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寺院の彫刻 その53(シヴァ3 ナタラージャ)

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シヴァ神を表すリンガとともに有名なシヴァ神の形態(ムルティ)はナタラージャと呼ばれるダンスのポーズです。
それゆえ舞踊王とも呼ばれ、その踊りは9つの型に分類され108のポーズがあります。
いずれも宇宙の創造、維持、破壊、幻惑、開放などを表していると言われます。
ナタラージャは寺院に彫刻されていますが、南インドでは12世紀頃から、ブロンズ像として沢山作られました。
1ナタラージャ12世紀
『あるときシヴァ神は、彼に敵対する宗派の集会を訪れた。
そこに集まった1万人聖仙に真の信仰を説こうとしたのである。
ところが彼らは呪文によってシヴァ神を苦しめようとした。
しかしシヴァ神に呪文は何の効き目もなかったので、聖仙達は獰猛なトラを出現させて襲いかからせた。
シヴァ神は微笑みながら小指の爪でトラの生皮を剥ぎ、身体にまとった。
怒った聖仙達は猛毒を持つ大蛇を出現させた。
シヴァ神はこれに対しても驚かずその大蛇を首にかけた。
聖仙達は今度は全身が真っ黒な小人の悪魔を出現させた。
小人の悪魔は棍棒を手に襲いかかったが、シヴァ神は小人を踏みつけるように踊り始めた。
聖仙達は無言のまま舞踏を見つめていたが次第に引き込まれ、霊妙なリズムが聖仙の心に波動となって響き渡り、眼も眩むほど見せられたのである。
すると突然天界が開けてそこから神々がシヴァ神の舞踏を見つめているのが見えた。
聖仙達はシヴァ神こそ真実の信仰を伝えるものと悟った。
そして、彼の足下にひれ伏して心の底から礼拝したのである』という話です。
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古代社会において、舞踏は宗教儀式と結びついた大変重要な行為です。
狂躁、陶酔、エクスタシーを伴う再生、創造を象徴する宗教儀式です。
シヴァ神が舞踏王とされるのは、彼自身がそうした狂躁行為を通じて宇宙を破壊し、さらには再生に導くという役割を担っていたからです。
ナタラージャ像における、腕の数は一定していません。4、8、10、16、18など様々です。
足元は矮人(小人の悪魔)を踏みつけています。
一般に足下には音楽隊や従者を引き連れています。
その中に特徴的なカーライッカル・アンマイヤール、三本足のブルンギもいます。
カーライッカル・アンマイヤールは狂信的なシヴァ信者です。
元は大変美しい女性でしたが、修行の邪魔になるので神に祈り、ガイコツのような容姿にしてもらいました。
ブルンギも狂信的なシヴァ信者です。
それでは石窟寺院におけるナタラージャの彫刻から見ていきます。
南インドのバーダーミの石窟は第4窟まであります。
バーダーミ第1窟(6世紀後半)はシヴァ神に捧げられた窟で入り口に素晴らしいナタラージャの彫刻があります。
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18腕ですごい迫力です。
多腕に不自然さはなく、足元にナンディとガネーシャ、打楽器奏者を従えています。
同じ南インドのアイホーレにあるラーヴァナパディ(6世紀後半)には細身のナタラージャが彫刻されています。10腕で蛇の使い方がとても上手です。足元にはガネーシャとスカンダが彫刻されています。写真には写っていませんが、スカンダの隣にはパールヴァティーが彫刻されています。
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7世紀前半のエローラの石窟にはたくさんのナタラージャの彫刻があります。
エローラ14窟のナタラージャは8腕で腰に巻いた蛇が印象的です。
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ミュージシャンと子供の手をひく女神が彫刻されています。
エローラ15窟のナタラージャは暗くてよく解りませんが8腕で伸び伸びした像です。
足下にはミュージシャン達がいます。
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エローラ16窟カイラーサナータ寺院のナタラージャは8腕で優しい感じがします。
残念なことに右足は失われています。
足下にはミュージシャン達です。
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エローラ21窟のナタラージャも暗くてよく見えませんが8腕で女性のような顔つきと身体で光背があります。
上部には神々が下部にはミュージシャンが描かれています。
股の間からカーライッカル・アンマイヤールがのぞいています。
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エローラ29窟のナタラージャはあまり良い出来ではありません。
ミュージシャンは上部に、そして神々が囲んでいます。
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開窟時期がはっきりしない(6〜8世紀)エレファンタ島の石窟にも素晴らしいナタラージャがあります。
8腕で腰から下は崩壊しています。
周囲をガネーシャやブラフマー神など沢山の神々に囲まれています。
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同じくボンベイ近郊のMANDAPESVAR石窟にもナタラージャの大パネルがあります。
6世紀と言われ、エレファンタと同じような構図です。
8腕で同じように神々に囲まれています。
下部にはミュージシャンが彫られ、カーライッカル・アンマイヤールも見つかります。
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彫刻ではありませんが同時期の彫像があります。
表情もスタイルもよく似ています。
足下にはナンディとミュージシャン、足の間にはダンサーも見えます。
素晴らしい彫像です。
シヴァグプタ
これら石窟寺院の彫刻は6世紀から8世紀のもので、とても迫力があり、おおらかです。
次回は寺院の彫刻を見たいと思います。

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