映画の話 その40(仮面/ペルソナ)

68バスデウォ
ベルイマン監督1966年の作品「仮面/ペルソナ」です。
ペルソナ1
始まりから驚かされます。
現代音楽をバックに回るフィルム、男性器、蜘蛛、サイレント映画、屠殺された羊、死体の様な人々、電話で少年が起こされます。その少年が愛おしそうに触れようとしている巨大な女性の顔、そこでサブリミナル効果の様にタイトルクレジットが入ります。
ペルソナ5
舞台女優のエリザベート(L・ウルマン)は確固たる地位を築き、善良な夫と可愛い息子に恵まれて幸せであった。
ところがある日、彼女は舞台で突然セリフが喋れなくなってしまった。
それはほんの一瞬間の出来事だったから、別に大したこともなく無事演技を終えたのだったが、数日後、その発作が再発、彼女は言葉を失うと同時に、身体の動きをも失ってしまった。
病院での精密検査にもかかわらず、精神的にも肉体的にも何ら欠陥をみつけ出せなかった。
そこで担当の女医はエリザベートに、バルト海に面した自分の別荘への転地療養をすすめた。
エリザベートはつきそいの看護婦アルマ(B・アンデルソン)がひどく気に入った。
ペルソナ4
そしてアルマも言葉にならぬエリザベートの意志をたちまち理解出来るほどになった。
ある日アルマは過去におかしたいまわしい自分の誤ちを話した。
エリザベートにとって、健康でたくましいアルマの肉体はまぶしく、その上アルマの官能性が自分にのり移ってくるように感じられた。
アルマはある日、女医あてのエリザベートの手紙をぬすみ見て驚いた。
そこにはアルマが名前も素姓も分らぬ男たちと戯れた白昼の浜辺の出来事、そのあげく妊娠してしまい、同棲していた医学生に堕胎医を探してもらった思い出話などが、細かに書かれていた。
アルマは激怒し二人の仲は裂かれた。
ペルソナ3
その頃から夢ともうつつともさだかならぬ状態の中で、二人の女の心と身体は互いに感応しあい、二人の境界が曖昧になり、同体感覚をもつようになる。
そしてエリザベートとアルマの肉体は入れかわり始めたのだ。
やがてエリザベートは再び口がきけるようになった。
彼女は幼い息子のことを得々とアルマに語り、一方アルマは耐えられぬ吐き気に悩まされた。
それはエリザベートが息子をみごもった時の苦しみが、アルマの肉体に移ったのであった。
エリザベートとアルマの入れかわりはそればかりでなく、エリザベートは夫との交わりにおいても、アルマの肉体を感じた。
ペルソナ2
しかし危機はやがて去った。
エリザベートは女優として華やかにカムバックし、アルマは病院に帰った。
やはりベルイマンは白黒の魔術師です。
風景、インテリア、ファッションすべてモノクロのために作られています。
カーテンをとても効果的に多用しています。
見終わると最初のシーンが意味を持ってきます。
それにしてもL・ウルマンとB・アンデルソンの演技力は素晴らしく、全く似ていない2人がそっくりに見えてきます。
ベルイマンはすごい。

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映画の話 その39(カッコーの巣の上で)

