として完成しました。
この洞窟の中に珍しい弁天十五童子の石像を始め大黒天、毘沙門天など23体が安置されています。
洞窟の中は真っ暗で一寸先も見えません。
そのため入り口でロウソクを貸してくれます。
わかっていれば懐中電灯を持ってくるのですが、ロウソクの方が雰囲気があります。
まずは受付で拝観料300円を払うとロウソクの柄とロウソクを貸してくれます。
それでは出発です。
境内のお庭お抜け、小さな太鼓橋を渡るとレンガのトンネルが見えてきます。
弁天洞窟入口
中は真っ暗です。
ここでロウソクに火をつけます。
わずかなろうそくの光だけが頼りでとても不安です。
道はまっすぐではないので先がわかりません。
威光寺弁天洞窟_-_panoramio_(9)
すると童子が一体ずつ現れてきます。
まずは牛馬童子です。
向かって右下に彫られている牛と馬から繋がっている手綱を持っています。
14 牛馬童子
   1牛馬童子
次は酒泉童子です。
杯を右手に持ち、左手に柄杓を持って酒壺の前に立っています。
10 酒泉童子
   2酒泉童子
次は両手で衣装を捧げる衣装童子です。
8 衣裳童子
   3衣裳童子
次は蚕器を両手にもつ蚕養童子です。
9 蚕養童子
   4蚕養童子
次は右手に筆、左手に硯を持つ筆硯童子です。
3 筆硯童子
   5筆硯童子
次は升を前に向けて両手で持つ計升童子です。
6 計升童子
   6計升童子
次は右手を上にし、左手を下げて両手で帯を持つ官帯童子です。
2 官帯童子
   7官帯童子
剣を右手に持ち、左手に宝珠を持つ生命童子です。
12 生命童子
   8生命童子
次は右手に印錀、左手に宝珠を持つ印錀童子です。
1 印錀童子
   9印錀童子
右手を前に向けて宝珠を持ち、左手に稲束を持つ稲籾童子です。
5 稲籾童子
   10稲籾童子
次は右手を施無畏印、左手に宝珠を持つ船車童子です。
15 船車童子
   11船車童子
次は右手に秤、左手に分銅を持つ金財童子です。
4 金財童子
   12金財童子
次は頭上の飯櫃を右手で支え、左手を拳にする飯櫃童子です。
7 飯櫃童子
   13飯櫃童子
次は右手に矢を持ち、左手に弓を持つ愛敬童子です。
11 愛敬童子
   14愛敬童子
最後は三宝珠盛る盆を両手で捧げる従者童子です。
13 従者童子
   15従者童子「
弁天十五童子は以上ですが、洞窟はまだ続きます。
内部には池もあり、巨大な白蛇、宇賀神、弘法大師、文殊菩薩、竜神などが安置されていますが、弁天十五童子と比べると出来は良くありません。
外に出るとあまりの明るさに目が慣れません。
東京でできるとてもミステリアスな体験でした。
ここは新東京百景にも選ばれています。
残念ながら安全上の問題で現在閉鎖されているようです。

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