寺院彫刻 その47(ラクシュミー)

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今回はヴィシュヌの神妃ラクシュミーのお話です。
ラクシュミーはパドマーヴァティー(蓮を持つ女性)、シュリー、吉祥天などとも呼ばれヒンドゥー教のみならず、仏教やジャイナ教など寺院にも彫刻されています。
特に寺院彫刻では2頭の象が女神の左右から水(ガンジスの聖水)を注ぎ祝福をする灌頂「ガジャ・ラクシュミー」の構図が好まれています。
2サンチ−1塔034
幸運と美、富と豊穣を司る女神で4本の腕にはそれぞれ蓮華・アムリタ(甘露、飲む者に不死を与えるとされる)の瓶・ヴィルヴァの実・法螺貝を持ち、水連の上に美しく立っている姿でよく知られています。
ヴィシュヌの側にいるときは2本の腕です。
ラクシュミーは寺院の彫刻17(クールマ)でお話しした神々とアスラの綱引き「乳海撹拌」の神話の中に登場します。
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1000年間攪拌が続き、乳海からはさまざまなものが生じた。太陽、月、白い象アイラーヴァタ、馬ウッチャイヒシュラヴァス、牛スラビー(カーマデーヌ)、宝石カウストゥバ、願いを叶える樹カルパヴリクシャ、聖樹パーリジャータ、アプサラスたち、酒の女神ヴァルニー、女神ラクシュミーらが次々と生まれた。ラクシュミーの美しさにシヴァを始め神々達、アスラ達も妻としてほしいと思ったがヴィシュヌがすぐに妻にしてしまった」と言うお話です。
その後ラクシュミーはヴィシュヌの化身のたびにその配偶者として生まれかわります。
ヴィシュヌが矮人ヴァーマナに化身した時は水から生まれ、ロータスの花に乗って漂い、パラシュラーマに化身した時は大地ダラーニーに、ラーマに化身した時は畑の畝から生まれたシーターに、クリシュナに化身した時には妻のルクミニーに、また牛飼いのラーダーに生まれ変わります。
寺院彫刻では「ガジャラクシュミー」のほか「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」の彫刻では足下で足をさすっています。
16KHAN184
またヴィシュヌと一緒にガルーダに乗っている構図もよく見かけます。
9SIVA-1008
それでは代表的な彫刻を見て行きます。
中央インドのサンチー第1塔の門に彫刻されています。
1サンチ−1塔129
  SANCHI第1塔 紀元前2世紀
  北門(トーラナ)
  サンチー仏塔にはガジャラクシュミーが
  多い
  





現在は何も残っていませんが同じ中央インドに建てられたBHARHUT仏塔の彫刻がカルカッタのインド国立博物館に保存されています。
BHARHUTは紀元前2世紀に建てられ周囲の欄楯に彫刻があります。
3ラクシュミー1バルーフト
  BHARHUT仏塔 紀元前2世紀
  この仏塔の彫刻、特にヤクシー、ジャータカは
  すばらしい
  












同じ時期のサンチーの彫刻にとても良く似ています。
グプタ時代のラクシュミーの彫像がマトゥラーの博物館に保存されています。
とても肉感的な像です。
4ラクシュミーマトゥラー
  マトゥラー博物館
  とても肉感的なラクシュミー
  2世紀のクシャーン王朝からグプタ期までの
  素晴らしい彫刻、彫像が沢山保管されている



















同じグプタ時代の彫刻がディオガルの DASHAVATARA寺院にあります。
5DASHA058
   DASHAVATARA寺院 6世紀
  厚肉彫りで見事な彫刻
  左右の象のポーズか可愛い
  
  









カジュラホのADINATH寺院にはガルーダに乗るラクシュミーの彫刻があります。
6ADINATH005
  ADINATH寺院 11世紀
  2腕で棍棒とチャクラを持っているので
  ラクシュミーと思われる
  単独でガルーダに乗る像は珍しい











エローラの石窟にも左右の門神に守られたガジャラクシュミーが彫刻されています。
6E-CAVE14005
  ELLORA CAVE 14窟 8世紀
  左右に門神、上部に象と天人、足下の蓮池に
  ナーガとナーギー











