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気になる話 その12(ヘンリー・ダーガー)

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以前ある美術雑誌で「ヴィヴィアン・ガールズ」の挿絵を見てとても興味を持ちました。
この絵は正式なタイトル「非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ―アンジェリニアン戦争の嵐の物語」という小説の挿絵です。
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普通は「非現実の王国で」と呼ばれ、小説も挿絵もヘンリー・ダーガーと言う人が書いていることがわかりました。
ストーリは子供奴隷を使役するグランデニアという国と、ヴィヴィアン・ガールズ率いるキリスト教軍が戦うという戦史ものです。
グランデニアでは子供たちは親から引き離され、過酷な労働を強いられ、牢獄に監禁され、虐待されており、その解放を目指し、グランデニアと戦うのが7人の少女ヴィヴィアン・ガールズです。
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非現実の世界では、あちこちに戦乱があり、ヴィヴィアン・ガールズはブレンギグ・ロメニアン・サーペンツ(通称ブレンゲン)という異形の怪物に助けを借りながら転戦していきます。
小説は1万5千ページを超える世界で最も長い長編小説ですが、全体をつなぐプロットはほとんど見られません。
ひたすらヴィヴィアン・ガールズを巡る冒険と戦いがくりかえされます。
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素晴らしいのは小説ではなく挿絵です。
この絵を描いたヘンリー・ダーガーとはどんな人なのでしょうか。
1892年シカゴで生まれ、母は4才の時に亡くなり、父は体調がすぐれず、ヘンリーはカトリックの少年施設で過ごします。友人とコミュニケーションがとれず、12才の時に知的障害者の施設に移されます。
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16才で施設を脱走し、260kmを歩いてシカゴに戻り、聖ジョゼフ病院の掃除人として働き始めます。
19才ので「非現実の王国で」の執筆を始めます。
73歳の時、掃除人の仕事を強制的にやめさせられ、できた時間で自伝を執筆します。
80才で病気のため救貧院に入り、翌年亡くなります。
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親類も友人もなく、雑役夫として働いた病院と教会のミサを行き来するだけの貧しい生活でした。
そして死後、アパートの大家が荷物を片付けようと彼の部屋に入り目にしたものはタイプライターで清書された1万5145ページの戦争物語『非現実の王国で』とそのために描かれた300余点の大判の挿絵でした。
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ヘンリーはそこら中のごみ捨て場から新聞、雑誌、漫画、広告、を持ち帰り、必要な部分を切り抜きスクラップします。
そして必要なものをトレースしてさらに紙に転写します。
そうして「非現実の王国で」の挿絵が完成します。
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ヘンリーは「アウトサイダー・アートの第一人者」と表現されることが多いいのですが、私がヘンリーを知った時は「アール・ブリュット」の代表的作家と呼ばれていました。
アール・ブリュット」とはフランス人画家ジャン・デュビュッフェが体制に叩きつけた美術の解放宣言で調整や加工されていない生の芸術のことです。
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アウトサイダーというと60年代、高校の先生が薦めてくれたコリン・ウイルソンの「アウトサイダー」を思い出し、当時流行した社会常識にとらわれない独自の思想を持った一匹狼的な人達を想像してしまいます。
芸術にインサイド、アウトサイドという基準をつけるのは如何なものかと思い「アウトサイダー・アート」という言葉は好きではありません。
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仕事と教会とゴミあさりの往復以外部屋に閉じこもり、60年間書き続けた彼の王国は誰にも知られずに焼却される予定でした。
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それが世界中に広がり絶賛されて本にまでなりました。
人付き合いの嫌いな彼はどう思っているのでしょうか。
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ヴィヴィアン・ガールズは無敵です。

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