映画の話 その27(ハロルドとモード)

64セト
アメリカンニューシネマの作品の一つ「ハロルドとモード」です。
アメリカではカルト的人気を誇る作品といわれています。
監督のハル・アシュビーについてはデビュー作品の「真夜中の青春」の音楽を敬愛するアル・クーパーが担当したことぐらいしか知りませんでしたが,主演のバッド・コートについては「マッシュ」「いちご白書」,好きだった「バード・シット」など続けて観ています。
ハロルドとモード.2
オープニングは歴史のある大邸宅で部屋から部屋へ歩き回るハロルド(バッド・コート)の足下を撮り続けます。
そして台の上に乗り、台をけとばします。
前身が写ります。
首つり自殺です。
ここで観客は驚きます。
そこへ母親が入ってきて一瞥します。
何も無かったように友人に電話します。
観客はまた驚きます。
日常茶飯事のように夕食の時間を告げ、退室します。
ハロルドの趣味の模擬自殺です。
この他、部屋を血だらけにして自殺したり、焼身自殺したり色々楽しませてくれます。
母親はうんざりしています。
ハロルドのもう一つの趣味は他人の葬儀に出る事です。
ハロルドのマイカーは霊柩車です。
母親にプレゼントされたジャガーEタイプを霊柩車に改造してしまいます。
他人の葬儀に出席している時にモード(ルース・ゴードン)に出会います。
モードも他人の葬儀に出るのが趣味で年齢は79歳、ハロルドより60歳年上です。
モードはアウシュビッツ収容所の生き残りでとても活動的でハロルドとは正反対です。
ハロルドとモード
二人はお互いに惹かれあい、デートを重ねます。
この二人のデートシーンがとても美しく見所です。
モードはハロルドに人生の生き方を何気なく教えます。
ある日二人は結ばれます。
有頂天のハロルドがモード80歳の誕生祝いをおこないます。
ハロルドとモード.3
そこで意外な言葉がモードから発せられます。
なんと自殺をするために薬を飲んだというのです。
モードは80歳で死ぬ事を決めていました。
意識がなくなるモード。
病院へ搬送するが亡くなりました。
絶望のハロルドは霊柩車を運転し、絶壁から落ちます。
車は大破しますがハロルドは直前に脱出し、崖の上でモードにもらったバンジョーを弾いていました。
彼は生きてゆく事を決断しました。
この映画はハロルドとモードの青春映画です。
ルース・ゴードンの演技が光ります。

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映画の話 その26(昼顔)

63マツウォパティ
この映画はロードショーで見ました。
特にカトリーヌ・ドヌーヴのファンではありませんでしたが、かなりの話題作で「昼は娼婦、夜は貞女」の様なキャッチフレーズが付いていた様な気がします。
昼顔1
覚えていることは、カトリーヌ・ドヌーヴ(セヴリーヌ)はフルヌードにならない、マルセルと言う犯罪者の仕込み杖は怖い、変な東洋人が客で来る、頻繁に馬車と鈴の音が出てくる、位でした。
今回見直すと色々なことが解りました。
ブニュエルのカラーでブニュエルのカメラでした。
ドヌーヴのファッションはイブ・サンローランでとてもシックです。
時々アップになる靴はシャルル・ジョルダンでしょうか。
頻繁に出てくる馬車と鈴の音はセヴリーヌが夢想する非現実世界に入る時に出てくることが解りました。
この映画はドヌーヴなしでは成り立ちません。
昼顔3
それほドヌーヴの演技力がすごく、はまり役だからです。
なんと前回お話ししたロマン・ポランスキーの「反撥」に主演した時は22歳です。
「昼顔」は24歳ですよ。
その年でこの演技ですから驚きです。
しかし彼女の私生活を知ると少し理解出来ます。
17歳の時には33歳のロジェ・バディム監督と同棲、19歳でシングルマザーとなり、ロジェ・バディムがジェーン・フォンダと親しくなると英国人写真家デビッド・ベイリーと結婚、その後マルチェロ・マストロヤンニとの間に娘をもうけています。
この映画の素晴らしいところは音楽がないことです。
馬車の蹄の音と鈴の音だけです。
やくざのマルセルがスペインの歌を歌うところがありますが。
確かにこのブニュエルの映画には音楽は必要ない様な気がします。
昼顔2
とても特徴的なカットがあります。
セヴリーヌの生足に絡まる犯罪者の穴の開いた汚い靴下です。
素晴らしいシーンです。
また解らない点が2つあります。
1つは謎の東洋人が持っていた箱の中身です。動物や昆虫の様な生き物なのか、何かの道具なのか解りません。
もう1つは貴族の館で何があったのでしょうか。
柩の下で何があったのでしょうか、どうしてセヴリーヌは追い出されたのでしょうか。
ドヌーヴはその後、沢山の映画に出演しています。
私はほとんど見ていません。
ブニュエルの「哀しみのトリスターナ」とラース・フォン・トリアーの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」位です。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」はとても重い映画でドヌーヴによって救われました。
初めは浮いてしまうのではと思いましたが、やはりドヌーヴは素晴らしい女優だと思いました。

