寺院の彫刻 その48(ラクシュミー2)

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今回は東南アジアにおけるラクシュミーの彫刻を見てみます。
東南アジア諸国でも好まれたようで、仏教寺院、ヒンドゥー教寺院で見られます。
まずはカンボジアのクメール寺院から見て行きます。
アンコールのプラサットクラヴァン寺院は921年の建立で共通基壇上にレンガ造りの5基の祠堂より構成されています。中央祠堂にはヴィシュヌが北端の祠堂にはラクシュミーがレンガの壁に直接彫刻されています。
立位で4つの腕の内、後の腕にはチャクラ(円盤)と蓮を、前2本ははっきりわかりません。
左右には天女を控え、顔立ちや衣装はとてもクメール的です。
1PRASAT KRAVAN024
  PRASAT KRAVAN寺院 921年
  レンガに直接彫られている
  4腕で後腕でチャクラと蓮を持っている
  前腕は良く解らない。
  











2KRAVAN008
  PRASAT KRAVAN寺院 921年
  2腕である
  







クメールの至宝バンテアイスレイ寺院(967年)の破風には素晴らしいガジャラクシュミーが彫刻されています。
3第二東塔門10
  BANTEAY SREI 寺院 967年
  ガルーダの上の蓮台に乗り、左右の像から
  聖水を注がれる典型的な形
  厚肉彫りで美しい






ラージェンドラヴァルマン王によって10世紀に建立された東メボン寺院の楣にも精巧なガジャラクシュミーが彫刻されています。
この寺院は貯水池東バライの中心に作られた人工の島に建っています。
4E-MEBON058
  EAST MEBON寺院 10世紀
  バンティアイスレイ寺院に似ている
  左右の手に蓮を持つ
  蓮台の下は上部から見た蓮の花で珍しい
  象の足にも蓮台





タイのクメール寺院では11世紀に建立されたカンペンヤイ寺院の楣にガジャラクシュミーが彫刻されています。
5YAI028
  KAMPHAENG YAI寺院 11世紀
  カーラの上に蓮を持つラクシュミー
  蓮台の左右に蓮を捧げる天女







パノムルン寺院(10〜13世紀)の楣にはカーラの上に座す蓮をもったラクシュミーが彫刻されています。
6RUNG004
   PHNOM RUNG寺院 10〜13世紀
  境内に置いてある楣
  カーラの上に蓮を持つラクシュミー
  ラクシュミーの髪や左右の天女に
  地方性が出ている





クメールのラクシュミーの彫像は沢山あります。
7世紀の像です。
7ラクシュミー7世紀前半
  ラクシュミー立像 7世紀前半
  サンボール・プレイ・クック様式
  4腕で下の腕に宝珠と棍棒を持つ
  僧帽の後ろに支柱の一部が残る
  とても力強い












8ラクシュミー8世紀
  ラクシュミー立像 8世紀
  コンポン・プレア様式
  右後腕にチャクラ(円盤)
  全体にシンプル


















9ラクシュミー10世紀初め
  ラクシュミー立像 10世紀初め
  コー・ケー様式
  宝冠の彫刻が素晴らしい
  腰衣も美しい














ベトナムのチャンパ遺跡では見つかりませんでしたがチャム彫刻博物館では見つかりました。
とても面白いガジャラクシュミーがあります。
チャンパ博物館
  チャム彫刻博物館
  台座の上に座し左右の手には蓮を持つ
  象の上には天樹と左右に天人
  ラクシュミーの髪型がよい
  おそらく壁龕の上部のか
  




両手に蓮を持った坐像もあります。
光背を持ち、両手に蓮を持った立像もあります。
チャンパ博物館2
  チャム彫刻博物館
  ラクシュミー立像
  両手に蓮を持つ
  2重光背を持つ
  とても印象的な像









インドネシアでも見つかりました。中部ジャワの仏教寺院(9世紀)バニュニボBANYUNIBOの壁龕です。
両手に蓮を持っています。
後ろには光背が彫刻されています。
14BANYUNIBO1
  BANYUNIBO寺院 9世紀
  壁龕の上部に彫刻されている
  蓮台の上に結跏趺坐している。

  











同じく中央ジャワのサリ寺院も両手に蓮を持って良く似ています。
セウ寺院も同じで一番保存状態が良いです。
東ジャワの山の中にあるチャンディベラハンの遺跡も見なくてはなりません。
ここはアイルランガ王の霊廟の一部で沐浴場になっています。
この沐浴場には2体の彫像があります。
1体はシュリー、もう1体がラクシュミーです(11世紀)。
ラクシュミーは4腕で2本に蓮を持ち、2本で乳をおさえ、乳首から水が流れだし現在も近くの村人の生活用水となっています。
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  BELAHAN寺院 11世紀
  4腕で前の2腕で乳を押さえている
  いつも人が出入りしている大事な水場












ミャンマーのパガン遺跡では ウッタナダラ寺院(12〜13世紀)のテラコッタの破風にラクシュミーが彫刻されていました。
蓮華の上に座し、手に蓮を持ち左右には天女が蓮を捧げています。
ミャンマーではこの構図を良く見かけます。
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  WU-THA-NA-DAW寺院 12〜13世紀
  レンガの上に漆喰で彫刻されている
  左右の手には蓮を持つ







日本においても吉祥天として人気が高く、「毘沙門天」の妃であり蓮華の上に立ち、左手に如意宝珠(何でも望み通りに財宝を取り出すことが出来る)を持つ姿で描かれます。
「金光明経」や「金光明最勝王経」等の教典に、国家的な平和や繁栄を、また個人的にも財福を与える存在として登場します。
残念ながら吉祥天の石像は見つけることが出来ませんでした。
しかし薬師寺には素晴らしい画像があります。
国宝に指定された8世紀後半の吉祥天像は麻布に描かれ、剥落が多いが金箔が残っており、左手に如意宝珠を乗せ、顔は唐美人を想起させます。
躍動感のあるS字形の姿勢と身につけた薄物の微風をはらんで翻る様はまさに奈良時代の最高傑作です。
17吉祥天像
  薬師寺 麻布著色吉祥天像 8世紀 国宝
  麻布に書かれた日本最古の彩色画
  光明皇后を写したと伝わる













もうひとつ、木造ですが浄瑠璃寺の吉祥天立像は1212年頃の作とされ、肉身を胡粉で白く塗り、美しい色彩を残しております。薬師寺の画像は唐風の母性的な美人像ですが、この像は中国宋時代の装飾に近く、豊かな黒髪を肩にたらした容姿から初々しい潔癖さが感じられます。
18吉祥天浄瑠璃寺
  浄瑠璃寺 厨子入木造吉祥天立像 1212年
  秘仏であったため色彩が鮮やかに残る













東南アジアでも人気があり、ヒンドゥー教寺院でも仏教寺院でも見つかります。
日本でも弁財天と共に数少ない女性尊で人気があります。

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