寺院彫刻 その49(ハリハラ)

PANATA083-2.jpg
今回はハリハラ像です。
ハリハラ像のハリはヴィシュヌ神、ハラはシヴァ神のことでヴィシュヌ神とシヴァ神の合体した像のことです。
一般的に左側がヴィシュヌ神で右側がシヴァ神です(逆も多数存在)。
ヴィシュヌ側の頭は冠をかぶり手にはヴィシュヌの持物である法螺貝や円盤を持っています。
シヴァ側の頭は髪を結い上げ、手には斧や三叉戟、シカなどを持っています。
その他着衣やアクセサリーも違います。
11Harihara.jpg
ある神話では「ヴィシュヌはある聖者に、自分とシヴァは一体であり、自分の中にシヴァも存在すると告げ、シヴァの様相を示した」とあります。またある神話では「神々とアスラたちが、乳海を攪拌した時に、アスラ達がアムリタを神々に飲まれる前に全て飲み干そうとした。その事に気づいたヴィシュヌは、アスラ達を惑わすためにモーヒニーという美女の姿になって彼等を魅了し、その間に神々にアムリタを飲み干させた。その後、シヴァに一目惚れされ、一夜を共にする事になる。そうしてハリハラ(アイヤッパン)が生まれたとされる」とあります。
何れにしてもシヴァとヴィシュヌが合体した像で最強です。
しかしハリハラがアスラと戦ったり、何かしたと言う話は知りません。
まずは南インドのバーダーミにある石窟寺院(6世紀後半)を見ます。
ここには4つの窟があり、第1窟に素晴らしいハリハラ像があります。
向かって右側はヴィシュヌで左手に法螺貝を持ち、その隣は妃のラクシュミーで二人の間にはガルーダが彫刻されています。
向かって左側はシヴァで右手に蛇の絡んだ斧を持ち、その隣は妃のパールヴァティーで二人の間には牛のナンディがいます。
1cave1
  BADAMI CAVE-1 6世紀後半
  基壇にはガナ(小人)
  上部には天人のカップル
  腕を組んだガルーダと三叉戟を持つナンディ
  女神の表情が良い











第3屈にも素晴らしいハリハラ像があります。
この像は頭部、持物、着衣、アクセサリーの違いがよく解ります。
2cave3
  BADAMI CAVE-3 6世紀後半
  シヴァには蛇の巻き付いた斧
  ヴィシュヌには法螺貝
  シヴァには蛇のベルト












南インドのマハバリープラムのDHARMARAJA RATHA(7世紀)の壁龕です。
3DHARMA014
  DHARMARAJA RATHA 7世紀
  ラタの中でもっとも大きい
  斧とチャクラでわかる













同じく南インドのカンチープラムにあるKAILASANATHA寺院(8世紀初め)です。
シヴァに捧げられた寺院でシヴァ神話の彫刻がいたるところにあります。
ハリハラは倚座し足下にはガナがいます。
4KAILASANATHA
  KAILASANATHA寺院 8世紀初め
  寺院の壁一面にシヴァの彫刻
  斧と法螺貝
  足下にはガナ










南インドのアイホーレには沢山の寺院があります。
そこに彫刻の素晴らしい石窟RAVANAPADI(6世紀後半)があります。
壁面にシヴァとハリハラが彫刻されています。
5RAVANAPADI
  RAVANAPADI 6世紀後半
  向かって左は三叉戟を持つシヴァ
  右にハリハラ













南インドのパッタダカルにあるVIRUPAKSHA寺院(8世紀中頃)の壁龕に彫刻されています。
左手に法螺貝、右手に三叉戟ナンディとガルーダを連れています。
壁龕周囲の彫刻も素晴らしいです。
6VIRUPAKSHA
  VIRUPAKSHA寺院 8世紀中頃
  この寺院は壁龕の彫刻が素晴らしい
  三叉戟と法螺貝
  ガルーダとナンディ
  上部は寺院の中に座す神
  下部はトリ(クジャク)










南インドのアランプールにあるSVARGA BRAHMA寺院(7世紀後半)です。
保存状態が良くありませんが頭部で解ります。
7SVARGA BRAHMA
  SVARGA BRAHMA寺院 7世紀後半
  シヴァの三叉戟が残っている













