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映画の話 その51(ノスタルジア)

79スティアアキ
アンドレイ ・ タルコフスキー監督の「ノスタルジア」です。
ノスタルジア7
いきなり白黒のブリューゲルの絵画の様なオープニング(霧に包まれた主人公の故郷か)。
民謡の様なアカペラの唄にオーケストラが入ってくるが同じ曲ではない。
動きが止まりタイトルクレジット、実にうまい演出です。
ノスタルジア6
このオープニングのシーンは主人公の夢の中で何度も出てきます。
深い霧の中、車が止まり男と女が車からおり女は教会へ、男は車に残る。
男はモスクワから来た詩人アンドレイ・ゴルチャコフで女はイタリア人通訳のエウジェニアです。
ふたりは、18世紀にイタリアを放浪し、故国に帰れば奴隷になると知りつつ帰国して自殺したロシアの音楽家パヴェル・サスノフスキーの足跡を追って旅をしています。
ノスタルジア5
ここシエナの村は旅の終わりです。
アンドレイがマドンナ・デル・パルトの聖母画を見たがっていたからですが、アンドレイは車に残り、エウジェニアひとり、教会を訪れることになりました。
この教会のシーンはハイライトの1つで蝋燭の美しさ、聖母のお腹から出るたくさんの小鳥、ピエロ・デラ・フランチェスカが描いた出産の聖母像などタルコフスキーの映像美が思う存分堪能出来ます。
二人は小さな温泉街バーニョ・ヴィニョーニに滞在します。
そこで「もうすぐ世界の終末が訪れる」と信じ込み、家族を7年にわたって幽閉し周囲から狂人と呼ばれる男、ドメニコに出会います。
ドメニコは住処の廃屋にアンドレイを招く。
ノスタルジア
そこは常に天井からの水が床や瓶へ滴っており、壁には「1+1=1」という奇妙な数式が書かれてあります。
ドメニコはアンドレイに第九を聴かせ、「蝋燭に火を灯し、広場の温泉を渡りきることが出来たら、世界は救済される」と告げるのでした。
アンドレイはそれを約束します。
このドメニコの部屋もタルコフスキーの美があふれています。
次のシーンでアンドレイは建物の中にある川(温泉?)にコートのまま入ってお酒を飲んでいます。
このシーンはとても印象的です。
ノスタルジア3
なぜなら私が夜寝ていてトイレに行きたい時に見る夢ととても似ているからです。
ローマに先に戻ったエウジェニアから一本の電話を受け取ります。
内容は「ドメニコがローマで演説を3日間に渡って続けている。
彼は自分があなたに言った事をしたかと尋ねている」というものでした。
アンドレイは再びバーニョ・ヴィニョーニに戻ります。
ドメニコはカンピドリオ広場のマルクス・アウレリウス像に上り、人々が固唾を呑んで見守る中で演説をして頭からガソリンをかぶり第九をかけながら焼身自殺します。
バーニョ・ヴィニョーニに戻っていたアンドレイは、かつてドメニコに言われていた、蝋燭に火を付けて温泉を渡りきるという試行を行って成功しますが持病の心臓病で倒れてしまいます。
ノスタルジア2
彼は故郷の夢を見ていました。
その映像はとても不思議で美しいものでした。
雪が降って来てオープニングの唄が聞こえてきます。
やはりタルコフスキーの映像は美しい。
余談ですがタイのロブリーへ行きPHRA NARAI RATCHANIWETという王宮跡に入った時です。
PHRA NARAI RATCHANIWET LOPBURI
PHRA NARAI RATCHANIWET

一瞬「ノスタルジア」をしてしまいました。

8-2ウィジョヨクスモの花

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映画の話 その51(小さな恋のメロディ)

80ウドウォ

今回は敬愛するアラン・パーカー監督の処女作(原作・脚本)「小さな恋のメロディ」です。
若者の間ではヒットしましたが、あまり映画としては認められていません。
さらに本国イギリスとアメリカでは全くヒットしませんでした。
日本と南米だけです。
日本でヒットした要因はマーク・レスターの人気とビージーズの主題歌です。
メロディ3

