寺院の彫刻 その16(マツヤ)

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ヴィシュヌ信仰は偉大な仕事をした人物や土着の神を「ヴィシュヌの生まれ変わり」として信仰に取り込み広がっていきました。
その手段の一つとして10の化身(アヴァターラ)があります。
1魚(マツヤMATSYA)、2亀(クールマKURMA)、3猪(ヴァラーハVARAHA)、4人獅子(ナラシンハNARASIMHA)、5矮人(ヴァーマナ)、6斧をもつラーマ(パラシュラーマPARASURAMA)、7ラーマ(ラーマRAMA)、8クリシュナ(KRISNA)、9ゴータマ・ブッダ(BUDHA)、10カルキ(KALKI)以上が10化身で、善を護るため、悪を滅ぼすため、正義を確立するために色々な姿で現れます。
今回は魚マツヤについて見てみます。マツヤの神話は「賢者マヌが川で祭祀を行っていると、小さな金色の魚が手の中に入ってきた。魚は自分を家に持ち帰るように言った。家で育てていると、どんどん大きくなり家では飼いきれなくなって海に放すことにした。すると魚は7日後に大洪水が起きる。大きな船を与えるから、7人の聖仙とあらゆる生き物とともに乗りなさいと言った。やがて大洪水が起こり、魚は船にヴァースキ竜を巻きつけてヒマラヤの山頂まで引張った。こうしてマヌは生き残り人類の始祖となり、地上に生命を再生させた。」という話です。
東京国立博物館
ヴィシュヌが魚の化身として単独で彫刻されている例はあまり多くはありません。
10化身として一緒に彫刻されている場合の方が多いと思います。
南インドのMYSORE近郊の小さな村SOMANATHAPURAにあるKESHAVA寺院です。
1268年に建立された典型的なホイサラ形式の寺院で壁面すべてに精密な彫刻が施されています。
ヴィシュヌ神に捧げられた寺院で顔は魚で身体は人(ヴィシュヌ)の珍しいマツヤが彫刻されています。
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  KESHAVA TEMPLE  1268年
  頭が魚で身体はヴィシュヌのマツヤはとても
  珍しい。
  良く見るととても不気味。












KESHAVA寺院のマツヤを見ていて思い出しました。同じ魚の顔をしたレコードジャケットを持っていたのです。
それはアメリカのロックバンドで1960年代後半に出てきたキャプテンビーフハートCaptain Beefheart and his Magic Bandです。彼らの3枚目のアルバム「Trout Mask Replica」のジャケットがまさにそれです。もちろんヴィシュヌに関係ありませんが。
トラウト
  Captain Beefheart and his Magic Band
  「Trout Mask Replica」
  とても前衛的なアルバム







南インドのBADAMIの第二石窟の天井です。
ヴィシュヌ神に捧げられた窟でヴィシュヌの武器のチャクラ(円盤)がマツヤになっています。
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  BADAMI CAVE TEMPLE 2 6世紀
  このような意匠は南インドのヴィシュヌ派
  寺院の天井で時々見かける。







中央インドのGYARASPURの近くにCHAUKHAMBHAの遺構があり立派な楼門の柱が残っています。
10世紀の建立で柱にヴィシュヌの10化身が彫られています。
マツヤはクールマと一緒に魚の姿で彫られています。
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  CHAUKHAMBHA 9世紀
  クールマの上にマツヤ
  
  












中央インドのCHANDERIから40kmのKADWAHAの寺院のドアーフレイムに彫刻されています。
10〜12世紀に建立されヴィシュヌの10化身が彫られています。
乳海撹拌のクールマの隣に魚の姿で彫られています。
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  KADWAHA TEMPLE 10~12世紀
  ドアーフレイムの上部に10化身
  乳海撹拌のクールマのとなりに
  彫られている。







南インドのVIJAYANAGARA(HAMPI)にあるRAMACHANDRA寺院はラーマーヤナのレリーフで有名ですが、マンダパの柱と外壁の柱に見つけました。
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  RAMACHANDRA TEMPLE 15世紀
  魚の上にヴィシュヌの持ち物
  面白い意匠
  











RAMACHANDRA3
  こちらは魚の上にヴィシュヌ
















東インドのVISHUNUPURの町にはビシュヌを祀ったテラコッタ(レンガ)の寺院が沢山あります。
ほとんどの寺院には10化身の彫刻があります。
SHYAMA RAYA寺院のマツヤです。
上半身は人ですが下半身は魚です。
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  SHYAMA RAYA TEMPLE 1643年
  テラコッタに直接彫られている。
  上半身ヴィシュヌ、下半身魚








博物館でもありました。中央インドのSAGAR博物館です。
断片ですがマツヤがよくわかります。
下に猪ヴァラーハがいますので10化身を彫刻したヴィシュヌ像の一部と思われます。
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  SAGAR UNIVERSITY MUSEUME
  10世紀ぐらいか














彫刻ではありませんが壁画が残っています。南インドのMALAYADIPATTIと言う小さな村に石窟寺院があります。
そこにヴィシュヌの10化身が描かれています。
石窟は8世紀頃の開窟ですが、壁画は16世紀頃の物です。
Maliyadipatti
  MALAYADIPATTI CAVE 8世紀(16世紀)
  オーソドックスな上半身ヴィシュヌ、下半身
  魚の絵画。













以前に「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」でお話ししたネパールのカトマンドゥにあるKRISHANA NRARAYAN寺院の壁画です。右足にマツヤが描かれています。
KRISHANA NRARAYAN2
  KRISHANA NRARAYAN寺院
  ヴィシュヌの右足に魚
  まるで大きな魚に足を
  食べられているよう。














マツヤの化身は有名ですが、彫刻の題材として迫力に欠けます。
それが少ない原因ではないかと思われます。
東南アジアの国々では、見つけることが出来ませんでした。

マツヤ


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