南インドのホイサラー寺院HOYSALESHWARA(12世紀中頃)の彫刻です。
左手には棍棒、チャクラ、法螺貝、右手には太鼓、三叉戟を持ちます。
ナンディもうずくまっています。
8hoysaleshvara
  HOYSALESHWARA 12世紀中頃
  ホイサラー朝独得の彫刻
  足下にナンディがいます











中央インドのTERAHI寺院(8世紀)です。持物や頭部でハリハラと解ります。
9Terahi
  TERAHI寺院 8世紀
  足下にナンディとガルーダ













西インドのオシアンにあるその名もHARIHARA寺院(8世紀)です。
ここには3つのHARIHARA寺院があります。
足下にナンディとガルーダが彫刻されています。
面白いのは身体に巻き付けてある聖なる紐が半分から違っている所です。
10HARI-2012.jpg
  HARIHARA-2寺院 8世紀
  足下にナンディとガルーダ
  シヴァ側の紐はドクロ












このようにインド全土でハリハラは見つかります。
先に述べたようにこれだけ人気があるのにこれと言ったエピソードもありません。
またアイヤッパンとハリハラの関係もよくわかりません。
どう考えても2大神をくっつけただけのような気がします。
とても不思議な像です。

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寺院の彫刻 その48(ラクシュミー2)

PANATA081.jpg
今回は東南アジアにおけるラクシュミーの彫刻を見てみます。
東南アジア諸国でも好まれたようで、仏教寺院、ヒンドゥー教寺院で見られます。
まずはカンボジアのクメール寺院から見て行きます。
アンコールのプラサットクラヴァン寺院は921年の建立で共通基壇上にレンガ造りの5基の祠堂より構成されています。中央祠堂にはヴィシュヌが北端の祠堂にはラクシュミーがレンガの壁に直接彫刻されています。
立位で4つの腕の内、後の腕にはチャクラ(円盤)と蓮を、前2本ははっきりわかりません。
左右には天女を控え、顔立ちや衣装はとてもクメール的です。
1PRASAT KRAVAN024
  PRASAT KRAVAN寺院 921年
  レンガに直接彫られている
  4腕で後腕でチャクラと蓮を持っている
  前腕は良く解らない。
  











2KRAVAN008
  PRASAT KRAVAN寺院 921年
  2腕である
  







クメールの至宝バンテアイスレイ寺院(967年)の破風には素晴らしいガジャラクシュミーが彫刻されています。
3第二東塔門10
  BANTEAY SREI 寺院 967年
  ガルーダの上の蓮台に乗り、左右の像から
  聖水を注がれる典型的な形
  厚肉彫りで美しい






ラージェンドラヴァルマン王によって10世紀に建立された東メボン寺院の楣にも精巧なガジャラクシュミーが彫刻されています。
この寺院は貯水池東バライの中心に作られた人工の島に建っています。
4E-MEBON058
  EAST MEBON寺院 10世紀
  バンティアイスレイ寺院に似ている
  左右の手に蓮を持つ
  蓮台の下は上部から見た蓮の花で珍しい
  象の足にも蓮台





タイのクメール寺院では11世紀に建立されたカンペンヤイ寺院の楣にガジャラクシュミーが彫刻されています。
5YAI028
  KAMPHAENG YAI寺院 11世紀
  カーラの上に蓮を持つラクシュミー
  蓮台の左右に蓮を捧げる天女







パノムルン寺院(10〜13世紀)の楣にはカーラの上に座す蓮をもったラクシュミーが彫刻されています。
6RUNG004
   PHNOM RUNG寺院 10〜13世紀
  境内に置いてある楣
  カーラの上に蓮を持つラクシュミー
  ラクシュミーの髪や左右の天女に
  地方性が出ている





クメールのラクシュミーの彫像は沢山あります。
7世紀の像です。
7ラクシュミー7世紀前半
  ラクシュミー立像 7世紀前半
  サンボール・プレイ・クック様式
  4腕で下の腕に宝珠と棍棒を持つ
  僧帽の後ろに支柱の一部が残る
  とても力強い












