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寺院の彫刻 その59(シヴァ9 両性具有のシヴァ)

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今回はアルダナーリーシュヴァラ(両性具有のシヴァ)の彫刻です。
アルダナーリーシュヴァラとは身体の右半分はシヴァ神、左半分は妃のパールヴァティーで表された神です。
アルダナーリー15
シヴァとパールヴァティーがカイラーサ山の頂きに座っていた時、神々や聖者たちは彼に敬意を表す為にカイラーサ山に出かけた。ブリンギィ聖者を除き、彼らはシヴァとパールヴァティーの周囲を巡り、お辞儀をしながら崇拝した。ブリンギィ聖者はシヴァ神のみを崇拝する誓いを持っていたため、パールヴァティーを無視した。パールヴァティーは彼に腹を立て、彼の血肉が身体から消え失せ、骨皮のみが残るように心に念じた。パールヴァティーの念が通じ、ブリンギィ聖者は身を支えることは出来なくなった。シヴァは彼のあわれな状態を見て、彼に第三の足を与えたので彼は平衡を保つことが出来た。ブリンギィ聖者は喜び踊を演じてシヴァを讃えた。パールヴァティーの意図は失敗に帰し、彼女は悩み苦しみ、シヴァから恩恵を得るため苦行に励んだ。シヴァは彼女の苦行に喜び、自分との結合を許した。こうしてシヴァにより、男女の合体(アルダナーリー アルダ=半、ナーリー=女性)からなる神が生まれた。ブリンギィ聖者はシヴァ神のみを崇拝するためにその神の周囲を巡ることは難しくなってしまった。しかし彼はその障害にひるまず甲虫の姿をとり、合体神に穴をあけてシヴァ神の周囲を巡って崇拝し、パールヴァティーをも讃えた。彼女は彼の信心深い誓いの固さに祝福を与えた』という話です。
シヴァとブリンギィ聖者 SANGAMESVARA寺院
写ー1
アルダナーリーは一般的に、右半分はシヴァ、左半分は豊かな胸を持った神妃パールヴァティーです。
豊満な片胸と共に通常、女性側の脇腹はくびれ、丸みを帯びる腰が艶めかしく強調され、装飾品も左半分と右半分は明瞭に区別されます。
一般的にはナンディと共に彫刻されることがほとんどです。
ナンディに寄りかかるか、トリヴァンガ(三屈法)の姿勢です。
それでは見ていきます。
マトゥラー博物館にある5世紀のアルダナーリーシュヴァラ像ですが首から上しか残っていません。
特徴のある豊満な片胸も衣装もありませんが、頭髪右半分は荒々しいシヴァの左半分は美しいパールヴァティーのものです。
さらに左側のイアリングと左半分の顔の優しさでアルダナーリーと解ります。
マトゥラー博物館 5世紀
アルダナーリー1MATHURA博物館5世紀
さらに古い像がロサンゼルスカウンティ美術館にあります。
マトゥーラで見つかった2〜3世紀の像です。
ロサンゼルスカウンティ美術館 2〜3世紀
アルダナーリー2 2~3世記マツゥラーロス美術館
南インドのBADAMI第1窟には素晴らしいアルダナーリーがあります。
6世紀後半の製作で片胸を楽器ビーナで隠すようにして不自然感をなくしています。
ナンディとブリンギィも一緒です。
BADAMI第1窟 6世紀後半
アルダナーリー3
同じ6世紀後半の南インドのAIHOLEにあるRAVANAPADI窟のアルダナーリーは傑作です。
頭からつま先までシヴァとパールヴァティーの合体象です。
とても素敵な顔立ちです。シヴァは三叉戟を持っています。
RAVANAPADI窟 6世紀後半
アルダナーリー4
MAMALLAPURAMのDHARMARAJA RATHA(7世紀)の壁龕にあるアルダナーリーは左半分は女性なのですがとても不自然な体型で顔もシヴァそのもので魅力がありません。
DHARMARAJA RATHA 7世紀
アルダナーリー5
これに対しMAHAKUTAにあるSANGAMESHVARA(7世紀)の壁龕のアルダナーリーはとても美しいトリヴァンガのポーズをとっており、まるでパールヴァティーです。
