寺院の彫刻 その13(アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ)

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今回からは寺院の身舎(外壁)に彫られた彫刻を見たいと思います。
ここには神々、アスラ、人間、動物、神話や叙事詩、あらゆるものが彫刻されています。
まずはヴィシュヌ神にかかわる彫刻を見て行きます。
ヴィシュヌ神は三大神の一人で世界を維持する役目を持っています。
4本の腕をもち各々にチャクラ(円盤)、棍棒、法螺貝、蓮華を持っています。
メール山の中心にあるヴァイクンタに住んでいて、神妃はラクシュミー、ヴァーハナ(乗り物)はガルーダです。
ヴィシュヌ派の創世神話によると、宇宙が出来る前にヴィシュヌは竜王アナンタの上に横になっており、ヴィシュヌのへそから、蓮の花が伸びてそこから創造神ブラフマーが生まれ、ブラフマーの額から破壊神シヴァが生まれたとされています。
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ヴィシュヌ神はリグ・ヴェーダの時代には重要な地位は無かったのですがその後ヒンドゥー教の時代になって、英雄や土着の神をその化身(アヴァターラ)として取り込んで行くことで民衆の支持を集め、ついにはブラフマー、シヴァと共に三神一体(トリムールティ)の最高神の位置を獲得しました。
今回は創世神話の「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」の彫刻を見てみたいと思います。
中央インド、ディオガルDEOGARH DASHAVATARA寺院の壁龕のパネルです。
中央に7つの頭のアナンタ龍(ANANTA OR SHESHA)の上に横たわる4腕のヴィシュヌ神が彫刻され、足下にはラクシュミー妃がヴィシュヌ神の足を揉んでいます。
彼女の後ろにはヴィシュヌの武器を擬人化した2人の人物がいます。女性は棍棒を擬人化したKAUMODAKI、男性は円盤を擬人化したSUDARSHANです。
ヴィシュヌ神のヘソからは蓮の茎が伸び開花した花の上には3面のブラフマーが座っています。
左隣には象に乗るインドラ、その左側には孔雀に乗るスカンダ、ブラフマーの右隣にはナンディに乗るシヴァとウマー、その右側にはガルーダが彫刻されています。
一番下には6人の人物が彫刻されていますが誰なのかよく解っていません。
悪魔のMADHUとKAITABHAと戦うヴィシュヌの4つの持ち物の擬人化達あるいはマハーバーラタのパンダヴァ5兄弟と共通の妻のドラウパティなどの説があります。
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   DASHAVATARA寺院 6世紀
  帽子を始め衣装やアクセサリーの細かい彫刻
  下部の6人は彫刻だけ見れば
  パンダヴァの様に見える













同じく中央インドのティガワの「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」です。
9つの頭のアナンタ龍の上に横たわり、4腕でチャクラと法螺貝を持っています。
ヴィシュヌのヘソから蓮の茎が伸びブラフマーが座っています。
足下には二人の従者(擬人化された棍棒と蓮)とラクシュミーが足を揉んでいます。
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  KANKALI DEVI TEMPLE 5世紀
  とても古い彫刻
  意匠がとても良い
  






ティガワの「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」にとてもよく似た彫刻がマトゥラーの博物館にあります。
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  マトゥラー博物館 5世紀
  3人の従者とラクシュミー
  とてもティガワと似ている。
  ブラフマーは破損している。
  





同じく中インドKATNIのSINDURSIにある大きな岩に彫られた「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」です。グプタ期の6世紀に彫られ、おおらかで良い出来です。ラクシュミーの定位置はくるぶしから太腿にかけてですが、ここでは足の裏の位置に彫刻されています。横には二人の悪魔(MADHUとKAITABHA)が彫刻され、襲いかかろうとしています。
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  SINDURSI 6世紀









RAJIMのRAJIVALOCHANA寺院は素晴らしい彫刻の宝庫です。
西楼門のドアーフレイムの楣にアナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌがあります。
Rajim西門8世紀 
  RAJIVALOCHANA TEMPLE 8世紀
  沢山の人物に囲まれている
  リラックス出来ない
  





