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寺院の彫刻 その55(シヴァ5 ナタラージャ3)

PANATA103 2
ナタラージャの彫刻は東南アジアでも見ることができます。
カンボジアの至宝と言われるバンティアイ・スレイ寺院(967年)には素晴らしいナタラージャの彫刻があります。
東第一塔門の破風には10腕の威厳のあるシヴァ、右下にはカーライッカル・アンマイヤール、左下には打楽器を叩く人が厚肉堀りで彫刻されています。
インド本国に勝るとも劣らない傑作です。
1SREI025
バコン寺院(881年)の破風にも彫刻されていますが、創建当時のものではなく、のちに彫られたものです。
残念ながら保存状態が良くなく特に下半身は分かりません。
2BAKON124
プノンペンの南50kmにあるプノム・チソール寺院(11世紀)の破風にもナタラージャの彫刻がありますが、やはり保存状態が良くありません。
しかしカーライッカル・アンマイヤールはわかります。
3CHISSOR049
バンティアイ・サムレ寺院(12世紀)には寺院内部にあるために比較的保存状態の良いナタラージャがあります。
カーラの上で踊り、従者は破壊されてわかりませんが、左右のシンハはわかります。
4SAMURE198
同じような構図のナタラージャがプリア・ピトゥ寺院(12世紀)にあります。
5PITHU041
バッタンバンの博物館にもありました。
6BATTAMBANG博物館
東北タイのクメール寺院でも好まれ、ピマイ寺院(11~12世紀)の破風に彫刻されています。
10腕で頭には宝冠をかぶり、足元には従者を従えています。
一番左にはあばらが浮き出たカーライッカル・アンマイヤールがいます。
7PHIMAI023
パノム・ルン寺院(12世紀)の破風のナタラージャは素晴らしい出来です。
10腕で足元に従者を従えています。
カーライッカル・アンマイヤールやガネーシャもいます。
ピマイ寺院と構図は似ていますが宝冠や顔立ちが違います。
8RUNG077
もう一つ印象的なのがサコンナコンにあるNARAI JAENG WAENG寺院(11世紀)の破風にあります。
他の像とは異なり12腕でガネーシャを伴う従者を連れています。
面白いのは上部の左右に木に登るリスが彫られていることです。
9WAENG010
ベトナムのチャンパ遺跡でも見つかります。
聖地ミソン(7~13世紀)の博物館にナタラージャの破風が2つ展示されています。
1つは8腕で左右に従者が捧げ物(蓮華?)をしています。
蓮の上で踊っており、足元の左右にはマカラが彫刻されています。
奇妙なのはシヴァの胸にトカゲのような動物が彫刻されていることです。
シヴァの妻の一人チャームンダーにはサソリが彫刻されていますが、トカゲは初めて見ます。
10ミソン025
もう1つは残念ながら上部が崩壊してわかりませんが下部はよく残っています。
従者の楽団に合わせて踊るカーライッカル・アンマイヤール、ナンディなどで、右側の人物はよくわかりません。
11ミソン038
寺院ではポーン・クロン・ガライ寺院(13~14世紀)の破風に彫刻されています。
6腕で宝冠やアクセサリーの彫刻が細かく美しいです。
12ガライ011
ダナンにあるチャム彫刻博物館にも数点あります。16腕、10腕、4腕などバライティーに飛んでいます。
13cham.jpg
14cham.jpg
インドシナ半島においては好まれて作られましたが、インドネシアでは見つからず、やっと博物館で一点だけ見つけました。
東ジャワのSINGOSARI寺院で見つかった像です。
バイラヴァとしてのシヴァです。
15singo.jpg
ヴィシュヌ派よりも圧倒的にシヴァ派の寺院が多いインドネシアで意外でした。
シヴァの立像や坐像は沢山あるのですがナタラージャ像はほとんどありませんでした。
余談ですがシヴァの妃であるドゥルガー女神の「水牛の悪魔を退治するドゥルガー」の彫像が東南アジアで一番沢山見つかっているのはインドネシアです。
ナタラージャ像は東南アジアでとても好まれたようです。

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寺院の彫刻 その54(シヴァ4 ナタラージャ2)