エローラの16窟カイラーサナータ寺院にも素晴らしいガジャラクシュミーがあります。
7ラクシュミー2エローラ
  ELLORA KAILASANATHA 8世紀
  上部には天人、4頭の象、立体的な
  蓮が素晴らしい








南インドのマハバリープラムにあるヴァラーハマンダパはヴァラーハの彫刻で有名ですがガジャラクシュミーもなかなかの出来です。
ラクシュミーVARAHA002
  VARAHA MANDAPA 7世紀後半
  水瓶を持った女性達が魅力的
  左右非対称の実物大の象もよい








南インドGANGAIKONDACOLAPURAMにあるBRIHADISHVARA寺院には厚肉彫りのガジャラクシュミーが彫刻されています。
10ー12DSC_0054
  BRIHADISHVARA寺院 11世紀中頃
  とても彫りの深い彫刻
  アクセサリーや蓮を持つ手が魅力的












近隣諸国ではスリランカに面白いガジャラクシュミーの彫刻があります。
ポロンナルワの遺跡の中にガルポタと呼ばれる「石の本」があります。
上面には碑文が書かれており、側面にガジャラクシュミーが彫刻されています。
14GALPOT002.jpg
  POLONNARUWA GAL POTA 12世紀
  長さ9m、幅1.5m、重さ25トン
  ニッサンカ・マーラ王が作らせた
  表面にはインド侵略のことや諸国との関係
  王の功績などが彫られている。





ネパールのカトマンドゥにあるチャングナラヤン寺院には素晴らしいガルーダに乗るヴィシュヌとラクシュミーの彫刻があります。
13DSC_0008.jpg
  CHANG NARAYAN寺院 6世紀
  多面多臂のヴィシュヌと2臂のラクシュミー
  ガルーダは6臂、足でナーガを捕まえている












ラクシュミーはヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教など宗教に関係なく用いられる吉祥のモチーフです。
インドでは10月から11月の新月の夜に「ディワーリーDIWARI」というお祭りが全土で行われます。
主役はラクシュミーです。
Diwali_Festival.jpg
夕方から人々は家や寺院の入り口に灯明のお皿を置き、その光でラクシュミーを招き入れ、富や豊饒をお願いします。
それはそれはとても美しいおまつりです

Om Shreem Maha Lakshmiyei Namaha

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寺院の彫刻 その46(ガルーダ3)


今回はチャンパ・パガン・インドネシア・韓国・日本のガルーダ像を見てみます。
ガルーダ像はヴェトナムのチャンパにも沢山あります。
チェンダン(CHIEN DANG11〜12世紀)の博物館にはチャンパ独特のガルーダ像があります。
ガルーダ1
  CHIEN DANG 11〜12世紀
  文様の彫刻が素晴らしい
  敷地内に博物館がある












HOA LAI(8~9世紀)は3基の祠堂からなり中央祠堂は完全に崩壊しています。
残った祠堂の軒下のガルーダの彫刻は素晴らしい出来です。
ガルーダ2
  HOA LAI 8~9世紀
  崩壊がひどいが残っている
  彫刻は素晴らしい。
  ホアライ様式と呼ばれる。







ダナンのチャム彫刻博物館に12世紀のガルーダ像があります。
ナーガを食べています。
ガルーダ3
  CHAM彫刻博物館














インドネシアのガルーダに近いガルーダ像もありました9~10世紀(チャンパ博物館)。
なかでも傑作はこのガルーダに乗るヴィシュヌでしょう。
ガルーダ5
  CHAM彫刻博物館
  4臂のヴィシュヌを乗せガルーダは
  ヴィシュヌの両足をにぎっている











ミャンマーのパガンでも見つかりました。
めずらしいヒンドゥー教寺院のNATHLANGKYAUNGの壁龕にガルーダに乗るヴィシュヌ像がありました。
この像は近年制作されたもので、オリジナルの像は現在行方不明です。
ガルーダ6
  NATHLANGKYAUNG 931年
  パガン唯一のヒンドゥー寺院
  ヒンドゥー神のレプリカが内部の 
  壁龕に安置されている











ガルーダ7

















彫刻ではありませんが壁画が仏教寺院のPENANTHAGUにあります。
SRI KSHETRAの博物館にはとても古い6世紀のガルーダに乗るヴィシュヌ像があります。
保存状態が悪いのが残念です。
ガルーダ8
  SRI KSHETRAの博物館
  4臂でチャクラと棍棒をもっているので
  ヴィシュヌ神と思われる。
  隣は蓮に乗るラクシュミーか