シヴァ側の太ももの衣装はトラでしょうか。
SANGAMESHVARA 7世紀
アルダナーリー6
ELEPHANTA(6世紀)のアルダナーリーは傑作です。
とても神々しく威厳に満ちた彫刻ですが、残念なことに下部が崩壊しています。
ナンディに寄りかかり、周囲には神々や天人、天女が集まってきています。
ELEPHANTA 6世紀
アルダナーリー7
南インドのALAMPURにあるSANGAMESHWARA寺院のアルダナリーは最高傑作です。
SANGAMESHWARA 6世紀
アルダナーリー8
同じALAMPUR のSVARGA BRAHMA寺院(7世紀)は彫刻の宝庫です。
壁龕にアルダナーリーが彫られているのですが、人為的に顔と胸がえぐり取られています。
とても残念です。
シヴァ側の太腿に人面(トラ)が彫られているのが解ります。
SVARGA BRAHMA寺院 7世紀
アルダナーリー9
TAMIL NADUのMUVARKOVIL寺院(10世紀)は蓮の基壇を持つ祠堂が三つ並んで作られましたが、現在は二つです。
その身舎の壁龕にこの地方独特の優しいアルダナーリーとナンディが彫られています。
MUVARKOVIL寺院 10世紀
アルダナーリー10
同じ寺院からの出土したアルダナーリーがPUD博物館に展示されています。
PUD博物館 10世紀
アルダナーリー11PUD MUS DSCF0205 Ardhanar
もう一つこの地方の最高傑作がタンジャブールのNAYAK PALACE ART MUSEUMに展示されています。
NAYAK PALACE ART MUSEUM 10世紀
アルダナーリー12NAYAK PALACE ART MUSEUM10セイキ、タンジャブール
GANGAIKONDACOLAPURAMのBRIHADISHVARA寺院(1025年)壁龕のアルダナーリーは大きく立体感があります。アルダナーリーシュヴァラは全土で見つかりますが、特に南インドでアルダナーリーシュヴァラはとても愛されているようです。
BRIHADISHVARA寺院 1025年
アルダナーリー13
インドは不思議な国です。
以前お話ししたハリハラは最高神のシヴァとヴィシュヌを合体させた神です。
今回はシヴァと妃パールヴァティーの合体です。

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寺院の彫刻 その58(シヴァ8 三都を破壊するシヴァ)

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今回は三都を破壊するシヴァ(TRIPURANTAKAMURTI)の彫刻です。 
『神々に滅ぼされた巨人魔族のターラカ王には3人の息子がいた。彼らは魔族の復活を願って激しい苦行を行い、満足したブラフマー神は彼らの望みをかなえてやることにした。3兄弟は不死を望んだがそれはかなえられず、かわりに「3兄弟がそれぞれの都市の王となり、その世界を支配出来るよう望む。そして三都を一矢で突き抜けさせる強弓の引き手のみが征服者となりうる不滅の都市が欲しいのです」と望み、かなえられた。3兄弟は天界に黄金の都市、空中に銀製の都市、地上に鉄製の都市をそれぞれ造った。3人の魔王はあっという間に三界を征服し、世界中の人々に対して圧政を行った。
見かねたインドラ神はこれらの都市を攻撃したが3魔王は強かった。インドラ神はブラフマー神に相談した。
ブラフマー神は「三都を一矢で貫通させる力を持つのはシヴァ神のみである」と語ったので、神々はシヴァ神に三都の破壊を依頼した。シヴァ神は「あの3兄弟は何としても滅ぼさなければならない。私の力だけでは及ばないのですべての神々の力を半分ずつ私に貸してほしい」と述べた。同席した神々は了承しこのとき以来シヴァ神はマハーデーヴァと呼ばれるようになった。
シヴァ17
