2018/04/28
寺院の彫刻 その51(シヴァ)

シヴァ神はヴィシュヌ神、ブラフマー神とともに特に重要な神です。
ブラフマー神が宇宙の創造、ヴィシュヌは維持、シヴァは破壊と言われています。
シヴァ神の前身はバラモン教のヴェーダの時代の神「ルドラ神」で暴風雨神です。
自然現象としての暴風雨は家屋、樹木、を破壊して人畜を一瞬にして死に至らしめると同時に暴風雨の後の爽快さ、蘇生、も意味します。
人間の生死、運命だけでなく不老長寿、生殖の神としての面も持っています。
後世のヒンドゥー教の時代になりシヴァ神として、ヴィシュヌ神とともにヒンドゥー教パンテオンで華々しく活躍します。
シヴァ神の住居はヒマラヤ山脈にあるカイラス山で、青白い裸体にトラの皮をまとい、額に第三の眼を持ち、首に蛇を巻き付けています。
延ばし放題の髪を頭上で束ね、身体に牛糞の灰を塗り、持物は三叉戟、太鼓、水瓶です。

ヴィシュヌ神が様々な条件の下で化身と言う方法を用い広がったのに対し、シヴァ神はその地域の土着の神を取り込み発展していきました。
神妃はパールヴァティー、ヴァーハナ(乗り物)は牡牛のナンディ、子供はガネーシャとカルティケーヤ(スカンダ)です。

シヴァ神はリンガ(男根)で象徴されます。
リンガは下3分の1は四角形(ブラフマー)、中央3分の1は八角形(ヴィシュヌ)、上部3分の1は円形(シヴァ)です。

シヴァ派のヒンドゥー教寺院の本尊としてヨーニと呼ばれる女性性器を抽象化した台座とセットで祠堂に祀られています。
リンガの下3分の2はヨーニに埋め込まれています。

信者はリンガにミルクやギー(バター)をかけ、花や灯明など供物を捧げ願い事をします。
シヴァ神とリンガの結びつきはシヴァが神格化の背景に生類の創造神としての役割をにない、この神格が生殖崇拝と結びついていったと思われます。
寺院に祀られる彫像のリンガの中には上部にシヴァの顔をあらわしたムカリンガと呼ばれるものがあります。

ムカリンガの顔は2、4、5個の場合もあります。

リンガを崇拝する最初期の作品はクシャーン王朝の頃のマトゥラーのブーテーサル出土の塔門横木に彫刻されています。

セト・ビクチャンド・カ・ナガル出土の石柱の彫刻も同じ時期です。

寺院に彫られたシヴァ神の彫刻には勃起した性器を彫刻してある像もみられます。

面白い神話があります。
「ある時7人の聖仙が集まりブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの中で誰が最も偉大な存在だろうかと話し合い、ブリグ仙が直接会いに行き判断を下すことになった。ブラフマーは崇拝者に囲まれヴェーダと知識の管理者であることにうぬぼれ、ブリグ仙がやってきてもバラモンに対して当然しなければならない挨拶さえしなかった。ブリグ仙は尊大な態度に腹を立て、この神を礼拝するものは誰もいなくなるだろうと呪った。次にシヴァの所へ行くとちょうど妻のパールヴァティーと性行為の真っ最中であつた。ブリグ仙は外で終わるのを待っていたが何百年経っても終わらないのであきれかえりこの神は暗闇の中で性器の形で礼拝されるようになるだろうと言って立ち去った。最後にヴィシュヌの所へ行くと、ヴィシュヌはアナンタ龍の上で眠っていた。やはり何百年経っても目覚めないのでブリグ仙は乱暴にもヴィシュヌの胸を蹴飛ばした。ヴィシュヌは起き上がるとブリグ仙に対し足を怪我しなかったかと尋ねた。その態度に感激したブリグ仙が、ヴィシュヌこそ最も礼拝に値する神であると結論した」と言う話です。
この話はヴィシュヌ派の話ですがヴラフマーの人気が無くなり、シヴァが祠堂の奥でリンガと言う形で礼拝されることを物語っています。
変わったリンガを見てみましょう。
南インドのハンピにある巨大なリンガです。

南インドのエカンバレーシュヴァラで見たリンガの列、

カンボジアのクバルスピアンの川の中にある多数のリンガ、

インドのハンピにも同じリンガがあります。

ハンピの博物館にある1つのヨニに5つのリンガ、

ブヴァネーシュウヴァルのムクテーシュヴァルにはリンガ崇拝の彫刻もあります。

次回から寺院におけるシヴァの彫刻を見ていきます。
ホームページ www.ravana.jp