8ラクシュミー8世紀
  ラクシュミー立像 8世紀
  コンポン・プレア様式
  右後腕にチャクラ(円盤)
  全体にシンプル


















9ラクシュミー10世紀初め
  ラクシュミー立像 10世紀初め
  コー・ケー様式
  宝冠の彫刻が素晴らしい
  腰衣も美しい














ベトナムのチャンパ遺跡では見つかりませんでしたがチャム彫刻博物館では見つかりました。
とても面白いガジャラクシュミーがあります。
チャンパ博物館
  チャム彫刻博物館
  台座の上に座し左右の手には蓮を持つ
  象の上には天樹と左右に天人
  ラクシュミーの髪型がよい
  おそらく壁龕の上部のか
  




両手に蓮を持った坐像もあります。
光背を持ち、両手に蓮を持った立像もあります。
チャンパ博物館2
  チャム彫刻博物館
  ラクシュミー立像
  両手に蓮を持つ
  2重光背を持つ
  とても印象的な像









インドネシアでも見つかりました。中部ジャワの仏教寺院(9世紀)バニュニボBANYUNIBOの壁龕です。
両手に蓮を持っています。
後ろには光背が彫刻されています。
14BANYUNIBO1
  BANYUNIBO寺院 9世紀
  壁龕の上部に彫刻されている
  蓮台の上に結跏趺坐している。

  











同じく中央ジャワのサリ寺院も両手に蓮を持って良く似ています。
セウ寺院も同じで一番保存状態が良いです。
東ジャワの山の中にあるチャンディベラハンの遺跡も見なくてはなりません。
ここはアイルランガ王の霊廟の一部で沐浴場になっています。
この沐浴場には2体の彫像があります。
1体はシュリー、もう1体がラクシュミーです(11世紀)。
ラクシュミーは4腕で2本に蓮を持ち、2本で乳をおさえ、乳首から水が流れだし現在も近くの村人の生活用水となっています。
15BELAHAN006.jpg
  BELAHAN寺院 11世紀
  4腕で前の2腕で乳を押さえている
  いつも人が出入りしている大事な水場












ミャンマーのパガン遺跡では ウッタナダラ寺院(12〜13世紀)のテラコッタの破風にラクシュミーが彫刻されていました。
蓮華の上に座し、手に蓮を持ち左右には天女が蓮を捧げています。
ミャンマーではこの構図を良く見かけます。
16WUTHA002.jpg
  WU-THA-NA-DAW寺院 12〜13世紀
  レンガの上に漆喰で彫刻されている
  左右の手には蓮を持つ







日本においても吉祥天として人気が高く、「毘沙門天」の妃であり蓮華の上に立ち、左手に如意宝珠(何でも望み通りに財宝を取り出すことが出来る)を持つ姿で描かれます。
「金光明経」や「金光明最勝王経」等の教典に、国家的な平和や繁栄を、また個人的にも財福を与える存在として登場します。
残念ながら吉祥天の石像は見つけることが出来ませんでした。
しかし薬師寺には素晴らしい画像があります。
国宝に指定された8世紀後半の吉祥天像は麻布に描かれ、剥落が多いが金箔が残っており、左手に如意宝珠を乗せ、顔は唐美人を想起させます。
躍動感のあるS字形の姿勢と身につけた薄物の微風をはらんで翻る様はまさに奈良時代の最高傑作です。
17吉祥天像
  薬師寺 麻布著色吉祥天像 8世紀 国宝
  麻布に書かれた日本最古の彩色画
  光明皇后を写したと伝わる













もうひとつ、木造ですが浄瑠璃寺の吉祥天立像は1212年頃の作とされ、肉身を胡粉で白く塗り、美しい色彩を残しております。薬師寺の画像は唐風の母性的な美人像ですが、この像は中国宋時代の装飾に近く、豊かな黒髪を肩にたらした容姿から初々しい潔癖さが感じられます。
18吉祥天浄瑠璃寺
  浄瑠璃寺 厨子入木造吉祥天立像 1212年
  秘仏であったため色彩が鮮やかに残る













東南アジアでも人気があり、ヒンドゥー教寺院でも仏教寺院でも見つかります。
日本でも弁財天と共に数少ない女性尊で人気があります。

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寺院の彫刻 その47(ラクシュミー)