PANATA102.jpg
今回は石積寺院に彫刻されているナタラージャを見ていきます。
シヴァ派の寺院ではシカラの正面のメダリオンにナタラージャが彫刻されています。
壁龕などの彫刻はやはり南インドに集中しています。
アランプール近郊のSANGAMESHWARA寺院はチャールキア朝で最も早い6世紀中頃の建立で素晴らしい彫刻が沢山あります。
ナタラージャは恐らく18腕で下部にはミュージシャンが彫刻され、カーライッカルアンマイヤールも確認できます。
1sangameshwara
  SANGAMESHWARA寺院 6世紀中頃 
  同じ時期のバーダーミの石窟に勝るとも劣らない
  18腕の欠損が惜しまれる
  足の間から顔を出すカーライッカル・アンマイヤールの
  スタイルはこの時には出来ている
  

  








この像によく似た像がアランプールのSVARGA BRAHMA寺院にあります。
7世紀の建立で、窓のパネルに彫刻されています。
16腕で下部にはナンディ、ガネーシャ、ミュージシャン、カーライッカル・アンマイヤールなどが彫られています。
2SVARGA BRAHMAA
  SVARGA BRAHMA寺院 7世紀
  この像も保存状態の悪さが惜しまれる。
  足下の取り巻き連中が素晴らしい












アランプールの博物館にも11〜12世紀のナタラージャが展示されています。
4腕です。
3alampur博物館
  アランプール博物館 11〜12世紀
  














パッタダカルの寺院群(8世紀)にも見つかります。
KASHIVISHVANATHA寺院の内部の柱に彫刻されています。
6腕みたいです。
4KASHIVISHVANATHA
  KASHIVISHVANATHA寺院 8世紀
  この寺院の柱にはシヴァやヴィシュヌの
  素晴らしい彫刻パネルがある
  







JAMBULINGA寺院のシカラにあるメダリオンはナンディとパールヴァティーが彫られています。
5JAMBULINGA
  JAMBULINGA寺院 8世紀
  北型のシカラにメダリオン
  8腕で女神とナンディ
  上部にはガンダルヴァ、下部にはナーガ












MALLIKARJUNA寺院の壁龕のナタラージャは8腕で上部の楣にはシヴァとパールヴァティーが彫刻されています。
6MALLIKARJUNA
  MALLIKARJUNA寺院 8世紀
  上部には座すシヴァとパールヴァティーと
  ナンディ、左右にはマカラが掘られているが
  未完成












PAPANATHA寺院の天井には4腕でパールヴァティーを伴った素晴らしいナタラージャが彫刻されています。
7PAPANATHA
  PAPANATHA寺院 8世紀
  矮人の上で踊るシヴァ
  ハスの上にパールヴァティー
  ナンディ
  足下にミュージシャン





VIRUPAKSHA寺院の壁龕のナタラージャは4腕で矮人を踏みつけています。
頭髪のドクロを始めアクセサリーなどの彫刻がとても細かく綺麗です。
上部にはアプサラとガンダルヴァが彫刻されています。
8VIRUPAKSHA.jpg
  VIRUPAKSHA寺院  8世紀
  アクセサリーが素晴らしい
  ナンディの杖を持っている
  上部のアプサラとガンダルヴァの動きが良い










東インドのブヴァネーシュヴァルにある7世紀初めのSATRUGHNESHWAR寺院は最初期の寺院で保存状態は良くありませんが、壁龕に素晴らしいナタラージャがあります。
恐らく性器が勃起していたと思われます(初期のシヴァ像は勃起例が多い)。
下部に孔雀に乗るスカンダ、ナンデイが彫刻されています。
9SATRG012
  SATRUGHNESHWAR寺院 7世紀初め
  右下にナンディ
  左下に孔雀に乗るスカンダ












8世紀のVAITAL DEUL寺院は特殊な屋根の形をしています。
シカラ正面のメダリオンには12腕のナタラージャが彫刻されていますが性器が勃起しています。
独特の素晴らしい彫刻です。
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  VAITAL DEUL寺院 8世紀
  顔の表情が素晴らしい
  右手にはヘビ、足下にナンディ
  左手で女性の顎を撫でている(?)