あらすじは「気が弱く大人しい11歳のダニエル(マーク・レスター)は同じ学校に通うメロディ(トレイシー・ハイド)という少女と出会う。
2人はいつしか互いに惹かれあい、悩みを打ち明け、初めて心を許す相手を見つけたと感じた。
純粋ゆえに恐れを知らない2人は、学校をさぼって海水浴場へデートに出かけたことから校長先生に叱られ、クラスメートたちにも散々笑い者にされる。
メロディ2

ダニエルは悪友オーンショー(ジャック・ワイルド)にしつこくからかわれ、殴り合いの喧嘩まで繰り広げてしまう。
事情を聴くこともなく押さえつけようとする大人たちに対し、2人は一つの望みを口にする。
それは「結婚したい」という驚くべきものだった。
「どうして結婚できないのか」と問うが、当然親も教師もとりあわない。
ある日、教師が授業を始めようとすると、教室はほとんどもぬけらの空であった。
自分たちの手で2人の結婚式を挙げようと、クラスの生徒が集団エスケープしたのである。
教師たちはあわてて彼らを探しに行く。
メロディ4

廃線脇の隠れ場所で、オーンショーが神父を務める結婚式がとり行われていた。
ダニエルとメロディが誓いの言葉を唱えようとした時、教師たちに見つかってしまい、子供たちは散り散りに逃げていく。暖かい日差しの中で大人と子供の乱闘が繰り広げられ、発明狂の男の子が作った自家製爆弾が車を見事に爆破すると、大人たちは恐れをなして一目散に逃げて行く。
子供たちはやんやの喝采を挙げる。
メロディ

その頃、ダニエルとメロディの2人はオーンショーの助けで追手を振り切り、トロッコに乗って線路のはるか向こうへと駆け出して行った」という話です。
この映画の良いところは、ロンドンの子供達はどのような生活をしているのか、ロンドンの風景、学校生活、生活環境(特に面白い)、などを通して描写していることです。
子供達の自然な演技、そして何よりすでにヒットしていたビージーズの「メロディ・フェア」「若葉の頃」の使い方です。
まるでこの映画のために作られたようです。
あとからわかったことですが、「メロディ・フェア」「若葉の頃」のなどの楽曲からアランパーカーは原作・脚本を作ったそうです。
メロディ5

この映画を見たときは二十歳でしたが素直に感動できました。
パーカーマジックかもしれません。
遅蒔きながら最近イギリスやアメリカでも見直されているようです。
この映画にインスパイアされたウェス・アンダーソン監督のムーンライズ・キングダムは傑作です。

8-2ウィジョヨクスモの花


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映画の話 その50(天国の門)

77ソムボ
これほど批判を浴び、酷評された映画もありません。
擁護させていただきます。
素晴らしい映画です。
ハーバードの卒業式、とても綺麗で素敵です。
この20分は必要かつ重要な時間です。
天国の門5
この20分にこれらの人達が、どのように関わって、どのように変わって行くのか考える時間です。
つまり重要なイントロなのです。
そしてワイオミングでのネイト(クリストファー・ウォーケン)の牛泥棒殺しです。
ここでどんな形でジム・エイブリル(クリス・クリストファーソン)との関係になるのかドキドキします。
天国の門4
ジム・エイブリルはワイオミング州ジョンソン郡の保安官となり地元で娼館を経営している娼婦の恋人エラ(イザベル・ユペール)のもとへ行きます。
ワイオミングの自然の中での二人はとても幸せそうです。
天国の門
しかしこの地では移民と牧畜業者の関係が悪化し、戦争が起きるかもしれない状況です。
さらに牧畜業者協会のリーダー、カントン(サム・ウォーターストン)は移民たち150人の処刑者リストを作成し、大統領の了承も得て、会議では多数決で可決されたのです。
そんなことをよそに集会場のローラースケートリンクで楽しそうに踊る移民達。
このシーンは素晴らしいの一言です。
天国の門3
そしてこのスケートリンクが悲痛な運命を決める議論の場に変貌するのです。
この映画の根底をなすのがジムとネイトとエラの三角関係です。
前作「ディア・ハンター」と同じです。
「明日に向かって撃て!」もそうでした。
大学の卒業式からラストの戦闘シーンまでこれほどのシーンを完璧の作り上げた人は知りません。
私達は観客です。
制作費がいくらかかろうと、制作時間がどのくらいかかろうと関係ありません。
この世の中で、大間産のマグロを使おうが、輸入マグロを使おうが、新人の職人が握ろうが、世界的老舗の大将が握ろうが値段は同じなのが映画なのです。
この恩恵にあずからない手はありません。
マイケル・チミノ監督が完璧主義者で映画会社がそれを許したために出来上がった偶然の傑作です。
これを見逃す手はありません。
219分は妥当です。
天国の門2
おまけにINTERMISSION付きです。
おそらくアメリカの映画評論家達は再評価すべきかどうか悩んでいるでしょう。
大作とはこういう映画のことを言うのでしょう。
天国の門7
マイケル・チミノ監督のご冥福をお祈りいたします。