三都攻撃の準備は着々と進められ、大地はシヴァが乗る戦車に、太陽と月は戦車の車輪に、4っのヴェーダは4頭の馬に、ブラフマーは御者に、メール山は弓に、海は矢筒に、そしてヴィシュヌは矢に姿を変えてシヴァを援護した。シヴァ神が三都に向かうと、三都は合体して堅牢無比なひとつの城になった。しかしシヴァ神が渾身の力を振り絞り弓を引くと、放たれた矢は見事に三都を貫通し、3人の魔王もろとも砕け散った』という話です。
彫刻をみてみますと、典型的な形は戦車に乗り、巨大な弓を引き、御者はブラフマーです。
もう一つの形はBRIHADISHVARA寺院(TANJAVUR)の二階の壁龕全てに彫刻されている巨大な弓を持つ単独の立像です。4臂で弓、矢、三叉戟を持ちトリバンガの姿勢で描かれます。
南インドエローラのCAVE-16窟(8世紀中頃)の壁面の彫刻です。
ELLORA CAVE-16
1エローラ16
戦車に乗り、巨大な弓を引き、御者のブラフマーの典型的な像です。下部は崩壊していますが上部にはアプサラ、ガンダルヴァ、ナンディなどが彫刻されています。
もう一つELLORA CAVE-15にあります。
ELLORA CAVE-15
2E-CAVE15019
完璧な彫刻ですが真っ暗の中なので、綺麗に写真が撮れませんでした。
南インドのKANCHIPURAMのKAILASANATHA寺院(8世紀初め)です。
KAILASANATHA寺院
4KAILASANATHA
寺院の境内の外壁に沿って作られた小部屋にある彫刻です。漆喰が剥がれています。
南インドALAMPURのSVARGABRAHMA寺院(689年)です。
SVARGABRAHMA寺院
5svargabrahma
下部は崩壊していますが、戦車とブラフマーの御者で「三都を破壊するシヴァ」である事がわかります。
南インドのMAMALLAPURAMの海岸寺院(8世紀初め)です。
SHORE TEMPLE 
6SHORE TEMPLE
海岸に建ち、外壁に彫刻されているが風化がひどい。
南インドPATTADAKALのKASHIVISHVANATHA寺院(8世紀後半)です。
KASHIVISHVANATHA寺院
7KASHIVISHVANATHA2
内部の柱の彫刻です。忠実に彫られています。
南インドMAHAKUTAのMAHAKUTESHVARA寺院(7世紀後半)です。
MAHAKUTESHVARA寺院
8マハークータ
基壇は細かい神話の彫刻で埋め尽くされています。その中におそらく「三都を破壊するシヴァ」と思われる彫刻があります。
南インドTANJAVUR のBRIHADISHVARA寺院( 1010年)上部壁龕全てに彫刻されている巨大な弓を持つ単独像です。
BRIHADISHVARA寺院
11BRIHADISHVARA(TANJAVUR)2
12BRIHADISHVARA(TANJAVUR)2
13BRIHADISHVARA(TANJAVUR)2
全て少しずつ違いますが共通するのは4臂で弓、矢、三叉戟を持っている事です。
南インドCIDAMBARAMのNATARAJA寺院です。
14CIDAMBARAM.jpg
ゴープラム(楼門)の壁龕に彫刻されています。両脇に女神を載せています。
VIJAYANAGARAのVIRUPAKSHA寺院(13〜17世紀)の天井に描かれています。
VIRUPAKSHA寺院
16ハンピ2
マンダパの天井にはヴィシュヌの化身、方位神、シヴァ神話、ラーマーヤナなどの天井画が描かれている。
デリー博物館にもあります。
デリー博物館
15、10世紀デリー博
典型的な彫刻です。

東南アジアでは見つかりませんでした。

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寺院の彫刻 その57 (シヴァ7 象の魔神を退治するシヴァ) 

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前回の「アンダカを退治するシヴァ 」と良く似た彫刻「象の魔神を退治するシヴァ Gajasamharamurti」の神話です。
「カーシー(ベナレス)にクリッティヴァーセーシュヴァラと呼ばれるリンガがあった。