ブバネーシュヴァルの寺院のシカラに掘られたメダリオンはどれも素晴らしい出来です。
ピンクの美しい砂岩 のMUKTESHWAR寺院(10世紀)のシカラにもメダリオンではありませんがナタラージャが掘られています。
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  MUKTESHWAR寺院 10世紀
  シカラの中央にガンディのボーと呼ばれる彫刻
  その上に龕を作りナタラージャの彫刻












南インドのホイサラー寺院では、必ずと言って良いほど見かけます。
HALEBID のHOYSALESHWARA寺院ではカーライッカル・アンマイヤールと楽団を引き連れた12腕のシヴァと矮人の上で踊る12腕のシヴァが見られます。
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  HOYSALESHWARA寺院 12世紀
  ホイサラー独特の衣裳
  ミュージシャン達が良い













南インドのカンチープラムのKAILASANATHA寺院の壁龕です。
しゃがんだシヴァのナタラージャです。
10腕です。
13KAILASANATHA2
  KAILASANATHA寺院 8世紀初め
  いわゆるタイプEと言われるナタラージャ














同じ形のナタラージャがパッタダカルのVIRUPAKSHA寺院にあります。
保存状態は良くありませんが10腕でそっくりです。
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  VIRUPAKSHA寺院 733〜746年
  タイプEのナタラージャ














タミルナードでの必見はCIDAMBARAMのその名もNATARAJA 寺院です。
12〜13世紀の寺院で参拝客がひっきりなしに訪れる大寺院です。
ここにはシヴァの踊りの108のポーズ全てが壁面に彫刻され、この寺院は舞踊家の聖地です。
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  NATARAJA 寺院 12〜13世紀
  南インド独特の巨大なゴープラム
  ゴープラムの壁面にダンスのポーズ














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  NATARAJA 寺院 12〜13世紀
  108の小さなパネルにポーズが
  彫刻されている。













GANGAIKONDACOLAPURAMのBRIHADISHVARA寺院の壁龕には矮人の上で踊る4腕のシヴァの足元に三本足のブルンギ、さらに基壇にミュージシャンとカーライッカル・アンマイヤールが彫刻されています。
17GANGAIKONDACOLAPURAM2
  BRIHADISHVARA寺院 1025年
  このパネルには全て揃っている
  足下は矮人、左に三本足のブルンギ
  右にドゥルガー女神
  基壇にカーライッカル・アンマイヤールと
  ミュージシャン









次回は東南アジアのナタラージャを調べます。

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寺院の彫刻 その53(シヴァ3 ナタラージャ)