東南アジア諸国で一番好まれたのはインドネシアです。
前回のインドにおけるガルーダでお話ししたガルーダの神話がガルディア物語として浸透しています。
東ジャワのC. KIDAL(1260年)の基壇にはガルディア物語が彫刻されています。
アムリタの壺を運ぶガルーダ、
ガルーダ9
  C. KIDAL 1260年
  基壇にマハーバーラタの「ガルデア」の
  主人公ガルーダの彫刻がある











母ヴィナターを運ぶガルーダ、
ガルーダ10
  C. KIDAL 1260年














ナーガを運ぶガルーダです。
ガルーダ11
  C. KIDAL 1260年














C. RIMBI(1372年)の基壇には苦行の帽子をかぶるガルーダが彫刻されています。
ガルーダ12
  C. RIMBI 1372年
  この寺院の基壇には不思議な
  彫刻がある








クデリにある石窟GOA SELOMANGLENG(11世紀)の入口の上部にガルーダが彫刻されています。
ガルーダ12−2
  GOA SELOMANGLENG 10世紀
  東ジャワには2つ石窟がある
  クデリにある石窟の入り口上部に
  彫刻されているがストーリーは解らない







エルランガ王の霊廟にあるC. BELAHAN(11世紀)は沐浴場でここにはラクシュミーとシュリーの彫像があり胸から水が出る仕掛けで、現在も村人が水を汲みに来ます。
本来その真ん中にガルーダに乗るヴィシュヌ像がありましたが現在トロウラン博物館に保存されています。
このヴィシュヌはエルランガ王のポートレートスタチューと言われています。
ガルーダ13
  C. BELAHAN 11世紀
  素晴らしい彫刻で4臂のヴィシュヌ神は
  エルランガ王と言われています












もう1つの沐浴場はC.JOROTUNDOと言い、エルランガ王の父親のウダヤナ王の霊廟です。
沐浴場の壁に物語のパネルが埋め込まれています。
崩壊がひどく大部分博物館に保存されています。
その1つガルーダによるムリガーヴァティーの誘惑です(977年)。
ガルーダ14
  C.JOROTUNDO 10世紀
  水槽の周りの彫刻はマハーバーラタの題材








石像ではありませんが中部ジャワで出土した9世紀後半の素晴らしい青銅の彫像がメトロポリタン美術館に展示されています。
尻尾が美しいガルーダの頭の上にはアムリタの壺、肩にはチャクラを持ったヴィシュヌが乗っています。
ガルーダ15
  メトロポリタン美術館 9世紀後半
  頭にアムリタの壷を乗せ尻尾が素晴らしい
  














このようにガルーダは東南アジアでは好まれました。
東アジアの韓国でも石塔の四面に2体ずつ八部衆が彫刻されていますが、特に鳥の顔をしていないので判断出来ません。石窟庵には八部衆が彫刻され、迦楼羅と言われている像があります。
ガルーダ16
  石窟庵 8世紀
  前室壁面に8部衆が彫刻されている



















日本では国宝八部衆の木造迦楼羅像が興福寺にあります。
ガルーダ17
  興福寺 奈良時代
  西金堂本尊釈迦如来像の周囲に安置されていた












また法隆寺の大宝蔵殿に迦楼羅の面が保存されています。
51法隆寺大宝蔵殿
  法隆寺の大宝蔵殿
  伎楽面











石像の迦楼羅が東京の本誓寺 にあります。
とても優れた像です。
ガルーダ18
  本誓寺
  立像で笛を吹いている














もう一つ埼玉県の十輪寺にも迦楼羅の石像がありました。
ガルーダ19
  十輪寺
  立像で笛を吹いている












ガルーダはアジアすべてに伝播しました。

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寺院彫刻 その45(ガルーダ2)

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今回は東南アジアのガルーダを見てみます。
東南アジアではガルーダはとても人気があり、ヒンドゥー教の寺院はもとより、仏教寺院にも取り入れられました。
先ずはカンボジアから見ていきましょう。
ROLUOSのPREA KO寺院(880年)の楣です。
ガルーダがナーガの花綱を掴んでいます。
1アジアガルーダ
  PREA KO寺院 880年
  アンコール王朝のごく初期の寺院
  ガルーダの楣は幾つか見られる
  この寺院の彫刻はとても細かい
  