71ボロデウォ

今回は1975年のアメリカ映画「カッコーの巣の上で」です。
アカデミー賞も取り、原作は若者に人気の高かったケン・キージーの「One Flew Over the Cuckoo's Nest」と言うことでとても話題になりました。
特にカウンターカルチャーを標榜する人達に人気がありました。
私もすぐに映画館に行きました。
カッコー
あらすじはマクマーフィー(ジャック・ニコルソン)は刑務所の労役から逃れるために更生施設の牧場で暴行を働き精神病を装い、精神病院に入院する。
そこは絶対的な権限を持つラチェッド婦長が仕切っています。
ここの規則や管理体制が気に入らないマクマーフィーは全く無気力で生気のない患者達を巻き込んで婦長達に反抗を始めます。
カッコー3
ここで注目すべきはこの無気力な患者達は自分達みずから望んで入院していることです。
従っていつでも退院出来るのです。
マクマーフィーはみんなを引き連れてボートに乗り、釣りをしたり、ワールドシリーズを見せろと要求したり、反抗しますが、罰として電気ショック療法を受けるはめになります。
このとき重要な役割を演じるネイティブアメリカンのチーフ、彼は耳が聞こえず喋れないはずなのですがマクマーフィーにガムをもらい「ありがとう」と言うのです。
実は演技をしていたのでした。
ついにある日脱走を実行するのですがみんなとお別れのパーティーをしている時に酔いつぶれてしまい、翌朝婦長に見つかってしまいます。
カッコー2
さらに悪いことに見つかった仲間が婦長に責められ自殺してしまいます。
怒ったマクマーフィーは婦長の首を絞めて殺そうとしたところを取り押さえられ、隔離病棟へ連れて行かれます。
一緒に脱走しようとマクマーフィーの帰りを待つチーフのもとに戻って来たマクマーフィーはロボトミーの手術を施され、何の感情も持たない植物人間になっていました。
カッコー4
チーフは惨めなマクマーフィーをそのままに出来ず、枕を押し付け窒息死させます。
そして誇り高きインディアンとして、窓を壊し出て行くのです。
完全に管理された社会と無気力な患者、全員黒人の看護人、アイデンティティを失ったネイティブアメリカンと白人社会、など問題提起は色々ありますが、私が一番怖かったのはロボトミーです。
公開当時ロボトミーはまだ行われていたのです。
脳に穴をあけ前頭葉を切除するのです。
前頭葉は意志、学習、言語、類推、計画性、衝動の抑制、社会性などヒトをヒトたらしめている高次機能の主座です。
そこを切り取るのです。
そして感情のないロボット人間にするのです(ロボット人間にするからロボトミーではなく外科用語で葉LOBEを一塊に切除することをいう)。
もちろん廃人になります。
こんなに怖いことはありません。
当時全世界で反政府的な過激な人にロボトミー手術を施すという恐いうわさも流れました。

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「なまはげ」が来て、わるいこいねが!ろぼとみーにすっぞ!
子供も大人も怖くて泣き叫びます。


8-2ウィジョヨクスモの花

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映画の話 その38(ウィッカーマン)

70エロワティ
今回はロビン・ハーディ監督のウィッカーマンです。
とても不思議な映画でスコットランドの個人所有の小さな島を舞台とした、カルト、ミステリー、サスペンス、ミュージカルをごちゃ混ぜにしてフォークロアで味付けした楽しい映画です。
ウィカーマン7ウィッカーマンとは巨大な人型の檻(主にオークの木)の中に犠牲に捧げる家畜や人間を閉じ込めたまま焼き殺す祭儀のことです。
スコットランド・ハイランド地方西部の警察に勤める中年の巡査部長ニール・ハウイー(エドワード・ウッドウォード)は、ヘブリディーズ諸島のサマーアイルという孤島で行方不明になった少女ローワン・モリソンを探してほしいという匿名の手紙を受け取る。
ハウイーが飛行艇で向かった先で見たものは、島の領主サマーアイル卿(クリストファー・リー)のもとでキリスト教の普及以前のケルト的アニミズムが復活していた風景だった。
ウィカーマン
彼らは生まれ変わりを信じ、太陽を信仰し、子供たちに生殖と豊作を願うための性的なまじないを教え、大人たちは裸で性的な儀式に参加していた。
ハウイーは非常に厳格なキリスト教を信仰しているため、これらの風習に衝撃と嫌悪を隠せなかった。
宿では、主の娘のウィロー(ブリット・エクランド)が艶かしい踊りと歌でハウイーを誘惑し、彼を困らせる。
ウィカーマン2
「五月祭」の近づく中、島民は準備や儀式に忙しく、彼の捜査は進まない。
教師や役人も含め、島民は「ローワンという少女はここにはいない、最近死んだばかりだ」と口をそろえる。
ハウイーは島の権力者であるサマーアイル卿のもとへゆくが、そこで彼はサマーアイル島の物語を聞かされる。
サマーアイル卿の祖父の世代、凶作が続いたためにみんなでキリスト教を捨てて古代の宗教儀式に戻ったところ島は豊かになり、リンゴの名産地になれたという。
ハウイーは次第に、少女は人身御供として殺されたか、あるいはこれから殺されるのでは、との疑念を抱くようになる。ローワンが昨年の感謝祭の主役であったこと、凶作の年の五月祭は生贄が供えられることを知り、今年のリンゴの凶作のために去年の感謝祭の主役だった少女が五月祭で殺されることを確信する。
ハウイーは五月祭に混じり、祭りが始まり現れたローワンが生贄にされかけたところをハウイーは救うが島民に取り押さえられる。
ウィカーマン5
そこで真実が語られる。
生贄はローワンではなくハウイーであり、今までの全ては彼をこの島へ招きよせて生贄にするための罠だったことを明かす。
五月祭で燃やされる生贄は少女ではなく、童貞で、賢くかつ愚かな者でなければならず、しかも王の代理として自由意思で来なければならない。
ハウイーは信仰のために童貞であり、政府の警官=女王の代理として自ら島へやってきて罠にはまった、ということで生贄の条件を全て満たしたのである。
サマーアイル卿は島民たちの信仰の主宰者としてハウイーをウィッカーマンの中に閉じ込め、火を投じた。
ウィカーマン4
私はユニヴァーサル・ホラーが大好きで、イギリスのハマー・ホラーはあまり見ていませんが、ハマーの偉大な俳優クリストファー・リーのドラキュラは好きです。
この映画では領主を巧みに演じています。
とにかく映像も音楽も私好みです。
私の好きなシーン
1「ローワンの実家のお菓子屋におかれているケーキがすごく不気味」
2「ハウイーが泊まる宿屋のパブで全員が歌うとても卑猥な唄」
3「夜ハウイーが外に出るといたるところでセックスしている男女」
4「宿屋の娘がハウイーを誘惑するために壁を叩いて歌って踊る全裸の芸術的ダンス、素晴らしいの一言」
5「五月祭りの飾り付け(メイポール)で歌って踊る男の子たち」
6「教室で先生の質問に全員で男根と答える少女達」
7「ストーンヘンジで全裸で歌いながら聖なる火を飛び越える少女達」
ウィカーマン6
8「五月祭の仮装—少女に突進する人馬、動物のかぶり物、魚のかぶり物、女装、道化師、6人の騎士など」
9「火を放たれるウィッカーマン」
つまりほとんどすべてです。
見たくなるでしょう。
ウィカーマン3
長い間日本では公開されませんでした。
宿の娘ウィローのパフォーマンスを見るだけでも価値がある映画です。