そのリンガの周囲にバラモン僧が集まり、瞑想に耽っていた時、象に姿を変えた魔人が瞑想を妨害しようとした。
その時シヴァがリンガから姿を現し、その象を殺し、その皮をはぎ取り身につけた」という話です。
この像の見分け方は頭上で象の皮を拡げている、象の上で踊る、頭髪はボサボサである、などです。
まずはエローラのCAVE16窟(8世紀中頃)です。
CAVE16窟
1エローラ16
とても微妙な彫刻です。
象の上で踊っていませんが三叉戟で悪魔を刺していないので「象の魔神を退治するシヴァ 」としました。
南インドKANCHIPURAMのKAILASANATHA寺院(8世紀初め)の彫刻です。
この彫刻は本殿やマンダパではなくこれらを取り囲む小祠堂に彫刻されています。
KAILASANATHA寺院
2KAILASANATHA
象の皮を拡げ、象を踏みつけるシヴァです。
表面が漆喰で塗られていたのですがだいぶ剥がれてしまっています。
足元にはパールヴァティーがいます。
もう一つKAILASANATHA寺院(8世紀初め)にあります。
KAILASANATHA寺院
3KAILASANATHA
本殿の壁龕上部に彫刻され、象の皮を拡げ、象を踏みつけています。
KANCHIPURAMのIRAVATANESHWARA寺院(8世紀初め)です。
IRAVATANESHWARA寺院
4IRAVATANESHWARA
KAILASANATHA寺院と同じ8世紀の初めに建立された寺院で、こじんまりしています。
壁龕に彫刻され象の皮を拡げ、象を踏みつけています。
KANCHIPURAMのMUKTESHWAR寺院(8世紀中頃)の入り口ポーチに彫刻されています。
MUKTESHWAR寺院
5MUKTE011
お尻をこちらに向けて体をひねったポーズで未完成の石の上で踊っています。
足元ではガナもおどっています。
南インドのPATTADAKALにあるMALLIKARJUNA寺院(745年)です。
MALLIKARJUNA寺院
6MALLIKARJUNA
未完成ですが一目で「象の魔神を退治するシヴァ 」と解ります。
同じPATTADAKALのSANGAMESVARA寺院(8世紀初め)です。
SANGAMESVARA寺院
7SANGAMESVARA
これも未完成ですが「象の魔神を退治するシヴァ 」と解ります。
PATTADAKALのKASHIVISHVANATHA寺院(8世紀後半)の内部の柱の彫刻パネルです。
KASHIVISHVANATHA寺院
8KASHIVISHVANATHA
シンプルに象の皮を拡げています。
タミルナード州KALAIYURのAGASTYESHVARA寺院(10世紀)の壁龕です。
AGASTYESHVARA寺院
9AGASTYESHVARA(KALAIYUR)
この寺院は現在も使用されていますので、信者が供物を捧げていきます。
スリムで整った彫刻です。
PULLAMANGAIのBRAHMAPURISVARA寺院(10世紀初め)です。
BRAHMAPURISVARA寺院
10BRAHMAPURISVARA(PULLAMANGAI).jpg
彫刻が素晴らしい寺院です。
このチョーラ朝の寺院は本殿の周囲に堀が巡らされ祠堂が水に浮かんでいる様に設計されています。
「象の魔神を退治するシヴァ 」をはじめとしてたくさんの神話の彫刻が基壇に彫られています。 
南インドのカルナータカ州にある後期チョーラ朝寺院やホイサラ朝の寺院では良く見かけます。
LAKKUNDIのKASIVI SVESVARA寺院(12世紀)です。
KASIVI SVESVARA寺院
11KASIVI004.jpg
MUKTESHWAR寺院の様に尻をこちらに向けて体をひねったポーズで悪魔の上で踊っています。
ガネーシャやパールヴァティーもいます。
とても素晴らしデザインです。
BASARALUのホイサラ朝寺院MALLIKARJUNA寺院(1234年)の基壇はホイサラ朝独特の精密な彫刻で埋め尽くされています。
MALLIKARJUNA寺院
12MALLIKARJUNA(BASARALU).jpg