アンコールの至宝BANTEAY SREI寺院(10世紀後半)の第一東塔門の彫刻です。
ガルーダの口からナーガが吐き出されています。
2アジアガルーダ
  BANTEAY SREI寺院 10世紀後半
  第一東塔門
  とても面白い意匠
  動物から次々と動物が吐き出される意匠は
  インドにも見られる











中央祠堂には鳥頭人身のガルーダの彫像が安置されています。
3アジアガルーダ
  BANTEAY SREI寺院 10世紀後半
  中央祠堂の基壇には門神として、ガルーダ、
  ナラシンハ、ハヌマン、ヤクシャの彫像が
  安置されている












この寺院の彫刻は厚肉彫りでとても精巧です。
ヴィシュヌに捧げられたPRASAT KRAVAN寺院(921年)の中央祠堂の壁面にはレンガに直接彫刻されたガルーダに乗るヴィシュヌ像があります。
4アジアガルーダ
  PRASAT KRAVAN寺院 921年
  5つの祠堂が一直線上に並んでいる
  楣にはガルーダに乗るヴィシュヌが彫られている












ANGKOR WAT寺院(12世紀初め)の第1回廊東面南側の壁面にはガルーダに乗るヴィシュヌが彫刻されています。
5アジアガルーダ
  ANGKOR WAT寺院 12世紀初め
  第1回廊内側のコーナーには面白い彫刻が
  彫られているが保存状態が極めて悪い












BANTEAY SAMRE寺院(12世紀)ではピラスターにナーガを引き裂くガルーダが彫刻されています。
6アジアガルーダ
  BANTEAY SAMRE寺院 12世紀
  ドアーフレイムの横にある付柱(ピラスター)の基部には
  色々な神話が彫られている













BANTEAY KDEI寺院(12世紀後半)のデヴァターの彫刻です。
上部にナーガを掴むガルーダが彫刻されています。
7アジアガルーダ
  BANTEAY KDEI寺院 12世紀後半
  壁龕に彫られたデヴァターの上部には植物文様や
  動物や神などが彫刻されている。











アンコールから東に128kmはなれたKOMPONG SVAYにある RREAH KHAN寺院(11〜13世紀)のPRASAT PREAH STUNGに頭が3つあるガルーダが彫刻されています。
8アジアガルーダ
  RREAH KHAN寺院 11〜13世紀
  アンコールトムの象のテラスにも同じ
  ようにガルーダが彫刻されているが頭は
  1つだけ
  足下のナーガが面白い





だいぶデフォルメされています。
アンコールから北に160kmはなれたBANTEAY CHMAR寺院(12世紀後半)の入口の前にあるテラスのナーガの欄干にとても美しいナーガに跨がるガルーダが彫刻されています。
9アジアガルーダ
  BANTEAY CHMAR寺院 12世紀後半
  クメール寺院に付属するテラスには必ず
  ナーガの欄干が付いている







ナーガの欄干はクメール彫刻の特徴の1つです。
BATTMBANGにあるPO VEAL寺院の倉庫にガルーダが彫刻されたとても不思議なヨニがあります。
10アジアガルーダ
  PO VEAL寺院
  バッタンバンの博物館が出来る前はここに
  すべて保存されていた
  リンガ(シヴァ神)の台座であるヨニに
  ガルーダが彫刻されていることは珍しい






プノンペンの国立博物館には入ってすぐの所に、KO KELから出土した立派なガルーダ像があります。
11アジアガルーダ
  プノンペン国立博物館
  KO KEL様式の彫像はとても大きい













中庭には左右にマカラ、中央にがガルーダのメダリオンが彫刻されたとても古い形式の楣が展示されています。
12アジアガルーダ
  プノンペン国立博物館
  両サイドにマカラを配し、中央に
  メダリオンの楣はとても古い形式







また個人蔵ですが10世紀前半のKO KEL様式の鳥頭人身の素晴らしいガルーダ像があります。
13アジアガルーダ
  個人蔵 10世紀前半
  塔形の宝冠、腰衣など素晴らしい
  眉の間には唐草、くちばしの両端にも文様
  