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今回はヴィシュヌの神妃ラクシュミーのお話です。
ラクシュミーはパドマーヴァティー(蓮を持つ女性)、シュリー、吉祥天などとも呼ばれヒンドゥー教のみならず、仏教やジャイナ教など寺院にも彫刻されています。
特に寺院彫刻では2頭の象が女神の左右から水(ガンジスの聖水)を注ぎ祝福をする灌頂「ガジャ・ラクシュミー」の構図が好まれています。
2サンチ−1塔034
幸運と美、富と豊穣を司る女神で4本の腕にはそれぞれ蓮華・アムリタ(甘露、飲む者に不死を与えるとされる)の瓶・ヴィルヴァの実・法螺貝を持ち、水連の上に美しく立っている姿でよく知られています。
ヴィシュヌの側にいるときは2本の腕です。
ラクシュミーは寺院の彫刻17(クールマ)でお話しした神々とアスラの綱引き「乳海撹拌」の神話の中に登場します。
15ANGKOR181.jpg
1000年間攪拌が続き、乳海からはさまざまなものが生じた。太陽、月、白い象アイラーヴァタ、馬ウッチャイヒシュラヴァス、牛スラビー(カーマデーヌ)、宝石カウストゥバ、願いを叶える樹カルパヴリクシャ、聖樹パーリジャータ、アプサラスたち、酒の女神ヴァルニー、女神ラクシュミーらが次々と生まれた。ラクシュミーの美しさにシヴァを始め神々達、アスラ達も妻としてほしいと思ったがヴィシュヌがすぐに妻にしてしまった」と言うお話です。
その後ラクシュミーはヴィシュヌの化身のたびにその配偶者として生まれかわります。
ヴィシュヌが矮人ヴァーマナに化身した時は水から生まれ、ロータスの花に乗って漂い、パラシュラーマに化身した時は大地ダラーニーに、ラーマに化身した時は畑の畝から生まれたシーターに、クリシュナに化身した時には妻のルクミニーに、また牛飼いのラーダーに生まれ変わります。
寺院彫刻では「ガジャラクシュミー」のほか「アナンタ龍の上に横たわるヴィシュヌ」の彫刻では足下で足をさすっています。
16KHAN184
またヴィシュヌと一緒にガルーダに乗っている構図もよく見かけます。
9SIVA-1008
それでは代表的な彫刻を見て行きます。
中央インドのサンチー第1塔の門に彫刻されています。
1サンチ−1塔129
  SANCHI第1塔 紀元前2世紀
  北門(トーラナ)
  サンチー仏塔にはガジャラクシュミーが
  多い
  





現在は何も残っていませんが同じ中央インドに建てられたBHARHUT仏塔の彫刻がカルカッタのインド国立博物館に保存されています。
BHARHUTは紀元前2世紀に建てられ周囲の欄楯に彫刻があります。
3ラクシュミー1バルーフト
  BHARHUT仏塔 紀元前2世紀
  この仏塔の彫刻、特にヤクシー、ジャータカは
  すばらしい
  












同じ時期のサンチーの彫刻にとても良く似ています。
グプタ時代のラクシュミーの彫像がマトゥラーの博物館に保存されています。
とても肉感的な像です。
4ラクシュミーマトゥラー
  マトゥラー博物館
  とても肉感的なラクシュミー
  2世紀のクシャーン王朝からグプタ期までの
  素晴らしい彫刻、彫像が沢山保管されている



















同じグプタ時代の彫刻がディオガルの DASHAVATARA寺院にあります。
5DASHA058
   DASHAVATARA寺院 6世紀
  厚肉彫りで見事な彫刻
  左右の象のポーズか可愛い
  
  









カジュラホのADINATH寺院にはガルーダに乗るラクシュミーの彫刻があります。
6ADINATH005
  ADINATH寺院 11世紀
  2腕で棍棒とチャクラを持っているので
  ラクシュミーと思われる
  単独でガルーダに乗る像は珍しい











エローラの石窟にも左右の門神に守られたガジャラクシュミーが彫刻されています。
6E-CAVE14005
  ELLORA CAVE 14窟 8世紀
  左右に門神、上部に象と天人、足下の蓮池に
  ナーガとナーギー











エローラの16窟カイラーサナータ寺院にも素晴らしいガジャラクシュミーがあります。
7ラクシュミー2エローラ
  ELLORA KAILASANATHA 8世紀
  上部には天人、4頭の象、立体的な
  蓮が素晴らしい








南インドのマハバリープラムにあるヴァラーハマンダパはヴァラーハの彫刻で有名ですがガジャラクシュミーもなかなかの出来です。
ラクシュミーVARAHA002
  VARAHA MANDAPA 7世紀後半
  水瓶を持った女性達が魅力的
  左右非対称の実物大の象もよい








