寺院の彫刻 その24(クリシュナ)

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今回はヴィシュヌの第8の化身クリシュナのお話です。
クリシュナはインドで一番人気のある神様です。
女性にも男性にも人気のスーパースターです。
クリシュナは「黒」を示し浅黒い肌の男性として描かれます。
おそらく非アーリアン系のヤーダヴァ族の指導者がその後神格化されたと見なされています。
クリシュナにまつわる物語は数多く語られています。
その中でも中心をなす「カンサを殺すクリシュナ」の題材から見て行きます。
1プータナー
「ヤーダヴァ族の王カンサは多くの悪行を働いていた。神々は対策を協議し、ヴィシュヌがカンサの妹デーヴァキーの胎内に宿り、クリシュナとして誕生するよう定めた。ある時カンサはデーヴァキーとその夫のヴァスデーヴァを乗せた馬車の御者を務めていた。都への途上、どこからか「デーヴァキーの8番目の子がカンサを殺す」という声が聞こえた。恐れをなしたカンサはヴァスデーヴァとデーヴァキーを牢に閉じ込め、そこで生まれてくる息子たちを次々と殺した。デーヴァキーは7番目の子バララーマと8番目のクリシュナが生まれると直ちに、ヤムナー河のほとりに住む牛飼いのナンダの娘(同日に生まれた)とすり替え、2人をゴークラの町に逃がして牛飼いナンダに預けた。一方カンサはクリシュナが生きていることを知り、すぐさま配下のアスラたちを刺客として送り込むが、ことごとく返り討ちにされた。そこでカンサはクリシュナとバララーマをマトゥラーの都へ呼び寄せて殺害を謀るもクリシュナに殺された」というものです。
ケーシン
この中でよく見られる題材は、カンサ王が子供を殺す、ナンダの元で暮らすクリシュナとバララーマ、カンサ王の刺客で美女に扮した魔女のプータナー、つむじ風となった刺客トリナーヴァルタ、牡牛の姿をしたアリシュタ、馬の姿をしたケーシン、象の姿のアスラ、アスラの巨人チャヌーラとシュティカと戦うクリシュナとバララーマ、カンサの髪をつかんで踏み殺すクリシュナなどです。
絵画では色々見つかるのですが、彫刻に関してはカンサの髪をつかんで踏み殺すクリシュナの彫刻がほとんどです。
先ずカンサが生まれてくる子供を次々に殺す場面です。
カンボジアのアンコール遺跡にあるバプーオン寺院にあります。
この場面はおそらく6番目の子供を殺そうとしていると思われます。
2生まれた子を殺すカンサ
  BAPUON TEMPLE 1060年
  このパネルの左側に子供が5人彫られて
  いるので6番目の子供を殺そうとしてい
  ると思われます。







クリシュナの出産シーンです。南インドのHANGALにあるTARAKESHVARA寺院にあります。
3クリシュナの誕生
  TARAKESHVARA TEMPLE 12世紀
  クリシュナの出産がとてもリアルに
  表現されています。
  












次の場面はデーヴァキーとその夫のヴァスデーヴァが悩んでクリシュナを逃がす所です。
カンボジアのバプーオン寺院にあります。
4クリシュナを逃がす
  BAPUON TEMPLE 1060年
  パネルの左は悩んでいるデーヴァキー
  とヴァスデーヴァ
  右はクリシュナを逃がすヴァスデーヴァ







魔女のプータナーがクリシュナを殺そうとする場面です。
美女に変身して猛毒の母乳で殺害しようとしたプータナーです。
南インドのTARAKESHVARA寺院とALAMPURのSVARGA BRAHMA寺院にあります。
6Hangalクリシュナを殺すプータナ②
  TARAKESHVARA TEMPLE 12世紀
  猛毒を塗った乳首をあたえるプータナー














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  SVARGA BRAHMA TEMPLE 7〜8世紀
  基壇のパネルで、一番右が猛毒を塗った
  乳首をあたえるプータナー







次の場面は馬の姿をしたケーシンと戦うクリシュナです。
このシーンはポピュラーです。
バプーオン寺院、グプタ時代の彫刻が博物館にあります。
8ケーシンと戦う3
  BAPUON TEMPLE 1060年
  ケーシンと戦うクリシュナのパネル








8.5クリシュナ6世紀
  LACMA博物館 6世紀
  躍動感にあふれるとても素晴らしい彫刻です。














牡牛の姿をしたアリシュタと戦うクリシュナです。
バプーオン寺院にあります。
9アリシュタと戦う
  BAPUON TEMPLE 1060年
  牡牛の姿をしたアリシュタの角をつかんで
  戦うクリシュナ








ゾウのアスラと戦うクリシュナもバプーオン寺院で見つかりました。
10ゾウのアスラと戦う
  BAPUON TEMPLE 1060年
  ゾウの牙を持って殴りつけるクリシュナ








カンサの髪をつかんで踏み殺すクリシュナは色々見つかりました。
インドのホイサラー様式のLAKSHIMINARAYANA寺院にもあります。
NARAYA005.jpg
  LAKSHIMINARAYANATEMPLE 1250年
  カンサの髪をつかんでいるクリシュナ
  







傑作はカンボジアのバンティアイ・スレイ寺院です。
12カンサを殺す4
  BANTEAY SREI TEMPLE 10世紀後半
  とてもリアルな彫刻で素晴らしい。
  周りの人物はマトゥラーの町の人々
  でしょう。左右の戦車に乗る人物は
  クリシュナとバララーマだと思います。






バプーオン寺院でも見つかりました。
15カンサを殺す
  BAPUON TEMPLE 1060年
  髪を引っ張っています。








バプーオン寺院はヴィシュヌ神話、特にクリシュナ神話とラーマーヤナが第三回廊までびっしり壁面に彫刻されています。
カンボジアのトマノン寺院、タイのピマイ寺院でも見つかります。
13カンサを殺す5
  THOMMANON TEMPLE 12世紀
  トマノン寺院のピラスターに
  彫刻されています。















11カンサを殺す3
  PRASAT PHIMAI TEMPLE
  ピマイ寺院の楣に彫刻されています。
  髪を引っ張り、足で押さえつけています。








東南アジアでもクリシュナの神話が好まれ、正確に伝わったことがわかりました。


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