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映画の話 その37(悪魔のいけにえ)

68バスデウォ
ホラーの巨匠、トビー・フーパー監督のデビュー作「悪魔のいけにえ」です。
なんと4000万円で作った作品です。
その後のホラー映画に多大なる影響を与えました。
いけにえ4
ナレーションで始まります。
真っ暗ななかフラッシュで腐乱死体が映ります。
バックは死体を切り刻む音です。
明るくなるとバラバラの腐乱死体を繋ぎあわせた死体のモニュメントとが現れます。
墓荒らしが頻発しているテキサス州に5人の男女が帰郷がてら、墓の無事を確かめるために訪れました。
途中ヒッチハイカーがあらわれます。
見るからに様子がおかしく、いきなりナイフで自分の手のひらを切り始め今度は仲間の手を切りつけます。
驚いた彼らはその男を追い払って逃げ出し、ガソリンスタンドへ行きますが夜か翌日にならないとガソリンがこないと言われます。
いけにえ6
みんなで仲間が昔住んでいた廃墟に行きます。
仲間の1人が隣の家を見つけて中に入ります。
すると大男にいきなりハンマーで殴り殺されます。
一緒にいた女も虐殺されます。
2人を捜しにきた友人も殺されます。
いけにえ5
夜になり残った2人(サリーと弟)も隣の家へ探しに行く途中で、人の皮で作ったマスクをかぶったレザーフェイスにチェーンソーで刻まれます。
なんとか逃げたサリーがガソリンスタンドに駆け込みます。
店主に助けを求めますが、逆に拉致されます。
目が覚めると、目の前にいたのはチェーンソーのレザーフェイス、ガソリンスタンドの店主、そしてヒッチハイカーの三人でした。
そしてミイラの様な祖父もいます。
いけにえ1
絶体絶命かと思われたサリーでしたが、隙を見て脱出します。
しかしチェーンソーを持ってレザーフェイスとヒッチハイカーが追ってきます。
ついに道路に出てトラックの運転手に助けられます。
ヒッチハイカーはトラックにひかれます。
トラックの荷台でサリーは狂喜の悲鳴を上げます。
そして逃げられたレザーフェイスは夕日に照れされ、狂ったように、チェーンソーを振り回し踊るのでした。
いけにえ2
初めて見た時は恐ろしいホラー映画と言う印象でしたが改めて見てみると色々なことが解りました。
まず、いけにえになる若者達はとてもいい人達である。
セックスやレイプなどは全くない。
血みどろにならない。
音楽で驚かさない、などその後のホラーの定番になるシーンなどがありません。
映像では捕まったサリーの眼球の超アップなどで恐怖を表しているところが面白いです。
特筆するのはラストの夕日をバックにチェーンソーを振り回して踊るレザーフェイスとトラックの荷台で血みどろの顔で狂喜の笑いを見せるサリー(こちらのほうが怖い)の対比が素晴らしい効果をだしています。
いけにえ3
そして何より素晴らしいのはレザーフェイス一家です。