8-2ウィジョヨクスモの花

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映画の話 その49(エレファントマン)

75クレスノ

1981年のエレファント・マンのテレビコマーシャルは強烈でした。
白黒の画像で目のところに1つ穴を開けたずた袋を被り、黒い帽子に黒い毛布を巻きつけた格好で満員の船に乗っているのです。
エレファント1

毛布を通して体の形が異常なのもわかります。
もう頭の中はずた袋の中はどうなっているの、ゾウの様になっているの、と恐怖が駆け巡ります。
またジョン・モリスの音楽が怖いのです。
なんと言ってもデヴィッド・リンチ監督ですから。
この恐怖は「顔のない目」「エクソシスト」以来です。
エレファント5

あらすじは『産業革命真っ只中のロンドン、生まれつき奇形で醜悪な外見により「エレファント・マン」として見世物小屋に立たされていた青年、ジョン・メリック(ジョン・ハート)は肥大した頭蓋骨は額から突き出、体の至るところに腫瘍があり、歪んだ唇からは明瞭な発音はされず、歩行も杖が無ければ困難という悲惨な状態だった。
ある日彼を見世物小屋で見かけた外科医、フレデリック・トリーブス(アンソニー・ホプキンス)は興味を覚え、彼を学会連れて行き発表すると大きな反響が起こる。
エレファント3

持ち主のバイツから虐待を受けていること、さらに研究したいという理由でバイツからジョンを引き取り、病院の屋根裏部屋で彼の様子を見ることにするが、院長は彼の勝手な行動を非難する。
しかし実際にあって見ると、メリックは聖書や詩を自在に暗唱するインテリで院長も感銘を受け態度を改める。
次第に心を開くジョン。
ある日トリーブス家に招かれ、正装して出かける。
トリーブス夫人は彼に優しく接し、感激したジョンは泣き出してしまい、彼女に自分の母親の写真を見せる。
病院長がジョンのことをロンドンタイムズに投稿したため、ジョンは世間に知れ渡り、有名人になって行く。
ロンドン・タイムズ紙の投稿を読んだ演劇界の大女優・ケンドール婦人(アン・バンクロフト)が、プレゼントを持ってジョンを慰問する。
エレファント2

これを皮切りに上流社会の人たちが次々にジョンを訪れる様になる。
元の持ち主バイツはまだ商品価値があると考え、病院から連れ出し、ヨーロッパ大陸を昔の様に巡業させる。
しかしジョンは生まれつきの奇形もあり、衰弱がひどくなって行く。
それを見ていた周囲の者たちが、ジョンに同情して逃がし、マントと頭巾をかぶせてフェリーに乗せてイギリスへ帰す。
ロンドンへ帰ろうとしたジョンは蒸気機関車に乗るが、興味本位で近づいた子どもが頭巾を取り、大パニックになる。
警察に保護され、病院に戻される。
衰弱はしているものの元の生活に戻り、みんなに愛されもう足りないものはない、充分人生に満足したとトリーブスに告げ、もしあとまだ1つ足りないものがあるとすれば健常者のように「仰向けになって寝ること」と言ってベッドの枕をすべて取り除き、普通の人のように仰向けになって眠った(彼にとって仰向けに寝ることは死を意味する)。』
エレファント4