象の頭の上で踊っていますがシヴァ全体を象の皮で覆っている面白い意匠です。
HALEBIDのHOYSALESHWARA寺院(12世紀中頃)の彫刻も素晴らしい出来です。
HOYSALESHWARA寺院
13ホイサレーシュヴァラ
MALLIKARJUNA寺院と同じ意匠ですがさらに細かく精密です。
VELURのCHENNAKESHAVA寺院(1117年)です。
CHENNAKESHAVA寺院
14チェンナケーシャヴァ
重要なホイサラ寺院で圧倒的な腕の数、象の周りの人々、迫力があります。
DARASURAMの博物館に素晴らしい「象の魔神を退治するシヴァ」の彫像があります。
Nayak Palace Art Museum
15Darasuram, Nayak Palace Art Museum
シヴァのポーズが感動的です。Thanjavurの Rajarajesvara寺院で見つかりました。
象の魔神を退治するシヴァの彫刻も東南アジアでは見つかりませんでした。 

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寺院の彫刻 その56(シヴァ6 アンダカを退治するシヴァ)

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今回のシヴァ神の神話は魔神アンダカを退治する話です。
『魔族のアンダカは勢力を蓄え、神々に敵対するようになった。しかもシヴァ神の妻パールヴァティーに恋し、彼女を奪おうとさえした。アンダカの横暴にシヴァ神はアンダカ成敗を決意し、魔族と全面戦争の態勢に入った。シヴァは戦いのため3匹の蛇を造り2匹を腕輪とし、1匹を聖紐とした。また1000の頭と1000の眼を持つヴィーラバドラという怪物を作り出した。アンダカに味方する魔族ニーラはシヴァを殺そうと魔象の姿でカイラス山に赴いた。ところが従者ナンディンに正体を見破られ ヴィーラバドラに報告された。ヴィーラバドラはたちまち魔象を殺してその生皮をシヴァ神に献上した。シヴァ神は血の滴る象の生皮を身体にまとい、蛇を巻き付け、三叉戟を振りかざして主戦場に向かった。ヴィシュヌ神を始め多くの神々が応援に駆けつけた。激しい攻防の末、シヴァ神とアンダカの一騎打ちとなり,シヴァ神の放った矢がアンダカに命中した。アンダカの傷口から血が滴り落ち地面に触れると、一滴ずつから別のアンダカが誕生した。数千に増えたアンダカはシヴァ神を包囲する。これを見たヴィシュヌ神はアンダカの分身達を円盤で切り刻み、シヴァ神は冷静に本物のアンダカを見つけ三叉戟を投げつけ、殺した。こうして勝利はシヴァ神を始め神々のものとなった 』という話です。
この神話を主題にした彫刻では、シヴァ神は多臂で手に様々な武器を持ち、象の皮を背後に大きく拡げ、象の頭の上で舞踊のポーズをとると神話関係の書籍に書かれていますが、この図像は後に述べる「象の魔神を殺すシヴァ 」と非常によく似ています。
今回私独自の分類で「アンダカ殺すシヴァ 」の図像は三叉戟で悪魔を刺す、悪魔を踏みつけるが象の上で舞踊のポーズはとらない、この2点で分けたいと思います。
はじめにエローラのCAVE-15窟(8世紀中頃)の像です
                 ELLORA CAVE-15
1E-CAVE15004
三叉戟で悪魔を刺し、頭上に象の皮を拡げ、悪魔を踏みつけている典型的な「アンダカを退治するシヴァ 」の像です。
おそらく三叉戟で刺されたアンダカの傷口から流れる血を受け止めるために、チャームンダー(シヴァ の妃の一人)が杯を差し出しています。
シヴァ の腕の一つも杯を差し出しています。
素晴らしい彫刻です。
同じエローラのCAVE-16窟(8世紀中頃)の像です。
                 ELLORA CAVE-16
2E-CAVE16037.jpg
15窟の像と比べるとだいぶ稚拙ですが、三叉戟で悪魔を串刺しにして、頭上で象の皮を広げ、血を受け止める杯を持っている構図は同じです。