南インドのマハバリープラムにあるMAHISHAMARDHINI MANDAPAの「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」です。5つの頭のアナンタ龍の上に横たわり腕は2腕でチャクラ(?)を持っているみたいです。
ブラフマーはおりません。その場所には擬人化された棍棒の女性KAUMODAKIと法螺貝のPANCHAJANYAが彫刻されています。
足下にはラクシュミーは彫刻されていません。そこには立っている二人の悪魔(MADHUとKAITABHA)が彫られています。
今にも襲いかかろうとしていますがヴィシュヌはのんびり寝ています。
ヴィシュヌの下には3人の人物が、(右は大地の女神BHUDEVI、中央は剣の擬人化されたNANDAKA、左は円盤の擬人化されたSUDARSHAN)彫られています。
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  MAHISHAMARDHINI MANDAPA
  7世紀後半
  石窟には「水牛の悪魔を殺すドゥルガー」
  も彫刻されています。






エローラの石窟寺院にも素晴らしい「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」があるのですが暗くて写真が上手に撮れません。
とりあえず写真を載せておきます。
左を頭にしてアナンタ龍の上に横たわり、4腕でヘソから蓮の茎が出て花の上にブラフマーが座っています。
足下にはラクシュミーが彫られ、ヴィシュヌの下には右側に6人、左側に1人座っています。
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  ELLORA CAVE 8世紀
  下部の6人は武器の擬人化か








南インドでは天井に彫刻している寺院が見られます。
上から見下ろす形になるので好まれた様です。
アイホーレのKUNTI寺院の祠堂天井です。
9つの頭のアナンタ龍に横たわり、4腕でブラフマーは見当たりません。
足は交差させ足下にはラクシュミーがおります。
ヴィシュヌの頭の回りにはチャクラ、剣、法螺貝が置かれ、人物も数人彫刻されていますがはっきりしません。
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  KUNTI寺院 8世紀
  足下に棍棒を持った人物








同じアイホーレのHUCCHAPPAYYAGUDI寺院の天井彫刻が、ムンバイのプリンス・オブ・ウェールズに保存されています。
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  HUCCHAPPAYYAGUDI寺院 8世紀
  女性の頭をなでている?
  もしかしてSUDARSHAN?








南インドのホイサラ朝の寺院でもよく見られます。
BUCHESHWARA寺院の「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」はホイサラ朝独得の彫刻で、ヴィシュヌのヘソからブラフマー、足下に立つラクシュミー、ブラフマーの隣にはガルーダがいます。
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  BUCHESHWARA 寺院 1173年
  ホイサラ独特の衣裳
  上手にスペースを活用している。














同じホイサラ朝のCHENNA KESHAVA寺院です。
7つの頭のアナンタ龍の上に4腕のヴィシュヌが横たわり、ヘソからブラフマー、足下にはラクシュミー、左上にはガルーダが彫刻されています。
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  CHENNA KESHAVA 寺院 1117年
  壁面の装飾帯に彫られている。








カルナータカ州バーダーミの貯水池のほとりにBHUTANATHA寺院はあります。さらにその奥に石窟がありそこに「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」が彫刻されています。9つの頭のアナンタ龍に横たわり、4腕でヘソからブラフマーが、足下にはラクシュミーとガルーダが彫刻されています。ヴィシュヌの横には、チャクラ、法螺貝、棍棒が置かれています。頭の方に神が一人彫られています(スカンダ?)。上部には沢山の神がいます。
ブッタナータ
  BHUTANATHA寺院裏の石窟 11世紀?
  石窟の正面に彫られている。
  








カルナータカ州のハンピの遺跡には巨石がゴロゴロしています。その巨石に神々が彫られ「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」もあります。
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  KOTI TIRTHA 16世紀
  ここへ行くには舟で行くのが良い。
  沢山のリンガや彫刻が岩に彫られている。
  






東インドのヴィシュヌプルにはテラコッタの寺院が沢山あります。名前の通りほとんどがヴィシュヌに捧げられた寺院です。RADHA SHAMA寺院の「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」です。七つの頭のアナンタ龍に横たわりヘソからブラフマー、足下に9人の従者を連れたラクシュミーが彫られています。ブラフマーの横に2臂と4臂の神。
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  RADHA SHAMA 寺院 18世紀中頃
  壁はすべてヴィシュヌの化身の彫刻
  文様もよい。








「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」の神話はインドはもとよりネパールや東南アジアの国々でも好まれ、特にアンコール帝国では沢山の彫刻が彫られました。


ホームページ  www.ravana.jp

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