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映画の話 その36(ラストタンゴインパリ)

67クンティボジョ
ベルナルド・ベルトルッチ30歳の作品です。
良い映画はオープニングが素晴らしい。
ラストタンゴインパリはフランシス・ベーコンのデフォルメされた不気味な絵画が写され、ガトー・バルビエリのサックスが静かに流れる素敵なオープニングです。
編曲はオリバー・ネルソンで良い仕上がりです。
オリバー・ネルソンはギル・エヴァンスとともに大好きな編曲者です。
ラストタンゴ2
中年のポール(マーロン・ブランド)はアメリカ人でパリの安宿に泊まり、そこで管理人をしていた経営者の娘と結婚し、二人で管理人をして暮らしていました。
しかし理由は解りませんが妻が昨日、自殺をしました。
悲しみの中、パリの町をさまよっているポール。
ポールは部屋を探していた若い娘ジャンヌ(マリア・シュナイダー)と古いアパルトマンで出会います。
二人はそこでオスとメスの関係になります。
ラストタンゴ5
帰り際、どっちが部屋を借りるのか相談しポールが借りることになります。
ポールはこの娘が部屋を訪ねてくることを確信します(彼女は部屋のスペアーキーを持っています)。
やはり娘は来ました。
二人はいつ果てることのない行為に没頭します。
ポールはルールを作ります。
ここでは名前も過去も未来も聞かない、喋らない、ただのオスとメスになってセックスをするだけ。
ラストタンゴ4
ポールは自宅のアパートに帰ると妻の遺体がベッドにありました。
ポールは妻に謝罪し、さめざめと泣きます。
僕も死にたい、しかし方法が解らないと。
ジャンヌには恋人がいます。
二人は結婚を決めました。
ポールはアパートを引き払うことにします。
引き払ったアパートにジャンヌが来て驚き、何とかポールの情報を得ようとしますが何も解らず、泣きじゃくります。
ポールもジャンヌに会いたくなりアパートを見張っていると彼女が出てきます。
外で会うのは初めてです。
ラストタンゴ3
ポールはジャンヌに自分の過去をべらべら喋りだします。
二人はダンスホールへ行きます。
そこではタンゴの大会が行われていました。
テーブルで酔っぱらう二人、ポールは二人で暮らそうと言い出しますが、すでにジャンヌの気持ちはどんどんポールから離れて行きます。
ミステリアスで魅力的な中年ポールは今ではただの酔っぱらいのしつこい中年です。
しこたま酔った二人はタンゴ大会の中に入り、勝手に踊りますが追い出されます。
もう一緒にいたくないジャンヌは一生懸命逃げますが、ポールは執拗に追いかけてきます。
バックではテーマをガトー・バルビエリがブロウします。
最高です。
最後にジャンヌは母と住むアパートに逃げ込みますが、ポールは部屋に入ってきます。
君の名前を教えて欲しいとジャンヌに迫ります。
ジャンヌは恐怖で父親の形見のピストルでポールを撃ちます。
ポールはベランダに出て絶命します。
死ぬ前にベランダの手すりの下に食べかけのガムを押し付けて。
ラストタンゴ
とても良い映画でした。
マーロン・ブランドの演技力は最高ですが、私には加賀まりこと風吹ジュンを合わせたようなマリア・シュナイダーがとても可愛いのです。
とてもけなげに演技しています。
ベルナルド・ベルトルッチの才能とガトー・バルビエリのBlowに乾杯です。

8-2ウィジョヨクスモの花

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