南インドGANGAIKONDACOLAPURAMにあるBRIHADISHVARA寺院には厚肉彫りのガジャラクシュミーが彫刻されています。
10ー12DSC_0054
  BRIHADISHVARA寺院 11世紀中頃
  とても彫りの深い彫刻
  アクセサリーや蓮を持つ手が魅力的












近隣諸国ではスリランカに面白いガジャラクシュミーの彫刻があります。
ポロンナルワの遺跡の中にガルポタと呼ばれる「石の本」があります。
上面には碑文が書かれており、側面にガジャラクシュミーが彫刻されています。
14GALPOT002.jpg
  POLONNARUWA GAL POTA 12世紀
  長さ9m、幅1.5m、重さ25トン
  ニッサンカ・マーラ王が作らせた
  表面にはインド侵略のことや諸国との関係
  王の功績などが彫られている。





ネパールのカトマンドゥにあるチャングナラヤン寺院には素晴らしいガルーダに乗るヴィシュヌとラクシュミーの彫刻があります。
13DSC_0008.jpg
  CHANG NARAYAN寺院 6世紀
  多面多臂のヴィシュヌと2臂のラクシュミー
  ガルーダは6臂、足でナーガを捕まえている












ラクシュミーはヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教など宗教に関係なく用いられる吉祥のモチーフです。
インドでは10月から11月の新月の夜に「ディワーリーDIWARI」というお祭りが全土で行われます。
主役はラクシュミーです。
Diwali_Festival.jpg
夕方から人々は家や寺院の入り口に灯明のお皿を置き、その光でラクシュミーを招き入れ、富や豊饒をお願いします。
それはそれはとても美しいおまつりです

Om Shreem Maha Lakshmiyei Namaha

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寺院の彫刻 その46(ガルーダ3)


今回はチャンパ・パガン・インドネシア・韓国・日本のガルーダ像を見てみます。
ガルーダ像はヴェトナムのチャンパにも沢山あります。
チェンダン(CHIEN DANG11〜12世紀)の博物館にはチャンパ独特のガルーダ像があります。
ガルーダ1
  CHIEN DANG 11〜12世紀
  文様の彫刻が素晴らしい
  敷地内に博物館がある












HOA LAI(8~9世紀)は3基の祠堂からなり中央祠堂は完全に崩壊しています。
残った祠堂の軒下のガルーダの彫刻は素晴らしい出来です。
ガルーダ2
  HOA LAI 8~9世紀
  崩壊がひどいが残っている
  彫刻は素晴らしい。
  ホアライ様式と呼ばれる。







ダナンのチャム彫刻博物館に12世紀のガルーダ像があります。
ナーガを食べています。
ガルーダ3
  CHAM彫刻博物館














インドネシアのガルーダに近いガルーダ像もありました9~10世紀(チャンパ博物館)。
なかでも傑作はこのガルーダに乗るヴィシュヌでしょう。
ガルーダ5
  CHAM彫刻博物館
  4臂のヴィシュヌを乗せガルーダは
  ヴィシュヌの両足をにぎっている











ミャンマーのパガンでも見つかりました。
めずらしいヒンドゥー教寺院のNATHLANGKYAUNGの壁龕にガルーダに乗るヴィシュヌ像がありました。
この像は近年制作されたもので、オリジナルの像は現在行方不明です。
ガルーダ6
  NATHLANGKYAUNG 931年
  パガン唯一のヒンドゥー寺院
  ヒンドゥー神のレプリカが内部の 
  壁龕に安置されている











ガルーダ7

















彫刻ではありませんが壁画が仏教寺院のPENANTHAGUにあります。
SRI KSHETRAの博物館にはとても古い6世紀のガルーダに乗るヴィシュヌ像があります。
保存状態が悪いのが残念です。
ガルーダ8
  SRI KSHETRAの博物館
  4臂でチャクラと棍棒をもっているので
  ヴィシュヌ神と思われる。
  隣は蓮に乗るラクシュミーか












東南アジア諸国で一番好まれたのはインドネシアです。
前回のインドにおけるガルーダでお話ししたガルーダの神話がガルディア物語として浸透しています。
東ジャワのC. KIDAL(1260年)の基壇にはガルディア物語が彫刻されています。
アムリタの壺を運ぶガルーダ、
ガルーダ9
  C. KIDAL 1260年
  基壇にマハーバーラタの「ガルデア」の
  主人公ガルーダの彫刻がある