同じエローラのCAVE-29窟(6世紀終わり)の像です。
                 ELLORA CAVE-29
2E-CAVE29004
残念なことに三叉戟を持つ腕が破損してしまいましたが悪魔を刺しています。
頭上には象の皮を広げ、腕の一つで杯を持ち、血を受け止めています。
右側にはおそらく妃のパールヴァティーが腰かけています。
これととてもよく似た図像がエレファンタ島(6世紀)にあります。
                 ELEPHANTA CAVE
3elephanta
保存状態がとても悪く下部はほとんど解りませんが、三叉戟によって刺された悪魔とその血を受ける杯を持った腕は確認できます。
象の皮を持った指と象の頭が解ります。
上部にはたくさんの神が集まっています。
南インドALAMPURのSANGAMESHWARA寺院(6世紀中頃)の壁龕にあります。
                SANGAMESHWARA寺院
4SANGAMESHWARA
三叉戟で悪魔を刺す典型的な図像です。
しかし腕がほとんど失われてしまっているので血を受け止める杯や頭上の象の皮は良く解りません。
悪魔を踏みつけ、足元にはガネーシャが彫られています。
同じALAMPURの博物館にも展示されています。
                 ALAMPUR博物館
5alampur博物館
典型的な図像で保存状態もまあまあです。
南インドPATTADAKALのGALAGANATHA寺院(8世紀)です。
                GALAGANATHA寺院
6GALAGANATHA
壁面の窓に彫刻されています。
横幅があまり取れないのでシンプルですが典型的な図像です。
シヴァの顔がとても穏やかで美しいとおもいます。
同じPATTADAKALのKASHIVISHVANATHA寺院(8世紀後半)です。
               KASHIVISHVANATHA寺院
7KASHIVISHVANATHA
この寺院の内部の柱には神話のパネルが沢山あります。
逆光になってしまって解りづらいのですが、典型的な図像で悪魔を踏みつけています。
左右に女神が彫られているようですが向かって右側はパールヴァティーでしょうか。
左側は踊っているようです。
チェンナイのプリンスオブウェールズ博物館にも展示されています。
              プリンスオブウェールズ博物館
8PRINCE023
8世紀のカルナータカ州で発見されたアンダカを退治するシヴァの彫刻です。
ほとんどの彫刻が向かって右向きなのに対し、この像は左向きです。
PATTADAKALのVIRUPAKSHA寺院(745年)の壁龕の彫刻も左向きです。
                VIRUPAKSHA寺院
9VIRUPAKSHA
中インドRAJIMのRAJIVALOCHANA寺院(8世紀)にも素晴らしい彫刻があります。
                RAJIVALOCHANA寺院
10Rajim-122.jpg
4腕で前2本で三叉戟を持ち、悪魔を指します。
後ろ2本で象の皮を拡げます。
タッチが南インドとだいぶ違います。
ELLORA CAVE-15と同じ様に、チャームンダーが血を受けます。 
同じ中央インドのSHIVPURIにあるSURWAYA寺院(10〜14世紀)です。
                 SURWAYA寺院
11Surwaya-137マディヤプラディシュ
ほぼ完全に残っており、典型的なアンダカを退治するシヴァの彫刻です。
8腕全ての持ち物がわかります。
チャームンダーが血を受け、悪魔を踏みつける足元にナンディがいます。

東南アジアでは「アンダカを退治するシヴァ」の彫刻は見つかりませんでした。
次回は非常によく似た「象の魔神を殺すシヴァ 」を見てみたいと思います。

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寺院の彫刻 その55(シヴァ5 ナタラージャ3)

PANATA103 2