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映画の話 その25(去年マリエンバートで)

61カピ・メンド
友人の家に遊びに行った時、部屋の壁に「去年マリエンバートで」のポスターが貼られていました。
友人にどんな映画と聞いても兄が貼ったのでよく知らないがアラン・ロブ=グリエのシナリオでとても難解な映画だと言っていました。
マリエンバートで
上半分にはカラスの羽に覆われた美しい女の人、下半分には不思議な庭園を男女が歩いているポスターは私を虜にしました。
マリエンバートとはチェコの有名な温泉保養地でゲーテ、ショパン、カフカ等が訪れていることがわかりました。
それからだいぶ経って荻窪か吉祥寺のほうで自主上映をしていたので見に行きました。
マリエンバートで2
オルガンと低いナレーション、暗い画面で寝てしまいました。
その後名画座でもう一度チャレンジです。
あらすじは主人公の男Xは、女Aと再会する。Xは去年マリエンバートで会ったと語りかけるのだが、Aは記憶していない。
しかし、AはXの話を聞く内に、おぼろげな記憶を取り戻していく。
Aの夫であるMは、「去年マリエンバートで」実際に何が起こったのか知っている。
というのがストーリーですが、現在、Xの回想、Aの回想、過去がばらばらにしかも緻密につなぎあわせて,脚本にしたそうです。
この映画はナレーションとマリー=ルイズ・ジローの弾くオルガンだけで成り立っています。
これが素晴らしい効果を出しています(初回は寝てしまいましたが)。
カメラはマルグリットが描いたような庭園と重厚な古城のホテルを執拗に写します。
長い廊下、天井、シャンデリア、鏡、家具をなめ回すように写します。
マリエンバートで3
パースペクティブを利用した素晴らしい庭園、私はこの庭園が主人公のように思えました。
この庭園の中で踊らされている男女。
シンメトリーな庭園、この庭園の中でもてあそばされている男女。
男XもMも余り魅力がないが、女Aのデルフィーヌ・セイリグはとても魅力的でシャネルのドレスがとても良く似合います。
マリエンバート4
この映画はマリー=ルイズ・ジローの弾くオルガン、古城と庭園、美しいモノトーンで成り立っている不思議な映画です。

静かな部屋で足音は
厚い絨毯に吸い取られ
歩く当人でさえも
何も聞こえない


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映画の話 その24(突然炎のごとく)