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シヴァ神を表すリンガとともに有名なシヴァ神の形態(ムルティ)はナタラージャと呼ばれるダンスのポーズです。
それゆえ舞踊王とも呼ばれ、その踊りは9つの型に分類され108のポーズがあります。
いずれも宇宙の創造、維持、破壊、幻惑、開放などを表していると言われます。
ナタラージャは寺院に彫刻されていますが、南インドでは12世紀頃から、ブロンズ像として沢山作られました。
1ナタラージャ12世紀
『あるときシヴァ神は、彼に敵対する宗派の集会を訪れた。
そこに集まった1万人聖仙に真の信仰を説こうとしたのである。
ところが彼らは呪文によってシヴァ神を苦しめようとした。
しかしシヴァ神に呪文は何の効き目もなかったので、聖仙達は獰猛なトラを出現させて襲いかからせた。
シヴァ神は微笑みながら小指の爪でトラの生皮を剥ぎ、身体にまとった。
怒った聖仙達は猛毒を持つ大蛇を出現させた。
シヴァ神はこれに対しても驚かずその大蛇を首にかけた。
聖仙達は今度は全身が真っ黒な小人の悪魔を出現させた。
小人の悪魔は棍棒を手に襲いかかったが、シヴァ神は小人を踏みつけるように踊り始めた。
聖仙達は無言のまま舞踏を見つめていたが次第に引き込まれ、霊妙なリズムが聖仙の心に波動となって響き渡り、眼も眩むほど見せられたのである。
すると突然天界が開けてそこから神々がシヴァ神の舞踏を見つめているのが見えた。
聖仙達はシヴァ神こそ真実の信仰を伝えるものと悟った。
そして、彼の足下にひれ伏して心の底から礼拝したのである』という話です。
PB030661.jpg
古代社会において、舞踏は宗教儀式と結びついた大変重要な行為です。
狂躁、陶酔、エクスタシーを伴う再生、創造を象徴する宗教儀式です。
シヴァ神が舞踏王とされるのは、彼自身がそうした狂躁行為を通じて宇宙を破壊し、さらには再生に導くという役割を担っていたからです。
ナタラージャ像における、腕の数は一定していません。4、8、10、16、18など様々です。
足元は矮人(小人の悪魔)を踏みつけています。
一般に足下には音楽隊や従者を引き連れています。
その中に特徴的なカーライッカル・アンマイヤール、三本足のブルンギもいます。
カーライッカル・アンマイヤールは狂信的なシヴァ信者です。
元は大変美しい女性でしたが、修行の邪魔になるので神に祈り、ガイコツのような容姿にしてもらいました。
ブルンギも狂信的なシヴァ信者です。
それでは石窟寺院におけるナタラージャの彫刻から見ていきます。
南インドのバーダーミの石窟は第4窟まであります。
バーダーミ第1窟(6世紀後半)はシヴァ神に捧げられた窟で入り口に素晴らしいナタラージャの彫刻があります。
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18腕ですごい迫力です。
多腕に不自然さはなく、足元にナンディとガネーシャ、打楽器奏者を従えています。
同じ南インドのアイホーレにあるラーヴァナパディ(6世紀後半)には細身のナタラージャが彫刻されています。10腕で蛇の使い方がとても上手です。足元にはガネーシャとスカンダが彫刻されています。写真には写っていませんが、スカンダの隣にはパールヴァティーが彫刻されています。
RAVANAPADI.jpg
7世紀前半のエローラの石窟にはたくさんのナタラージャの彫刻があります。
エローラ14窟のナタラージャは8腕で腰に巻いた蛇が印象的です。
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ミュージシャンと子供の手をひく女神が彫刻されています。
エローラ15窟のナタラージャは暗くてよく解りませんが8腕で伸び伸びした像です。
足下にはミュージシャン達がいます。
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エローラ16窟カイラーサナータ寺院のナタラージャは8腕で優しい感じがします。
残念なことに右足は失われています。
足下にはミュージシャン達です。
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エローラ21窟のナタラージャも暗くてよく見えませんが8腕で女性のような顔つきと身体で光背があります。
上部には神々が下部にはミュージシャンが描かれています。
股の間からカーライッカル・アンマイヤールがのぞいています。
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エローラ29窟のナタラージャはあまり良い出来ではありません。
ミュージシャンは上部に、そして神々が囲んでいます。
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開窟時期がはっきりしない(6〜8世紀)エレファンタ島の石窟にも素晴らしいナタラージャがあります。
8腕で腰から下は崩壊しています。
周囲をガネーシャやブラフマー神など沢山の神々に囲まれています。
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同じくボンベイ近郊のMANDAPESVAR石窟にもナタラージャの大パネルがあります。
6世紀と言われ、エレファンタと同じような構図です。
8腕で同じように神々に囲まれています。
下部にはミュージシャンが彫られ、カーライッカル・アンマイヤールも見つかります。
MANDAPESVAR.jpg
彫刻ではありませんが同時期の彫像があります。
表情もスタイルもよく似ています。
足下にはナンディとミュージシャン、足の間にはダンサーも見えます。
素晴らしい彫像です。
シヴァグプタ
これら石窟寺院の彫刻は6世紀から8世紀のもので、とても迫力があり、おおらかです。
次回は寺院の彫刻を見たいと思います。

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寺院の彫刻 その52(シヴァ2 リンゴードゥバヴァ)