ナタラージャの彫刻は東南アジアでも見ることができます。
カンボジアの至宝と言われるバンティアイ・スレイ寺院(967年)には素晴らしいナタラージャの彫刻があります。
東第一塔門の破風には10腕の威厳のあるシヴァ、右下にはカーライッカル・アンマイヤール、左下には打楽器を叩く人が厚肉堀りで彫刻されています。
インド本国に勝るとも劣らない傑作です。
1SREI025
バコン寺院(881年)の破風にも彫刻されていますが、創建当時のものではなく、のちに彫られたものです。
残念ながら保存状態が良くなく特に下半身は分かりません。
2BAKON124
プノンペンの南50kmにあるプノム・チソール寺院(11世紀)の破風にもナタラージャの彫刻がありますが、やはり保存状態が良くありません。
しかしカーライッカル・アンマイヤールはわかります。
3CHISSOR049
バンティアイ・サムレ寺院(12世紀)には寺院内部にあるために比較的保存状態の良いナタラージャがあります。
カーラの上で踊り、従者は破壊されてわかりませんが、左右のシンハはわかります。
4SAMURE198
同じような構図のナタラージャがプリア・ピトゥ寺院(12世紀)にあります。
5PITHU041
バッタンバンの博物館にもありました。
6BATTAMBANG博物館
東北タイのクメール寺院でも好まれ、ピマイ寺院(11~12世紀)の破風に彫刻されています。
10腕で頭には宝冠をかぶり、足元には従者を従えています。
一番左にはあばらが浮き出たカーライッカル・アンマイヤールがいます。
7PHIMAI023
パノム・ルン寺院(12世紀)の破風のナタラージャは素晴らしい出来です。
10腕で足元に従者を従えています。
カーライッカル・アンマイヤールやガネーシャもいます。
ピマイ寺院と構図は似ていますが宝冠や顔立ちが違います。
8RUNG077
もう一つ印象的なのがサコンナコンにあるNARAI JAENG WAENG寺院(11世紀)の破風にあります。
他の像とは異なり12腕でガネーシャを伴う従者を連れています。
面白いのは上部の左右に木に登るリスが彫られていることです。
9WAENG010
ベトナムのチャンパ遺跡でも見つかります。
聖地ミソン(7~13世紀)の博物館にナタラージャの破風が2つ展示されています。
1つは8腕で左右に従者が捧げ物(蓮華?)をしています。
蓮の上で踊っており、足元の左右にはマカラが彫刻されています。
奇妙なのはシヴァの胸にトカゲのような動物が彫刻されていることです。
シヴァの妻の一人チャームンダーにはサソリが彫刻されていますが、トカゲは初めて見ます。
10ミソン025
もう1つは残念ながら上部が崩壊してわかりませんが下部はよく残っています。
従者の楽団に合わせて踊るカーライッカル・アンマイヤール、ナンディなどで、右側の人物はよくわかりません。
11ミソン038
寺院ではポーン・クロン・ガライ寺院(13~14世紀)の破風に彫刻されています。
6腕で宝冠やアクセサリーの彫刻が細かく美しいです。
12ガライ011
ダナンにあるチャム彫刻博物館にも数点あります。16腕、10腕、4腕などバライティーに飛んでいます。
13cham.jpg
14cham.jpg
インドシナ半島においては好まれて作られましたが、インドネシアでは見つからず、やっと博物館で一点だけ見つけました。
東ジャワのSINGOSARI寺院で見つかった像です。
バイラヴァとしてのシヴァです。
15singo.jpg
ヴィシュヌ派よりも圧倒的にシヴァ派の寺院が多いインドネシアで意外でした。
シヴァの立像や坐像は沢山あるのですがナタラージャ像はほとんどありませんでした。
余談ですがシヴァの妃であるドゥルガー女神の「水牛の悪魔を退治するドゥルガー」の彫像が東南アジアで一番沢山見つかっているのはインドネシアです。
ナタラージャ像は東南アジアでとても好まれたようです。

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