母ヴィナターを運ぶガルーダ、
ガルーダ10
  C. KIDAL 1260年














ナーガを運ぶガルーダです。
ガルーダ11
  C. KIDAL 1260年














C. RIMBI(1372年)の基壇には苦行の帽子をかぶるガルーダが彫刻されています。
ガルーダ12
  C. RIMBI 1372年
  この寺院の基壇には不思議な
  彫刻がある








クデリにある石窟GOA SELOMANGLENG(11世紀)の入口の上部にガルーダが彫刻されています。
ガルーダ12−2
  GOA SELOMANGLENG 10世紀
  東ジャワには2つ石窟がある
  クデリにある石窟の入り口上部に
  彫刻されているがストーリーは解らない







エルランガ王の霊廟にあるC. BELAHAN(11世紀)は沐浴場でここにはラクシュミーとシュリーの彫像があり胸から水が出る仕掛けで、現在も村人が水を汲みに来ます。
本来その真ん中にガルーダに乗るヴィシュヌ像がありましたが現在トロウラン博物館に保存されています。
このヴィシュヌはエルランガ王のポートレートスタチューと言われています。
ガルーダ13
  C. BELAHAN 11世紀
  素晴らしい彫刻で4臂のヴィシュヌ神は
  エルランガ王と言われています












もう1つの沐浴場はC.JOROTUNDOと言い、エルランガ王の父親のウダヤナ王の霊廟です。
沐浴場の壁に物語のパネルが埋め込まれています。
崩壊がひどく大部分博物館に保存されています。
その1つガルーダによるムリガーヴァティーの誘惑です(977年)。
ガルーダ14
  C.JOROTUNDO 10世紀
  水槽の周りの彫刻はマハーバーラタの題材








石像ではありませんが中部ジャワで出土した9世紀後半の素晴らしい青銅の彫像がメトロポリタン美術館に展示されています。
尻尾が美しいガルーダの頭の上にはアムリタの壺、肩にはチャクラを持ったヴィシュヌが乗っています。
ガルーダ15
  メトロポリタン美術館 9世紀後半
  頭にアムリタの壷を乗せ尻尾が素晴らしい
  














このようにガルーダは東南アジアでは好まれました。
東アジアの韓国でも石塔の四面に2体ずつ八部衆が彫刻されていますが、特に鳥の顔をしていないので判断出来ません。石窟庵には八部衆が彫刻され、迦楼羅と言われている像があります。
ガルーダ16
  石窟庵 8世紀
  前室壁面に8部衆が彫刻されている



















日本では国宝八部衆の木造迦楼羅像が興福寺にあります。
ガルーダ17
  興福寺 奈良時代
  西金堂本尊釈迦如来像の周囲に安置されていた












また法隆寺の大宝蔵殿に迦楼羅の面が保存されています。
51法隆寺大宝蔵殿
  法隆寺の大宝蔵殿
  伎楽面











石像の迦楼羅が東京の本誓寺 にあります。
とても優れた像です。
ガルーダ18
  本誓寺
  立像で笛を吹いている














もう一つ埼玉県の十輪寺にも迦楼羅の石像がありました。
ガルーダ19
  十輪寺
  立像で笛を吹いている












ガルーダはアジアすべてに伝播しました。

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寺院の彫刻 その45(ガルーダ2)

PANATA077.jpg
今回は東南アジアのガルーダを見てみます。
東南アジアではガルーダはとても人気があり、ヒンドゥー教の寺院はもとより、仏教寺院にも取り入れられました。
先ずはカンボジアから見ていきましょう。
ROLUOSのPREA KO寺院(880年)の楣です。
ガルーダがナーガの花綱を掴んでいます。
1アジアガルーダ
  PREA KO寺院 880年
  アンコール王朝のごく初期の寺院
  ガルーダの楣は幾つか見られる
  この寺院の彫刻はとても細かい
  





アンコールの至宝BANTEAY SREI寺院(10世紀後半)の第一東塔門の彫刻です。
ガルーダの口からナーガが吐き出されています。
2アジアガルーダ
  BANTEAY SREI寺院 10世紀後半
  第一東塔門
  とても面白い意匠
  動物から次々と動物が吐き出される意匠は
  インドにも見られる