タイではPRASAT PHIMAI寺院(11〜12世紀)の尖塔西面にガルーダの彫刻があります。
上には方位神のヴァルナの彫刻です。
14アジアガルーダ
  PRASAT PHIMAI寺院 11〜12世紀
  








バンコクの国立博物館には8世紀のガルーダ像があります。
15アジアガルーダ
  バンコク国立博物館 8世紀
  とても優しい顔をしている
  










クメール帝国ではガルーダはとても好まれた様です。

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寺院の彫刻 その44(ガルーダ)

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今回はヴィシュヌ神のヴァーハナ(乗り物)であるガルーダの彫刻です。
まずはガルーダの生い立ちです。
「ガルーダが生まれたとき母親ヴィナターは蛇族の奴隷であった。ガルーダはわけを訪ねると、ヴィナターは蛇族のカドゥルーと賭けをした。それは乳海撹拌から生まれた太陽を牽引する馬の色についてであった。ヴィナターは全身白色だと言い、カドゥルーは尻尾だけ黒色と言った。実際は全身白色であったが、狡猾なカドゥルーは子供達に尻尾に取り付き黒く見えるようにした。だまされたカドゥルーは負けて奴隷になった。ガルーダは母親を解放してもらうため蛇族と掛け合った。蛇族は天界にある不死の聖水アムリタを奪ってくれば解放すると約束した。ガルーダはすぐに天界に向かった。来襲を知った神々は阻止しようと迎え撃つがガルーダは恐ろしく強い。多くの神々が打ち倒された。アムリタの周りにも回転する円盤チャクラや目を見ると灰になる2匹の大蛇などさまざまな罠を仕掛けていたが、ガルーダはそれをすり抜けてアムリタを奪い飛び去った。戻る途中ヴィシュヌ神の迎撃に合う。激しい戦いが続くが決着がつかずヴィシュヌ神はガルーダの勇気と力に感動し、ガルーダの願いを叶えることにした。それはアムリタを用いない不死であり、ガルーダはそれを受けてヴィシュヌのヴァーハナとなることを誓った。今度はインドラが襲って来たがとてもかなわなかった。そしてガルーダに永遠の友情の誓いを申し込んだ。その代わりにガルーダには不死の体が与えられ、彼はナーガたち蛇族を食料とするという約束を交わした。そして、一旦約束を守るためにガルーダはアムリタをナーガたちの元へ持ち帰った。ヴィナターが解放されると、アムリタをクシャの葉の上におき、沐浴してから飲まねばならないと告げた。それを聞いてナーガたちが沐浴をしている隙に、インドラがアムリタを取り返してしまった。ナーガたちはだまされたことに気づいたが、もはやどうしようもなかった。ナーガたちはどうにかしてアムリタをなめようと、アムリタが置かれていたクシャの葉をなめ回したため、舌が切れ二股となってしまった。現在蛇の舌が裂けているのはこのためである」という話です。
素晴らしいガルーダ像がカトマンドゥにあります。
世界遺産のCHANG NARAYAN寺院の境内に5世紀のリッチャビ王朝時代のガルーダ像があります。
保存状態はとてもよく、躍動感にあふれた素晴らしい像です。
1
  CHANG NARAYAN寺院 5世紀
  顔が素晴らしい
  髭、髪の毛、翼も良い













同じく境内に安置されているガルーダに乗るヴィシュヌ像も素晴らしい出来です。
この像はネパールの紙幣の10ルピーに使われています。
1-2
  CHANG NARAYAN寺院 5世紀
  とてもスリムな像で顔が子供の様で優しい
  ヴィシュヌの顔がわからないのが残念













西インドのJAGATにあるAMBIKA MATA寺院にも10世紀のひざまずくガルーダ像があります。
惜しいことに顔が破損しておりとても残念です。
2
  AMBIKA MATA寺院 10世紀
  この寺院のガネーシャは素晴らしいので
  ガルーダの顔が破損しているのが
  悔やまれる







南インドのMAMALLAPURAMにある7世紀のDHARMARAJA RATHAの2階部分にめずらしいヴィシュヌとガルーダの彫刻があります。
とても仲が良さそうな温かい像です。
2F,ヴィシュヌとガルーダ
  DHARMARAJA RATHA 7世紀
  1番大きいRATHAで3層にわたって彫刻がある
  あらゆる彫刻があり神だけでなく、料理人、歌手、
  寺男、男女の信者達が彫刻されている