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今回はリンガから現れるシヴァ(リンゴードゥバヴァ)です。
この神話は『宇宙の消滅後,ヴィシュヌ神が混沌の海を漂っていると(アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ)、光が現れブラフマー神が姿を現した。ブラフマー神はヴィシュヌ神を見つけると,自分より先に存在している者がいることに驚いた。
「私はあらゆるものの根源である創造者ブラフマーである。貴方は一体何者か」「私こそ宇宙の根源、諸々の世界の創造者ヴィシュヌである。貴方こそ何者か」宇宙の創造者を自認する二人は譲らず激しい口論になった。
そのとき二人の目前に大閃光を発しながら巨大なリンガが出現した。
               (ロサンジェルス美術館)
12世紀初めロサンジェルス美術館
その根は水中深く没し、頂は天空高くそびえている。
驚いた二人は口論をやめ、このリンガの果てを見てきたものを創造者と認めることを約束した。
ブラフマー神は巨大な翼を持つ白鳥に姿を変え、天高く飛翔し1000年もの間、上昇を続けた。
ヴィシュヌ神も山のような大きさの猪に姿を変え1000年間、水中深く潜行を続けた。
                  (ギメ美術館) 
ギメ美術館
ところがどこまで高く飛んでも、どこまで深く潜行しても巨大なリンガの果てを見極めることは出来なかった。
二人の神は元の場所へ戻り、お互いの能力をはるかに超えた存在があることを認めた。
するとどこからともなく、「オーム」という明快な響きが聞こえ,リンガは突如として炎につつまれた。
そしてその中から1000本の手と1000本の足、3つの眼を持つシヴァ神が現れた。
               (サンフランシスコ美術館)
Asian Art Museum of San Francisco
シヴァは「聞くが良い、私達は本来一体であったが、ブラフマーは私の右腰から生じ、ヴィシュヌは左腰から生じたのである。いずれカルパの始まる時にブラフマーはヴィシュヌのヘソから生まれ、私はヴィシュヌが憤怒するとき、その顔から生まれるであろう」と告げるとシヴァは姿を消した。
このとき以来人々はリンガに対する信仰を始めたのである』
               (バーミンガム美術館)
バーミンガム美術館1150年
この話はヴィシュヌ神に対するシヴァ神の優位を表す話なのでヴィシュヌ派の人々は認めません。
シヴァの神話は主に南インドで好まれて彫刻されています。
彫刻としては中央にリンガ、そこから現れるシヴァ、リンガの上部にブラフマーの乗り物である白鳥、下部にはヴィシュヌの化身の野猪ヴァラーハが彫刻されています。
場合によってはリンガの左右にヴィシュヌとブラフマーが彫刻されます。
それでは一番古い南インドALAMPURアランプールのSVARGA BRAHMA寺院から見ていきます。
1SVARGA BRAHMA
  SVARGA BRAHMA TEMPLE 689年
  左右にブラフマーとヴィシュヌ、下部左に白鳥の
  ブラフマーと右に猪のヴィシュヌ、上部左は
  空を飛ぶブラフマー右は剣を持つ女神(大地の女神?)












南インドカンチープラムのKAILASANATHA寺院です。カンチープラムは7〜9世紀にかけて、パッラヴァ朝の首都として栄え、KAILASANATHA寺院は特に重要な寺院です。
2KAILASANATHA.jpg
  KAILASANATHA TEMPLE 8世紀初め
  ラージャシンハ2世が建立
  壁龕中央のリンガの中にフル装備をしたシヴァ、
  左側の小壁龕にブラフマー、 右側の小壁龕に
  ヴィシュヌ、リンガの下部にヴィシュヌの
  化身ヴァラーハ









次はパッタダカルのVIRUPAKSHA TEMPLEです。
3virupaksha.jpg
  VIRUPAKSHA TEMPLE 733〜746年
  ヴィクラマディティヤ2世(733~746)の二人の王妃に
  よって740年に建立された。パッラヴァに勝利した
  戦勝記念としてカンチープラムから連れてこられた
  建築家グンダによって建てられた。 
  従ってカイラーサナータ寺院を模している
  彫刻は細かいが下部の保存状態が良くない。
  リンガ上部に文様。左にブラフマーらしきものが
  彫刻されている。おそらく右下にもヴィシュヌ
  の痕跡がある。 
  壁龕上部には素晴らしいガジャラクシュミーが
  彫刻されている。



西インドのエローラ石窟寺院です。第15窟に素晴らしい彫刻があるのですが、真っ暗で見えません。
4E-CAVE15018 2
  ELLORA CAVE 15 8世紀中頃
  左にブラフマー、右にヴィシュヌ、左上に飛翔する
  ブラフマー、 右下にヴァラーハ、
  暗いので良くわからない。











