寺院の彫刻 その28(ラーマ 1)

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今回はヴィシュヌの第七の化身ラーマです。ラーマはインドの大叙事詩「ラーマーヤナ」の主人公でラーマ王子が、誘拐された妻シーターを奪還すべく大軍を率いて、ラークシャサの王ラーヴァナに挑む姿を描いています。
ラーマーヤナの意味は「ラーマ王行状記」で詩人ヴァールミーキが、ヒンドゥー教の神話と古代英雄コーサラ国のラーマ王子の伝説を編纂したものとされています。
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ヴァールミーキは山賊でしたが改心し聖者に生まれ変わります。
ある時彼の前にブラフマー神が現れ、ラーマ王子の生きざまをシュローカ調の詩にするように命じました。
3BANTEAY CHMAR
  BANTEAY CHMAR 12〜13世紀
  正面に4面のブラフマー左に
  顔を破損したヴァールミーキ
  右に2羽のサギと猟師 







そうして出来たのが「ラーマーヤナ」です。
ラーマーヤナは、絵画、彫刻、建築、音楽、舞踏、演劇、映画など多くの分野で、インドのみならず、当時同じサンスクリット圏であり古くからインド文化を取り入れてきた東南アジア一円に深く浸透しました。
カンボジアでは「リアムケー」と呼ばれ、この物語を影絵スバエクで演じます。
4スバエク
タイでは「ラーマキエン」とばれ国民に広く親しまれています。
5ラーマキエン
インドネシアでは影絵芝居ワヤンとして人気があります。
ワヤン2
ミャンマーでも操り人形劇の中に取り込まれています。
6ミャンマー

内容は
第1巻 バーラ・カーンダ(少年の巻)
ダシャラタ王は王子誕生祈願をおこない3人の妃に子供を授かる。カウサリヤーからはヴィシュヌの化身、ラーマ王子がその他の王子にもヴィシュヌの属性がやどる。ラーマは弟のラクシュマナとヴィシュワーミトラ仙と共に森で悪魔退治等をおこないジャナカ王の娘シーターと出会い結婚する。また他の王子もジャナカ王の親戚の娘と結婚する。

第2巻 アヨーディヤ・カーンダ(アヨーディヤの巻)
ダシャラタ王の妃カイケーイーにはマンタラーという侍女がいた。ラーマの即位を知ったマンタラーは妃にラーマ王子への猜疑心を起こさせ、ダシャラタ王
にラーマをダンダカの森に追放し、バラタ王子の即位を願うように説得した。ラーマはこの願いを快く受け入れ、シーター、ラクシュマナを伴って王宮を出た。しかしダシャラタ王は悲しみのあまり絶命してしまった。

第3巻 アラニヤ・カーンダ(森林の巻)
ダンダカの森で生活していたラーマ達はラーヴァナの妹の恨みを買い,ラーヴァナは妹のためにシーターをさらうが一目惚れしてしまう。

第4巻 キシュキンダー・カーンダ(キシュキンダーの巻)
ラーマはシーターを探して猿王スグリーヴァと親交を結んだ。ラーマは王国を追われたスグリーヴァのために猿王ヴァーリンを倒した。スグリーヴァはラーマの恩に報いるため、各地の猿を召集し、全世界にシーターの捜索隊を派遣した。南に向かったアンガダ、ハヌマーンの1隊はシーターの居場所が南海中のランカーであることを教わる。

第5巻 スンダラ・カーンダ(美の巻)
風神ヴァーユの子であるハヌマーンは、海岸から跳躍してランカーに渡り、シーターを発見する。ハヌマーンは自分がラーマの使者である証を見せ、やがてラーマが猿の軍勢を率いて救出にやってくるであろうと告げた。ハヌマーンはラークシャサらに発見され、インドラジットに捕らえられたが、自ら束縛を解き、ランカーの都市を炎上させて帰還した。

第6巻 ユッダ・カーンダ(戦争の巻)
ランカーではラーヴァナの弟ヴィビーシャナがシーターを返還するよう主張したが聞き入られなかったため、ラーマ軍に投降した。ここにラーマとラーヴァナとの間に大戦争が起きた。猿軍はインドラジットによって大きな被害を受けながらも次第にラークシャサ軍を圧倒していき、インドラジットが倒された後、ラーヴァナもラーマによって討たれた。ラーマはヴィビーシャナをランカーの王とし、シーターとともにアヨーディヤに帰還した。

第7巻 ウッタラ・カーンダ(後の巻)
ラーマの即位後、人々の間ではラーヴァナに捕らわれていたシーターの貞潔についての疑いが噂された。それを知ったラーマは苦しんで、シーターを王宮より追放した。シーターは聖者ヴァールミーキのもとで暮すこととなり、そこでラーマの2子クシャとラヴァを生んだ。後にラーマは、シーターに対して、シーター自身の貞潔の証明を申し入れた。シーターは大地に向かって訴え、貞潔ならば大地が自分を受け入れるよう願った。すると大地が割れて女神グラニーが現れ、 シーターの貞潔を認め、シーターは大地の中に消えていった。ラーマは嘆き悲しんだが、その後、妃を迎えることなく世を去った。
となっています。

寺院彫刻では各エピソードが多くの寺院で見られますが、全体が彫刻されている寺院はあまり見かけません。
比較的彫刻の多い寺院は南インドPATTADAKALのPAPANATHA寺院、
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  PAPANATHA TEMPLE 8世紀
  身舍の壁龕に彫刻されている
  ランカの戦いの前までよく彫刻され
  ている






KUMBAKONAMのNAGESHWAR寺院、
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  NAGESHWAR TEMPLE 9世紀
  壁龕にはラーマーヤナの主人公達を描い
  たと言われる諸像がある
  壁龕下部には小さなラーマーヤナの
  ストーリーパネルがある
  





VIJAYANAGARAのRAMACHANDRA寺院、
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  RAMACHANDRA TEMPLE 15世紀
  ラーマに献じられた寺院
  周壁,門、寺院の壁にラーマーヤナが
  彫られている






ELLORAのKAILASANATHA寺院など、
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  KAILASANATHA TENPLE 8世紀
  巨大な岩山を削って作った寺院
  境内に巨大なラーマーヤナの
  パネルがある





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  KAILASANATHA TEMPLE
  境内のラーマーヤナのパネル
  









東南アジアではカンボジアのANGKOR WAT寺院、
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  ANGKOR WAT 12世紀
  回廊の壁面に彫刻されている
  破風に彫刻されている
  







BAPUON寺院、
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  BAPUON 11世紀
  ラーマとクリシュナのパネルで
  埋め尽くされている








インドネシア中部ジャワのLOROJONGGRANG寺院群、
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  CANDI LOROJONGGRANG 9世紀 
  チャンディ シヴァの回廊にはラーマの誕
  生からランカへ攻め入る所までの彫刻
  チャンディ ブラフマーの回廊にはランカ
  の戦いからラーマの退位までの彫刻が
  彫られている
  




東ジャワのPANATARAN寺院などです。
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  CANDI PANATARAN 14世紀
  本殿の基壇に彫刻されている
  ランカへ飛ぶハヌマンからランカの戦い
  までが彫られている







それでは次回からストーリーと寺院彫刻を見て行きたいと思います。

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