中央祠堂には鳥頭人身のガルーダの彫像が安置されています。
3アジアガルーダ
  BANTEAY SREI寺院 10世紀後半
  中央祠堂の基壇には門神として、ガルーダ、
  ナラシンハ、ハヌマン、ヤクシャの彫像が
  安置されている












この寺院の彫刻は厚肉彫りでとても精巧です。
ヴィシュヌに捧げられたPRASAT KRAVAN寺院(921年)の中央祠堂の壁面にはレンガに直接彫刻されたガルーダに乗るヴィシュヌ像があります。
4アジアガルーダ
  PRASAT KRAVAN寺院 921年
  5つの祠堂が一直線上に並んでいる
  楣にはガルーダに乗るヴィシュヌが彫られている












ANGKOR WAT寺院(12世紀初め)の第1回廊東面南側の壁面にはガルーダに乗るヴィシュヌが彫刻されています。
5アジアガルーダ
  ANGKOR WAT寺院 12世紀初め
  第1回廊内側のコーナーには面白い彫刻が
  彫られているが保存状態が極めて悪い












BANTEAY SAMRE寺院(12世紀)ではピラスターにナーガを引き裂くガルーダが彫刻されています。
6アジアガルーダ
  BANTEAY SAMRE寺院 12世紀
  ドアーフレイムの横にある付柱(ピラスター)の基部には
  色々な神話が彫られている













BANTEAY KDEI寺院(12世紀後半)のデヴァターの彫刻です。
上部にナーガを掴むガルーダが彫刻されています。
7アジアガルーダ
  BANTEAY KDEI寺院 12世紀後半
  壁龕に彫られたデヴァターの上部には植物文様や
  動物や神などが彫刻されている。











アンコールから東に128kmはなれたKOMPONG SVAYにある RREAH KHAN寺院(11〜13世紀)のPRASAT PREAH STUNGに頭が3つあるガルーダが彫刻されています。
8アジアガルーダ
  RREAH KHAN寺院 11〜13世紀
  アンコールトムの象のテラスにも同じ
  ようにガルーダが彫刻されているが頭は
  1つだけ
  足下のナーガが面白い





だいぶデフォルメされています。
アンコールから北に160kmはなれたBANTEAY CHMAR寺院(12世紀後半)の入口の前にあるテラスのナーガの欄干にとても美しいナーガに跨がるガルーダが彫刻されています。
9アジアガルーダ
  BANTEAY CHMAR寺院 12世紀後半
  クメール寺院に付属するテラスには必ず
  ナーガの欄干が付いている







ナーガの欄干はクメール彫刻の特徴の1つです。
BATTMBANGにあるPO VEAL寺院の倉庫にガルーダが彫刻されたとても不思議なヨニがあります。
10アジアガルーダ
  PO VEAL寺院
  バッタンバンの博物館が出来る前はここに
  すべて保存されていた
  リンガ(シヴァ神)の台座であるヨニに
  ガルーダが彫刻されていることは珍しい






プノンペンの国立博物館には入ってすぐの所に、KO KELから出土した立派なガルーダ像があります。
11アジアガルーダ
  プノンペン国立博物館
  KO KEL様式の彫像はとても大きい













中庭には左右にマカラ、中央にがガルーダのメダリオンが彫刻されたとても古い形式の楣が展示されています。
12アジアガルーダ
  プノンペン国立博物館
  両サイドにマカラを配し、中央に
  メダリオンの楣はとても古い形式







また個人蔵ですが10世紀前半のKO KEL様式の鳥頭人身の素晴らしいガルーダ像があります。
13アジアガルーダ
  個人蔵 10世紀前半
  塔形の宝冠、腰衣など素晴らしい
  眉の間には唐草、くちばしの両端にも文様
  












タイではPRASAT PHIMAI寺院(11〜12世紀)の尖塔西面にガルーダの彫刻があります。
上には方位神のヴァルナの彫刻です。
14アジアガルーダ
  PRASAT PHIMAI寺院 11〜12世紀
  








バンコクの国立博物館には8世紀のガルーダ像があります。
15アジアガルーダ
  バンコク国立博物館 8世紀
  とても優しい顔をしている
  










クメール帝国ではガルーダはとても好まれた様です。

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