南インドのTIRUPPATTURにある寺院の一角に8世紀のパッラヴァ朝のKAILASANATHA寺院があります。放置されたままなので保存状態がとても悪く、表面の漆喰が剥がれてボロボロです。
5KAILASANATHA(TIRUPPATTUR).jpg
  KAILASANATHA寺院 8世紀
  中央の壁龕にリンガから現れるシヴァ、
  他の彫刻はわからない 
  左右にはパッラヴァ朝のシンボルの
  シンハ(獅子)の柱が彫刻されている










南インドのパッタダカルにあるKASHIVISHVANATHA寺院です。
6kashivishvanatha.jpg
  KASHIVISHVANATHA寺院 760年
  北方寺院で内部の柱に色々なシヴァの
  彫刻パネルがある。中央にリンガから
  現れるシヴァ、左にブラフマー、右に
  ヴィシュヌ、ヴィシュヌの足下に
  ヴァラーハ、頭上に象に乗る神や
  動物に乗る神、ブラフマーの周りにも
  動物に乗る神々が彫刻されています。
  全員穏やかな顔をしています。


タミルナードのキーライユールKALAIYURのAGASTYESHVARA寺院はチョーラ朝と婚姻関係を結んだパルヴェータライヤル家の建立です。
7AGASTYESHVARA(KALAIYUR).jpg
  AGASTYESHVARA寺院 9世紀後半
  中央にリンガから現れるシヴァ、左にブラフマー、 
  右にヴィシュヌ、上に白鳥、下にイノシシの
  オーソドックスな彫刻です。












タミルナードのプッラマンガイPULLAMANGAIのBRAHMAPURISVARA寺院です。
建築当初の初期チョーラ朝寺院の姿を残しています。
8BRAHMAPURISVARA(PULLAMANGAI).jpg
  BRAHMAPURISVARA寺院10 世紀初め
  中央の装飾されたリンガから現れるシヴァ、
  右にブラフマー、 左にヴィシュヌ、
  上に飛翔するブラフマー、
  下にイノシシの素晴らしい彫刻です。










タミルナードのタンジャブールTANJAVURのBRIHADISHVARA寺院です。
ラージャラージャ1世が建立した本殿が60mを超える大寺院です。
9BRIHADISHVARA(TANJAVUR)2.jpg
  BRIHADISHVARA(RAJARAJESHVARA)寺院 
  1003〜1009年
  巨大な壁龕の中央にリンガから現れるシヴァ、
  左に小さくブラフマー、右に小さくヴィシュヌ、  
  上部に飛翔するブラフマー、下部にヴァラーハ。










ここにはもう一つあります。
9-2BRIHADISHVARA(TANJAVUR).jpg
  BRIHADISHVARA(RAJARAJESHVARA)寺院
  シンプルでリンガから現れるシヴァの左下に
  ひざまずくヴィシュヌ












タミルナードのガンガイコンダチョーラプラムGANGAIKONDACOLAPURAMにはラージャラージャ1世の息子ラージェンドラ1世が建立したBRIHADISHVARA寺院があります。
10GANGAIKONDACOLAPURAM.jpg
  BRIHADISHVARA寺院 1025年
  壁龕には巨大なリンガから現れるシヴァ、左右と
  上部には彫刻がないが下部にヴァラーハのみが
  彫刻されている。











タミルナードのダーラースラムDARASURAMにはラージャラージャ2世の建立したAIRAVATESHVARAがある。
11AIRAVATESHVARA(DARASURAM).jpg
  AIRAVATESHVARA寺院 12世紀後半
  中央に黒い石に彫られたリンガから現れるシヴァ、
  左にブラフマー、右にヴィシュヌ、リンガの上部
  にブラフマー、下部にヴァラーハが彫刻されている。











これらの彫刻はシヴァ神の優位性を表しています。南インドのシヴァ派の寺院でよく見られます。
インドの他の地域、東南アジアではあまり見かけません。

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寺院の彫刻 その51(シヴァ)