エローラの16窟カイラーサナータ寺院の壁面に素晴らしいガルーダに乗るヴィシュヌの彫刻があります。
2-g.jpg
  16窟 KAILASANATHA寺院 8世紀
  1つの岩を削って作った寺院
  あらゆる神話が彫刻されている












インドのヒンドゥー寺院では祠堂の入口のドアーフレイムに中に祀られている神に関連した彫刻があります。
ヴィシュヌ神を祀った祠堂ではガルーダかガルーダに乗るヴィシュヌが彫刻されています。
中央インドの7世紀のKHAROD寺院のドアーフレイムです。
下段の楣には左右にマカラ、中央にガルーダが、上段には2匹のナーガをつかむガルーダが彫刻されています。
5
  KHAROD寺院 7世紀
  2段にわたり彫刻してある
  下段のマカラから吐き出される
  植物が素晴らしい






南インドのAIHOLEにあるKUNTI GROUPのドアーフレイムのガルーダです。
4
  KUNTI GROUP 7〜9世紀
  とても優しい顔をしている









同じく南インドのALAMPURのVISHVA BRAHMA寺院のドアーフレイムです。
6
  VISHVA BRAHMA寺院 8世紀後半
  とても良い意匠である








ALAMPURの博物館には素晴らしい11世紀のガルーダ像があります。
7
  ALAMPUR博物館
  着衣やアクセサリーが良い
  下肢がないのが悔やまれる
  












南インドのBADAMIにある石窟 CAVE3の天井にガルーダが彫刻されています。
8.jpg
  CAVE 3 6世紀
  第3屈はヴィシュヌに献じられた窟
  入って振り向くと天井に迫力のある
  カルーダ像がある 






VIJAYANAGARAにあるKODANDARAMA TEMPLEは大きな石にラーマーヤナの主人公達が彫られていますがそこにガルーダの彫刻があります。
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  KODANDARAMA 寺院 15〜16世紀
  合掌している方の上には法螺貝とチャクラが
  彫刻されている  













中央インドのDEOGARH にあるDASHAVATARA寺院の壁龕に素晴らしいガルーダに乗るヴィシュヌが彫られています。
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  DASHAVATARA寺院 6世紀
  象を救済するヴィシュヌ
  素晴らしいの一言













この彫刻はゾウを救助するヴィシュヌと言い「かつて王であったガジェーンドラはアガスティヤ仙の呪いにより象に姿を変えさせられた。あるとき湖で妻とともに戯れている時にそこに住む怪獣により捕らえられてしまった。そこで熱心にヴィシュヌ神を讃えた所、ガルーダに股がったヴィシュヌ神がやって来て彼を救った。」と言う話です。
象のガジェーンドラが鼻で蓮華をヴィシュヌ神に供養しています。
同じテーマが南インドPATTADAKALのVIRUPAKSHA寺院(8世紀中頃)のポーチの柱に彫刻されています。
3.jpg
  VIRUPAKSHA寺院 8世紀中頃
  象のガジェーンドラの前足に亀の様な
  怪獣が噛みついている













ヴィシュヌ神の乗り物とされているガルーダは実はヴィシュヌと同等の力を持ち、ヴィシュヌに頼まれてヴァーハナになっているのです。
ガルーダはインドよりも東南アジアで好まれたモチーフで日本にも迦楼羅天として伝わりました。
次回は東南アジアのガルーダです。

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寺院の彫刻 その43(カルキン2)

PANATA068.jpg
東南アジアでカルキンを見つけるのは大変です。
もちろん見つけることも大変ですが、見つかった馬頭人身の像がカルキンなのかハヤグリーヴァなのかわかりません。
カンボジアでは馬頭人身の像をヴァージムカ(馬の頭を持つもの)と呼びます。
1カルキン
ヴァージムカはヴェーダを盗んだカイタヴァとマドゥに闘いを挑むヴィシュヌ神あるいはハヤグリーヴァの化身であると言われていますので、ヴァージムカはハヤグリーヴァと同じ神と思われます。
東南アジアでは白い駿馬に跨がったカルキンは見つけられませんでした。
馬頭人身の彫刻、彫像はカンボジアにだけ見つかりました。
それがヴァージムカです。
ただ彫像の解説にはカルキンと説明されているものもあります。
寺院彫刻から見てみたいと思います。
2カ所しか見つけられませんでした。
1つはアンコールの至宝バンティアイ・スレイ寺院の楣にありました。
2SREI032.jpg
  BANTEAY SREI 寺院 967-69年
  JAYAVARMANⅤ世のグル
  YAJNAVARAHAの建立