のちにツイン・ピークスにハマってしまうデヴィッド・リンチ監督の1980年の作品です。
正攻法の素晴らしい作品です。
画面に格調があります。
後年レクター博士でブレークする名優アンソニー・ホプキンス、ミッドナイト・エクスプレスのジョン・ハート、サリバン先生、ロビンソン夫人のアン・バンクロフト達の名演が光ります。
プロデューサーとしてメル・ブルックスの名前があります。
舞台では特殊メイクをせず、身体表現で見せたデヴィッド・ボウイが気になります。

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映画の話 その48(ヴェニスに死す)

74ノロヨノ
この映画は高齢者が見るべき映画です。
原作は10代後半に読みました。
トーマス・マンは読みやすく、三島由紀夫も絶賛していたので、ヘッセの「荒野の狼」カミユの「異邦人」ラディゲの「肉体の悪魔」とともにマンの「トニオ・クレーガー当時はトニオ・クレーゲル」は愛読書でした。
「ヴェニスに死す」は少しかったるい小説でしたがヴィスコンティが監督した映画でしたので、見に行きました。
オープニングからヴィスコンティ全開です。
ヴェニス1
冒頭から厳かに流れ来るグスタフ・マーラーの交響曲第5番第4楽章が重要です。
映像と音楽のコラボレーションでこれから起こることを暗示させます。
静養のためベニスを訪れた老作曲家アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は、ふと出会ったポーランド貴族の少年タジオ(ビョルン・アンドレセン)に理想の美を見出す。
ヴェニス2
以来、彼は浜にタジオを求めて彷徨う。
ある日、ベニスの街中で消毒が始まる。
尋ねると、疫病が流行しているのだという。
理髪店で白髪を染め、髭を整え、おしろいを塗り、口紅を施して若作りをし、タジオの姿を求めてベニスの町を徘徊していたあるとき、彼は力尽きて倒れ、自らも感染したことを知る。
ヴェニス3
それでも彼はベニスを去らない。
疲れきった体を海辺のデッキチェアに横たえ、波光がきらめく中、彼方を指差すタジオの姿を見つめながら死んでゆく。
ヴェニス5
さすがヴィスコンティと思えるのがヴェニスの風景描写です。
観光都市ヴェニスが全く美しくなく、薄汚いのです。
天気はほとんど曇りです。
主役のリド島のホテル・デ・バンのロケは閉鎖時期を利用して徹底的に当時のままに作り替えました。
もちろんヴィスコンティのセンスで、です。
これがまた完璧です。
ホテル内は紫陽花の花が至る所に置かれています。
そして名優ダーク・ボガードの演技と、よくぞ探したビョルン・アンドレセンの美しさ、シルバーナ・マンガーノの気品です。
伏線も素敵です。
行きの船で出会うお化粧をほどこした醜い老人、ヴェニスの街で見かけたコレラで倒れこむ男性、全く同じ事がアッシェンバッハの身に起こります。
ラストの映像の美しさなども感激しました。
今自分が高齢者になりこの映画を見直して気づいたことはアッシェンバッハに感情移入をしている自分です。
高齢になり思うように動かない体(もちろん性欲も)、些細なことに腹をたてる自分、世間の動きについて行けない頭、それが恋をすれば相手が男であっても女であっても子供であってもアッシェンバッハの様になる可能性は大です。
それは時間が経たなければわからない感情です。
したがってこの映画は高齢者の映画と結論づけました(若い時と2度見るのが良い)。
ヴェニス7

「けれども彼自身は、海の中にいる蒼白い愛らしい魂の導き手が自分にほほ笑みかけ、合図しているような気がした。少年が、腰から手を放しながら遠くのほうを指し示して、希望に溢れた、際限のない世界の中に漂い浮んでいるような気がした。すると、いつもと同じように、アシェンバハは立ち上がって、少年のあとを追おうとした。椅子に倚って、わきに突っ伏して息の絶えた男を救いに人々が駆けつけたのは、それから数分後のことであった。そしてもうその日のうちに、アシェンバハの死が広く報道されて、人々は驚きつつも恭しくその死を悼んだ 」
                   トーマス・マン / 原作、高橋義孝 / 訳 新潮文庫より

8-2ウィジョヨクスモの花


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