60ジュムバワン
今回はフランソワ・トリュフォー監督の「突然炎のごとく」です。
このタイトルを聞くと友人の姉を思い出します。
大学時代親しくなった友人は地方から出てきて姉と二人暮らしでした。
彼の姉はとても魅力的な人で部屋には大きな作り付けの本棚があり、沢山の蔵書がありました。
ある日訪れると友人は留守で、姉と本の話をしました。
ロレンス・ダレルの「アレキサンドリアカルテット」の話で盛り上がり、アンリ=ピエール・ロシェの「ジュールとジム」、ボリス・ヴィアンの「日々の泡」をぜひ読むように教えてくれ、わたしはジョン・ファウルズの「魔術師」を薦めました。
特にロシェの「ジュールとジム 突然炎のごとく」は映画にもなっているので機会があったら絶対見るようにと薦めてくれました。
彼女はジャンヌ・モローの大ファンで映画の様な水兵さんの格好で外出するのを見たことがあります。
だいぶたってから何処かの名画座でトリュフォー特集をしていたので見ました。
突然炎のごとく1
ジュールとジムはモンパルナスで知り合い親友になります。
あるとき幻灯でアドリア海の島の写真に映った女の顔の彫像に魅了され、アドリア海まで行きます。
あるとき二人はアドリア海の彫像にそっくりなカトリーヌに出会い、二人とも恋に落ちます。
カトリーヌは自由奔放な女性で、男装して町に出たり、二人がかまってくれないと、セーヌ川に飛び込んだりします。
このときの3人のシーンがとても素敵で、この映画のハイライトです。
突然炎のごとく2
やがて戦争が始まりオーストリア人のジュールとフランス人のジムはそれぞれ祖国の軍人として参加します。
その後ジュールはカトリーヌと結婚し6歳の女の子の父親になります。
ジムはジュールの住むライン川の山小屋を訪れ、二人の結婚生活が上手く行ってないことを知ります。
ジュールはジムにカトリーヌと結婚して自分もそばにおいてくれと頼みます。
そうして3人の奇妙な共同生活が始まりますが、すぐカトリーヌにギター弾きの愛人がいることがわかり、ジムはパリに帰ります。
突然炎のごとく3
数ヶ月後、映画館で偶然再会した三人はカフェにジュールを残しカトリーヌの車にジムを乗せてドライブします。
そして取り残されたジュールの目の前で車は壊れた橋から転落します。
ジュールは2つの棺を火葬場に運ばせ、2人の遺灰を混ぜて埋葬するのでした。
この映画はジャンヌ・モローがすべてです。彼女の魅力で成り立っています。
シャンソン「つむじ風」を歌うシーンも素敵です。 
名監督フランソワ・トリュフォーによるジャンヌ・モローのプロモーション映画です。
そして舞台は1920〜30年のパリ。文句のつけようがありません。
素敵な友達のお姉さんはどうしているかな。

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映画の話 その23(2001年宇宙の旅)

58マエソスロ
当時「2001年見た?」というのが挨拶代わりになっていました。
劇場はテアトル東京で70mmでした。
初めて経験する本格的宇宙映画です。
2001-2.jpg
開演のブザーとともに館内は暗くなりドキドキワクワクします。
スクリーンは真っ暗ですが少し音声は聞こえます。
そして「ツァラトゥストラはかく語りき」が始まり、スクリーンは太陽と木星と惑星が一直線に並んで日食状態から太陽が現れます。
2001.jpg
もうすでに気分はマックスに達します。
次のシーンはまだ人類が猿人だったころの荒野です。ここに主人公たるモノリスが立っています。
不思議そうに集まる猿人、その中の一匹(1人)がモノリスの影響で動物の骨を武器として使います。
勝ち誇った猿人がその骨を空に向かって投げるとなんとその骨は宇宙船になってしまう名場面です。
2001-5.jpeg
そして宇宙船は月に調査に向かっているのです。
見たこともない特殊撮影です。
目的は月にあるモノリスです。
調査中にモノリスは木星に信号を発し知的生物体が月に到着したことを知らせます。
ここまでがプロローグの様なものです。
ここからが主題の木星探査です。
謎の信号を調査するため、デイビッド・ボウマン、フランク・プールら五名(残りの三名は出発前から人工冬眠中)が宇宙船ディスカバリー号に乗り組み木星へ向かいます。
すべてを管理しているのがHAL9000というスーパーコンピューターです。
HALが反乱を起こします。
HALの異常を感じたボウマンとプールはHALの電源回路を切断しようとします。
その事を感知したHALはプールを殺害します。
また人工冬眠中の3人も殺害します。ボウマンは何とかHALの電源回路を切断します。
HALは木星探査の任務と乗組員には報告していない密かに与えられたモノリス探査の任務の矛盾で異常を来したと言うことです。
ボウマンはフロイド博士のビデオメッセージにより、月面のモノリスの存在と木星探査の真の目的を知りました。
ボウマン船長は船外活動ポッドに乗り込み木星の軌道上で発見したモノリスを調査に行きます。
そのとき光の渦(スターゲート)の中に引き込まれてしまいます。
このスターゲートがとてもサイケデリックで評判でした。
次のシーンは真っ白い部屋に船外活動ポッドごと現れます。
ボウマンはどんどん歳を取っていき、最後は臨終寸前のボウマンが真っ白い部屋のベッドに横たわっています。
そこにモノリスがあらわれ、ボウマンは胎児になり宇宙を漂います。
2001-4.jpeg
おそらくインドの「リグ・ヴェーダ」で言う「黄金の胎児ーヒラニヤガルバ」でしょう。
太初に現れ万有の唯一なる主宰者となり世界を創造する胎児です。
そこでエンドクレジットです。
アーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックの作ったこのSF映画は時代が経っても不滅です。

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