バラ色砂岩の美しい寺院で建立は王ではなく、近くの土地を領し王師を務めていたヤジュニャヴラーハが967年に行いました。
ここの彫刻は深肉彫りで素晴らしい出来です。
中央に馬頭人身の神が左右のアスラの髪を掴み押さえつけている彫刻です。
3SREI098.jpg
  BANTEAY SREI 寺院
  第一東塔門 楣の彫刻
  とても細かい厚肉彫りで素晴らしい。
  4腕で右後ろ手にチャクラを持っており、
  左後ろ手は欠損している。
  左右のアスラがカイタヴァとマドゥ




もう1つはシェムリアップから北東に120kmのコーケー遺跡群KOH KERのPRASAT THOMの楣に彫刻されています。
4コケーDSC_5430
  PRASAT THOM 寺院  921年
  JAYAVARMAN Ⅳ世により建立
















5コケー
  PRASAT THOM 寺院
  楣の彫刻
  保存状態が悪く、ヴァージムカがほとんど
  崩落している。
  左右にアスラのカイタヴァとマドゥが
  彫刻されている。




コーケーは928年にジャヤヴァルマン4世がアンコールから遷都して作りました。
彫刻は以上2つですが、彫像は4つ見つかりました。
プノンペン国立博物館にあるカンダル洲クック・トラップで発見された7世紀のヴァージムカは傑作です。
6VAJIMUKHA7世紀3(P)
  プノンペン国立博物館
  7世紀
  プノン・ダ様式















肩幅が広く、強靭な身体、腰のひねりトリバンガはプノンダ様式です。
下半身を覆う着衣がそのまま足下を補強しています。
馬頭と人身がとても自然で神々しい像です。
次の像はサンボールプレイクックSAMBOR PREI KUKのN-7祠堂から発見された像です。
7SPK-N-7.jpg
  SAMBOR PREI KUKのN-7祠堂
  7世紀















10世紀のプレ・ループ様式で、頭頂は華やかな冠帯で装い、衣文の線条化が見られます。
8VAJIMUKHA10世紀6SPK N-7(G)
  Sambor Prei KukのN-7祠堂
  10世紀のプレ・ループ様式
  












サンボールプレイクックはプレアンコール時代の7世紀初頭にイーシャナヴァルマン1世によって王都イーシャナラプラとして建てられました。
森に囲まれた寺院群は6グループに別けられ、130以上のレンガ造の寺院からなります。
その後N-7祠堂に安置されたと思われます。
ネアン・クマウPRASAT NEANG KHMAU寺院から見つかった彫像はバケン様式で首がなくカンダル洲クック・トラップで見つかった像に首のつなぎ方が似ています。
9PRASAT NEANG KHMAU
  PRASAT NEANG KHMAU寺院
  10世紀









PRASAT NEANG KHMAUは10世紀に建立されたレンガ造りの祠堂で、現在2つが残っていますが初めは3祠堂形式だったと思われます。
10VAJIMUKHA10世紀NEANG KHMAU(P)
  PRASAT NEANG KHMAU寺院
  10世紀
  バケン様式















この10世紀のヴァージムカはサンボールプレイクックで見つかった像と同じプレ・ループ様式でよく似ています。
八角形の宝冠と幅広の冠帯がアクセントになっています。
11ヴァージムカ10世紀中頃
  10世紀中頃
  プレ・ループ様式















この像は前の像と非常に良く似ています。
制作時期も一緒です。
口元や目が優しい印象です。
12ヴァージムカ10世紀中頃
  10世紀中頃
  プレ・ループ様式


  













カンボジアではブラフマーの口から滑り落ちたヴェーダを盗んだアスラを退治するヴァージムカのモチーフが好まれた様です。
13ハヤグリーヴァ

既に7世紀にはインドのマトゥーラの影響を受けた像が造られていたのです。
その完成度の高さに驚きです。

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