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シヴァ神はヴィシュヌ神、ブラフマー神とともに特に重要な神です。
ブラフマー神が宇宙の創造、ヴィシュヌは維持、シヴァは破壊と言われています。
シヴァ神の前身はバラモン教のヴェーダの時代の神「ルドラ神」で暴風雨神です。
自然現象としての暴風雨は家屋、樹木、を破壊して人畜を一瞬にして死に至らしめると同時に暴風雨の後の爽快さ、蘇生、も意味します。
人間の生死、運命だけでなく不老長寿、生殖の神としての面も持っています。
後世のヒンドゥー教の時代になりシヴァ神として、ヴィシュヌ神とともにヒンドゥー教パンテオンで華々しく活躍します。
シヴァ神の住居はヒマラヤ山脈にあるカイラス山で、青白い裸体にトラの皮をまとい、額に第三の眼を持ち、首に蛇を巻き付けています。
延ばし放題の髪を頭上で束ね、身体に牛糞の灰を塗り、持物は三叉戟、太鼓、水瓶です。
1-1シヴァ
ヴィシュヌ神が様々な条件の下で化身と言う方法を用い広がったのに対し、シヴァ神はその地域の土着の神を取り込み発展していきました。
神妃はパールヴァティー、ヴァーハナ(乗り物)は牡牛のナンディ、子供はガネーシャとカルティケーヤ(スカンダ)です。
2シヴァファミリー
シヴァ神はリンガ(男根)で象徴されます。
リンガは下3分の1は四角形(ブラフマー)、中央3分の1は八角形(ヴィシュヌ)、上部3分の1は円形(シヴァ)です。
3リンガ9世紀2
シヴァ派のヒンドゥー教寺院の本尊としてヨーニと呼ばれる女性性器を抽象化した台座とセットで祠堂に祀られています。
リンガの下3分の2はヨーニに埋め込まれています。
3-2DIENG075.jpg
信者はリンガにミルクやギー(バター)をかけ、花や灯明など供物を捧げ願い事をします。
シヴァ神とリンガの結びつきはシヴァが神格化の背景に生類の創造神としての役割をにない、この神格が生殖崇拝と結びついていったと思われます。
寺院に祀られる彫像のリンガの中には上部にシヴァの顔をあらわしたムカリンガと呼ばれるものがあります。
5UDAYA-2006.jpg
ムカリンガの顔は2、4、5個の場合もあります。
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リンガを崇拝する最初期の作品はクシャーン王朝の頃のマトゥラーのブーテーサル出土の塔門横木に彫刻されています。
7リンガ崇拝2
セト・ビクチャンド・カ・ナガル出土の石柱の彫刻も同じ時期です。
8リンガ5世紀
寺院に彫られたシヴァ神の彫刻には勃起した性器を彫刻してある像もみられます。
PARASU019.jpg
面白い神話があります。
「ある時7人の聖仙が集まりブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの中で誰が最も偉大な存在だろうかと話し合い、ブリグ仙が直接会いに行き判断を下すことになった。ブラフマーは崇拝者に囲まれヴェーダと知識の管理者であることにうぬぼれ、ブリグ仙がやってきてもバラモンに対して当然しなければならない挨拶さえしなかった。ブリグ仙は尊大な態度に腹を立て、この神を礼拝するものは誰もいなくなるだろうと呪った。次にシヴァの所へ行くとちょうど妻のパールヴァティーと性行為の真っ最中であつた。ブリグ仙は外で終わるのを待っていたが何百年経っても終わらないのであきれかえりこの神は暗闇の中で性器の形で礼拝されるようになるだろうと言って立ち去った。最後にヴィシュヌの所へ行くと、ヴィシュヌはアナンタ龍の上で眠っていた。やはり何百年経っても目覚めないのでブリグ仙は乱暴にもヴィシュヌの胸を蹴飛ばした。ヴィシュヌは起き上がるとブリグ仙に対し足を怪我しなかったかと尋ねた。その態度に感激したブリグ仙が、ヴィシュヌこそ最も礼拝に値する神であると結論した」と言う話です。
この話はヴィシュヌ派の話ですがヴラフマーの人気が無くなり、シヴァが祠堂の奥でリンガと言う形で礼拝されることを物語っています。
変わったリンガを見てみましょう。
南インドのハンピにある巨大なリンガです。
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南インドのエカンバレーシュヴァラで見たリンガの列、
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カンボジアのクバルスピアンの川の中にある多数のリンガ、
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インドのハンピにも同じリンガがあります。
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ハンピの博物館にある1つのヨニに5つのリンガ、
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ブヴァネーシュウヴァルのムクテーシュヴァルにはリンガ崇拝の彫刻もあります。
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次回から寺院におけるシヴァの彫刻を見ていきます。

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